In the Middle読書日記。なにしろ盛りだくさんの本なのでつい見落としがちになるけれど、アトウェルのライティング・ワークショップでは文法や書き取りの学習を軽視しているわけではない。
それどころか、下記エントリでの時間割にあるように、週4日の授業日のうち2日では書き取りの練習を必ずさせているので、ワークショップのルーティーンの中に埋め込まれているといえる。
では、どんなふうに学習を進めているのか。pp141-164の記述をざっくりまとめてみよう。
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まず文法規則のミニレッスンは、生徒の作品が溜まってきた春から冬のシーズンにかけて行われている。これは、生徒のミスの パターンを集めて、それをもとに行うためだ。この本では教える事項が1ページ以上ものリストになっているのだけど、全てはとても書ききれない。間違えやすい文法表現や、符号(カッコやカンマやピリオド)の由来やら、カンマの使いこなし方やら、キャピタライズ(大文字化)のルールやら、IとMeの使い分けやら、本当に多岐にわたる。ただ、重視されているのはそうした情報をいかに生徒の文章の修正に活かすか、ということだ。生徒は教えられた項目をリストにして、それをもとに自分の文章を点検するチェックシートを作成することになる。記入して終わりではなく、これをアトウェルが全員分チェックして全ての文法ミスを指摘するという徹底ぶりである。これを全て身につけることを要求するわけではなく、翌日の修正のカンファランスでは、1つか2つを強調するらしいが、それにしてもすごい徹底ぶりだ。
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書き取りの学習についても、生徒全体に向けてやってもメリットが少ないと断言し、個々の生徒への対応を徹底している。「この学校では、全ての教師が書き取りの教師だ」(p154)と言っているから、どの学年でもそれが徹底されているのだろう。パソコンのスペルチェック機能は原稿の出版直前まで使わせずに、自分がどんなミスをしたかをいちいち細かく記録させる。 そしてそのミスを火曜日と木曜日のワークショップの最初に練習させる。これは下記エントリにもある宿題とも連動した学習で、実に細かい手引きが作られている(p156)。
この宿題はピアでチェックさせ、月一回には書き取り学習のフォルダーを生徒同士で交換して、それぞれの単語が書き取れるかテストもしている。こうしたピア活動の活用は、教師の負担を抑えつつ学習を進めるための工夫だろう。真似したいところだ。
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…ということで、アトウェルの教室では、こうした文法事項や書き取りの学習を、ライティング・ワークショップと並行して(あるいはその一部として)進めているのである。正直「重いなあ」と思う。どこにも手を抜いていない。教師はもちろん、生徒もけっこうしんどいだろうなあ、これは(笑)
ただ、こういう学習をなぜしているのか、という問いに対するアトウェルの答えは明快だ。生徒の文章が、クラスを超えて読まれて欲しいから、である。まさにその通りと唸ってしまった。