以前の「リーディング・ワークショップにとりくむためのブックリスト」(下記エントリ)にならって、「ライティング・ワークショップにとりくむためのブックガイド」も書いてみます。あくまで2018年3月時点のものだけど、ご参考まで!
目次
ライティング・ワークショップの基本的なやり方を理解する本
ライティング・ワークショップ
ライティング・ワークショップというと、まずは吉田新一郎・小坂敦子訳のこの本でしょう。思えば僕もこの本を読みながら実践をしていたのでした。
作家の時間
こちらは上記の本を受けた小学校の先生たち7名の実践本。上記本の実践をする中で、カンファランスの実例、様々な出版の方法、ミニ・レッスンで使える絵本の紹介など、日本の教室でも使えるアイデアが報告されてます。小学校の先生たちの実践本なので、中学以降ではミニレッスンなどをそのまま使うわけにはいきませんが、日本における授業の基本的なイメージをつかむのには有益。In the Middle
英語ではたくさん出ているライティング・ワークショップの実践本ですが、残念ながら全て未邦訳。ただ、僕のブログのメイン・コンテンツ、ナンシー・アトウェルのIn the Middleは、今年の夏頃に邦訳が出ます! 訳者は吉田さん、小坂さんと、僕。ぜひ読んでくださいね!
ミニレッスンの参考になる本
「書くこと」についての本は多数出版されているので、ミニレッスンの参考になる本も無限にある。ここでは、あくまで僕が実際に読んで参考にしたものやお世話になっているものをあげます。以下、そのつもりで、割り引いてどうぞ。
書くこと全般についての本
山田ズーニーさんの「伝わる・揺さぶる!文章を書く」は小論文界隈では割と知られた本。自分の思いを大切にして相手に届くように書く、という書くことの基本を再確認させてくれる。
ナタリー・ゴールドバーグ「魂の文章術」(Writing Down the Bornes)は、その邦題の印象だと「すぐには役立たない本」入りしそうな書くことについてのエッセイ集。実際、ノウハウめいたことはああまり書いていないのだけど、大切な本の一つだと思う。書くことの喜び、難しさ…エッセイを読み進めるうちに、書くことが人間にとって根源的なものだと思わせてくれる本です。
文章の基本的な書き方についての本
まずは意味の通る日本語を書くために参考になるのは、高度な表現技法の本ではなく、もっと基礎的な書き方の本。「文章力の基本」が出たときには、これは中学生向けにいい本が出てきたと思った!今では、「文章力の基本100題」「文章力の基本の基本」などバリエーションが出ています。
あすこま家は妻が日本語教師やってるんだけど、留学生向けの日本語教育のテキストは、国語の参考にもなるところ多し。自分の授業では「留学生のための ここが大切 文書表現のルール」を使わせてもらいました。
表現技術に関する本
表現技術ということでまず強力にお薦めしたいのが、石黒圭さんのこのシリーズ。僕はこのシリーズ、全5巻を1セット学校用、1セット自分用に置いているくらい。説明的文章も文学的文章も幅広く取り扱い、様々な表現について、「どうあるべきか」というよりも「実際にどう読まれているか」という観点から解説している、とても良いシリーズだと思います。
日本語の文章表現についての著作が多い中村明さん。下記リンクでも、中村さん編集の事典が出てきた。
日本語のレトリックについては瀬戸賢一「日本語のレトリック」が、レトリックが整理されていて用例と一緒で読みやすい。レトリック、いつも使うのは無理だけど、ここぞというときにうまく使いたいものだなあと思います。
また、北海道の国語の先生、堀裕嗣さんの次の著書も参考になりそう。国語の言語技術のうち「書くこと」「読むこと(説明的文章)」「読むこと(文学的文章)」に関して、それぞれ20ずつの言語技術を整理してくれてます。義務教育段階でどういう言語技術を生徒に身につけさせればいいのか、ミニレッスンを作る目安になるはず。
エッセイや小説を書く参考になる本
エッセイや小説の創作で参考になる本というのも難しい…。世間には小説志望家向けの書き方読本のようなものがたくさんあり、どれが良いのかは、小説家でもない僕にはわからない。それで、というわけでもないけれど、僕は毎回の授業で掌編小説やエッセイをプリントで配って、好きなものを参考にすることを勧めてます。
そして、もし「参考書」を薦めるなら、大事なのは、「書き方のノウハウ」には触れていない次の本かも。
星新一さんのエッセイには、創作の秘訣やボツ作品について書いてあるものも多く、読んでいるだけで面白いです。役に立つはどうかはわからないけど…。
エッセイということだと、翻訳になるけど、次の本も好き。「回想記・エッセイのための」とついて入るけれど、「魂の文章術」と同じで、書くこと全般に通じそう。
大塚英志さんのストーリーメーカーやキャラクターメーカーは、ライティング・ワークショップの勉強会仲間で使っている人がいます。僕も面白い本だと思うんだけど、ただ、僕は結局のところ使っていない…なんでだろう?と思ったけど、僕の課題は2000字で短いせいというのもあるかも。でも、僕の勉強仲間で好きな人もいるので、載せておきます。
説明的・論理的文章を書く参考になる本
続いて、説明的・論理的文章を扱う際に参考になる本。最初はまたしても石黒圭さんの本「文章は接続詞で決まる」がお勧め。論理的文章を書くときは、しっかりした構造を持つパラグラフを、指示語や接続詞で結んでいくのが基本。
また、「わかりやすい文章を書く」技術に関しては、アカデミック・ライティングの本を中心に、すでに色々な本が出ていますね。倉島保美さんのパラグラフ・ライティングの本や、
詩歌を書く参考になる本
詩歌については、こちらで作成したブックリストを読んでください。良い詩歌をたくさん読む、というのが基本だと思います。
中でも、詩の技術という視点で参考になるのは、このあたりかな?
俵万智さんと一青窈さんの次の本もとても好き。二人のやりとりが面白いし、俵万智さんのコメントの仕方は、後述するカンファランスの参考にもなる。
書き出しについての本
読者を文章に導く重要な要素、書き出し。実は書き出しに特化した本もたくさんあり、すでに以下にブックリストのエントリを書いたので、それを参照してください。
タイトルについて参考になる本
ブルボン小林さん(長嶋有さんの別名)の「ぐっとくる題名」は、実際の文学作品や映画などの様々なタイトルをカテゴリー別に分けてコメントしたエッセイ集。読んでいて結構面白いし、実際、参考にもなる。
一番大事なことは、自分で書くこと
大切なのは、これまで掲げる本の内容をミニレッスンやカンファランスで教えたからと言って、書くことを教えたことにはならないということ。これらの知識は、あくまで書くことや文章の構成要素であって、複雑で冒険的で魅力的な「書くことそのもの」ではないからです。その「書くこと」のプロセスを生徒に丸ごと見せるのは、教室で生徒に「さあ書こう」と呼びかける先生自身。だから、ミニレッスンの参考になる本を紹介するにあたって、僕が強調したいのは、たった一つ。これらの本を買い集めるよりも先に、あるいは買い集めて読みながら、まずは自分で書いてみよう、ということです。
カンファランスの参考になる本
続いて、カンファランスの参考になる本。とはいえ、日本語でカンファランスの参考になる本はあまり見られません。僕が勉強に使ったのは、次の2冊の英語の本。
日本語の本だと、すでに紹介したこの本が、「カンファランスの仕方」の具体例としても読んで面白いです。俵万智さんの、作り手の長所を発見し、その意図を尊重しつつ提案する姿勢は、とても良い指導の仕方だと思う。こうなりたい。ぜひ読んでみてください。
参考になるウェブサイト
最後に、本ではないけれど、ウェブ上のリソースとしては「WW/RW便り」はお勧めです。吉田新一郎さんらが運営するブログで、役立つ情報がたくさんあります。
WW/RW便り
僕のブログの過去エントリから…
手前味噌だけど、過去のエントリからは、下記エントリから始まる連続記事が一番おすすめです。『ライティング・ワークショップ』『作家の時間』などでは触れられていない、広い目で見たときのこの実践やその考え方の歴史、研究、批判などについて書きました。留学の成果の一つでもあります。こういう視点を持って、少し大きな視点でこの実践について把握することは、とても大事ではないかと思っています。
というわけで、2018年3月時点でのものとしてあげてみました。これらの本を片手に、ぜひ取り組んでみてください!