ナンシー・アトウェルのライティング/リーディング・ワークショップの特徴の一つは「詩をとても重視すること」。これは、まだ僕にはできていない点だ。とはいえ、「詩は短い中に様々な技術が詰め込まれているので、教材として効率的」というアトウェルの指摘には頷けるところもあるので、そういう視点でまた詩を見直してみようと思う。自分で好きな詩を見つけて、その技術を意識できたらいいよね。
というわけで、今回は好きな詩に出会うためのブックリスト。「現代詩文庫や現代詩人の詩集を揃えるほどじゃないけど…」という僕くらいの人には、結局のところ名詩のアンソロジーが一番の情報源なので、それを中心にまとめてみた。
目次
親しみやすい、詩のアンソロジーシリーズ
カラフルな絵とともに名作を。「名詩の絵本」シリーズ
僕が好きで、人に聞かれるとお勧めするのが「名詩の絵本1・2」だ。詩人の川口晴美さんの編集で、この手のアンソロジーの定番の古典的な近代詩の名作から、現代の詩人による作品まで、比較的幅も広いと思う。全編にカラフルな絵がついていて、まさに「絵本」。
童話屋の詩のアンソロジー「ポケット詩集」シリーズ
同じようなコンセプトや装丁の本に、童話屋の「ポケット詩集」(全3巻)がある。定番の名作が多いけど、ここから好きな詩人を見つけてその人の個人詩集へ、という流れもおすすめ。
手加減なし!「大人になるまでに読みたい15歳の詩」シリーズ
アンソロジーシリーズの中で異色と思うなのが「大人になるまでに読みたい15歳の詩」シリーズ。この手のアンソロジーはともすると「どこかで見たことある」有名な詩のオンパレードになりがちなんだけど、この本は文語定型詩から現代の詩人まで、作者も作風も非常に幅広い。それもそのはずというか、編者は青木健さん、蜂飼耳さん、和合亮一さん。手加減なしのこのシリーズ、僕もまだ全部読めてないけど、注目です。
水内喜久雄さん編集の学校向けアンソロジー
水内喜久雄さんは、主に学校での利用を念頭においた様々な詩のアンソロジーを出している。ここでは僕が持ってる中高生向けのを紹介。特に『日本語を楽しむ100の詩』の方は、言葉遊びの詩や言葉について書かれている詩が多くて、読んでて新鮮。
そのほか、様々な詩のアンソロジー本
そのほか、詩のアンソロジー本はたくさんあって、とても紹介しきれない。古典的な定番なら「教科書でおぼえた名詩」「日本の名詩を読みかえす」「あの頃、あの詩を」「ことばの流星群」、現代詩中心なら「現代の鑑賞101」「日本の現代詩101」「詩のレッスン」「今日の名詩」、あとはそれぞれのテーマ別に「花の詩集」「山の詩集」「スポーツ詩集」「愛の詩集」「人生処方詩集」…などなど。
その中であえて一冊をあげるとすると、青い鳥文庫かな?嶋岡晨が編集した「心にのこる日本の詩」。定番揃いなんだけど、それだけにいい詩が多い。小・中学生に読んでほしいなあ…というか、まずはうちの子どもたちが読んでくれないかな(笑)
詩の世界へ導いてくれる、解説&エッセイつきのアンソロジー
たくさんの詩に出会うには良いアンソロジーだが、詩にエッセイや解説がついているものも、読み解く手助けにもなるし、文章がその詩の魅力を増してくれるのでおすすめです。僕も何冊も持ってます。
定番だけど、やっぱりおすすめ、岩波系の3冊
最初に名前を上げるのは、有名な岩波ジュニア新書の名著、茨木のり子「詩のこころを読む」。決してジュニア向けというのではなく、僕が大人になっているからこそ読んでしみじみする作品も入っている。難しい詩はないので、万人にオススメの本です。
同じく岩波ジュニアの吉野弘「詩の楽しみ 作詩教室」も定評ある本。詩でも理の勝つ吉野弘らしく(?)、詩とは何かとか、詩で使われる技術についてきちんと解説してくれているのがいい。
個人的に思い入れが深いのは、昭和の詩人・三好達治の「詩をよむ人のために」。まだ10代のころ、この本で島崎藤村「千曲川旅情の歌」の音の響きがなぜ美しいのか納得し、堀口大学「夕ぐれの時はよい時」に出会うことができました。思い出深い一冊です。
現代詩を身近に感じさせてくれる本
「難解」と思われることの多い現代詩を中心にしているのは渡邊十絲子「今を生きるための現代詩」。これは、生きるために現代詩が必要なんだという著者の切実感が伝わってくる一冊。「ポケット詩集」にあるような「親しみやすい詩」とは一歩違う詩への入り口。
同じく詩人の井坂洋子さんも、一般読者向けに詩のアンソロジー&エッセイを編まれている。こちらにも、有名な近代詩人の作品から、暁方ミセイさんなど最近活躍中の詩人の作品まであって、詩の案内としてちょうど良い。知らない詩も多くて、楽しめました。
まだまだあります、詩を案内するシリーズ
この種のアンソロジーもまだまだある。大岡信「詩への架橋」、小池昌代「通勤電車で読む詩集」、柴田翔「詩への道しるべ」、北村薫「詩歌の待ち伏せ」シリーズ、…。今は絶版だけど、川崎洋さんの「こころに詩をどうぞ」「ひととき詩をどうぞ」「すてきな詩をどうぞ」のシリーズ3冊や、高田敏子「詩の世界」、文藝別冊「心の詩集」も、それぞれ素敵なアンソロジーです。
その中であえての一冊セレクトは、古本だけど、石垣りん「詩の中の風景」。この種のアンソロジーは「好きな詩が一つ見つかればOK」スタンスで臨むあすこまですが、このアンソロジーは良い詩が多かったし、石垣りんさんの言葉がまた素敵だった。こんな風に詩を紹介する文章が書けたらいいなあ、と思う一冊。
詩の授業を考えるのに最適なシリーズたち
アンソロジー編の最後に、一般の読者というよりも詩を授業で扱う国語の先生向けのシリーズを。まずは文芸学者の西郷竹彦の「名詩の世界」シリーズ7巻。名詩で使われている技術や詩の構造を解説しているシリーズで、僕もミニレッスンを考える上でこの春もう一度読み直さなきゃと思ってる。
明治書院の「展望 現代の詩歌」シリーズ全11巻では、5巻までで詩を扱っている。有名な詩の解釈や鑑賞を丁寧に書いていて、教材研究向け。研究室にある…という高校の国語の先生も多いはず。
好きな詩人を見つけたら。個人アンソロジーへ行こう
好きな詩人を見つけたら、その詩人の作品集へ、というのが自然な流れ。でも、詩集を個別に買うと高くつくので、まずはその詩人の作品を集めた個人のアンソロジー詩集を買うのがいいと思う。もっとも、アンソロジーになってる人は超有名な人ばかりで、普通の?マイナーな?詩人が好きになったら、たとえ高くても詩集を買うしかないんだけどね…。
何と言っても定番は現代詩文庫
個人アンソロジーの詩集を揃えるなら、やはりまずは思潮社の現代詩文庫なんでしょう。そもそもカバーしてる範囲が他と圧倒的に違う。詩が好きで現代詩文庫にたどり着かないということはないよね。
個人的な好みは角川のハルキ文庫の詩集
個人で持ってるのが多いのは、角川文庫の「ハルキ文庫」の個人詩集。定番詩人の個人詩集が揃ってるんだけど、高階杞一さんがこれに入った時は嬉しかった。
子どもにも親しみやすい、「詩を読もう!」シリーズ
水内喜久雄さん編の大日本図書「詩を読もう!」シリーズは、子ども向けの個人詩集のシリーズ。読みやすくて、でもハッとする視点がある詩が多くて、これも子ども向けにはいいと思う。こちらは高階杞一さんに加えて、大橋政人さんの詩集も入ってます。
古書だけど、あすなろ書房のシリーズは好き
古本でしか手に入らないけど、あすなろ書房の子ども向けアンソロジーは好きです。まず、「少年少女のための日本名詩選集」シリーズは、近代を代表するド定番の詩人たちの作品が短い解説付きで載ってます。
ちなみに、個人詩集のアンソロジーではないけど、あすなろ書房には「はじめてであう世界の名詩」シリーズもある。こっちは上のシリーズほど好きではないけど、アフリカとか中南米とか、あまり知らない地域の詩にたくさん出会えるのが新鮮。でもこれも今は本棚の飾り…。
というわけで、自分が出会った詩のアンソロジー詩集について書いてみました。また読み直して、アトウェルのように「ミニレッスンで詩を使う」ことにもチャレンジしてみたいと思います!