アトウェルを相対化しよう。『イン・ザ・ミドル』読書会に参加しました。

本日、新潟の新潟青陵大学を会場に開催された『イン・ザ・ミドル 大人の読書会』に参加してきました! 今回、再読して改めて「文字の多い本だなあ…」と思ったのですが(笑)、この本を手にとって下さり、読書会まで開いてくださいまして、本当にありがとうございます。簡単ですが、一参加者としての感想をメモします。

写真は読書会の会場となった新潟青陵大学の保育実践演習用の部屋の一角です。こんな素敵な部屋があるのか…! 新しい図書館も素敵でした。ハードだけじゃなくて、期限までに本を返すとポイントがもらえるポイントカード制もいいなあ(ポイントが貯まるとコーヒーやコピー券と交換できる)。

様々な参加者の方達15名での読書会

参加された方は、中学から大学までの教員、学校図書館や公共図書館司書の方、学生さんまで含めて合計15名でした。15冊の『イン・ザ・ミドル』! 基本的には中高国語科教員向けの本だと思っていただけに、司書の方に多くご参加いただいたのが、意外でもあり、嬉しくもありました。

今回の読書会は、本を読んで感じたことを交換したり、そこから各自の実践の話をしたり、という自由な形で進められました。個人的に興味を持ったトピックがいくつかあったので、自分用のメモ代わりに書いていきます。

「読むべき本」はあるのか?という問い

まずは読書教育の研究者の先生から「原著のliteratureを文学と訳しているが、ここでのliteratureは日本の「文学」よりも広い概念なのでは」という趣旨の質問をいただき、訳者としてはいきなりドキドキしました(笑)。僕自身は「文学」で良いと思うのですが、これはもう少し勉強したいところです。

また、「読むべき本」があり、本にヒエラルキーがあるとアトウェルが思っている点についても、議論になりました。たしかにアトウェルは、クラシックな作品が好みで、そのような作品を生徒に読ませたいと明確に思っています。その姿勢に戸惑いを表明する方もいれば、それこそが「譲り渡し」であり、それをいかに強制を感じさせることなく薦めるかが大切、と考える方もいました。

リーディング・ワークショップの困難を補う「お試し読書」

この話題の中で、とても興味深い実践例を聞くこともできました。中学校でリーディング・ワークショップを週1回実践されている先生が、清教学園図書館「リブラリア」の「お試し読書」実践を応用して、個別読書をするリーディング・ワークショップの合間に、本の一部分だけを3分間ずつまわし読みする授業をされているそうです(一回の授業で8冊、全4回で、合計32冊の本を3分ずつ読む)。

こうした取り組みは、教師のカンファランス(アトウェルはリーディング・ワークショップでは「チェック・イン」と呼んでいます)を補う意味でも有効です。アトウェルのリーディング・ワークショップでは、彼女がものすごい読書量で生徒にどんどん本を薦めていくのですが、受け持ち生徒数の面からも、また僕たち自身の読書量から言っても、正直に言って同じことをやるのは難しい。「アトウェルのように頑張れ」というのは「大村はまになれ」というのに近い暴力です。(この第7章でのチェック・インの場面と、第2章の緻密な事前準備の部分は、「とてもできない」と読者に思わせてしまう「しんどい」箇所のようです)

それで、ある程度こちらで事前にセレクトした本をまわし読みする「お試し読書」のような機会を作っていくのは、教師の負担感を減らしつつ生徒が本を出会う機会を作り、リーディング・ワークショップのカンファランスの不備を補う意味でも、有効ではないかと思いました。今後、自分の授業でも考えてみたいところです。

アトウェルの実践を相対化できる読書会

『イン・ザ・ミドル』を翻訳することは、僕にとってナンシー・アトウェルの実践について学ぶとても良い機会でした。そして、『イン・ザ・ミドル』の翻訳版を他の皆さんと一緒に読み、議論をすることは、アトウェルの実践を相対化するとても良い機会になる。今回の読書会で、そのことを実感しました。

そういえば、もともと10年前にこの本(第二版)の英語版を読み始めた時は、メール読書会という形で始まったのです。英語ということもあって、途中で途絶してしまったのですが…。日本語になったことで、英語を読み進める大変さをいったん忘れて、あの頃にやりたくてもできなかった『イン・ザ・ミドル』読書会ができているんだな、今日の僕は10年前の続きをしているんだな、ということに、帰りの新幹線で気づきました。

『イン・ザ・ミドル』の読書会、訳者としては純粋に嬉しかったし、楽しかったし、そして学ぶところも多い読書会でした。お招きくださった先生方、本当にありがとうございました!

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6 件のコメント

  • 謹んで読ませてもらっています。文字は多いかもしれませんが、そのすべてが参考になることばかりで、勤務校の実態を踏まえ、一体どこから実践に移していけばいいのか、整理できない状況です。
    今は、「リーディング」を中心に読んでいます。
    私も「読むべき本」のことは気になりました。81ページの「次のような本は教室の図書コーナーには入れません」のくだりです。図書室ではなく、「教室に置く本として」と書いてあるので、図書室にはよくても、RWにはふさわしくないという判断でしょうかね…。
    やはりこの実戦の肝は「自分で選ぶ」というところなのかなと。指導者に読ませたい本やジャンルがあるなら、それを読みたいと生徒に思わせる提示や紹介の工夫が必要なのかなと考えました。
    「お試し読書」は、私もやって見たいです。情報ありがとうございます。

    • ありがとうございます! アトウェルの学校は図書室はないんですよね、すべての教室に本がある形なので。全てをそのままやるようなタイプの本ではないので、どこを取り入れるか、じっくりと考えていただけたらと願っています。ですので、そういう風に使っていただけているようで、訳者としてはとても嬉しいです!

  • すてきな読書会に参加できて、本当に光栄に思います。しかしながら、もうちょっと話したいこともあったのだけれど、自分の中で整理がなされないまま参加してしまい、言い忘れた感も実はあります。「イン ザ ミドル」の下読みをさせていただいたころ、大量にやってくる原稿に焦りを感じながらも読んでいると、そうそうそうなんだよって自分が早通中の図書館で感じているような感覚を追体験するような雰囲気があって、早くこの感じを共有したいって思っていました。継続的にやっていくことのよさをもう少し具体的に整理したいと思いました。ミニレッスンの内容を精選して蓄積していきたいと考えている反面、圧倒的に読んでいくということがその必要性をにぶらせる?みたいなところもあって、このあたりのところも話せるとうれしい気がします。ノンフィクションのお試しをやったときに「自分が小さい頃からずっと疑問に思っていたことの答えが少し見つかった気がした」とか「本で人生が変わるってこういうことだと思った」と書いている生徒がいたんです。自分が国語の授業をしていたとしても、ここまでの感想は出てこないですよね。体操の内村航平さんは小学校1年生の時に蹴上がりができたときが人生最大の喜びなんですって。オリンピックで2連覇をしていても、その時の感動を越えるものはないのだそうです。どこでヒットするかってその人固有の者だからチャンスが多いほどいいと思うんですね。

    • 吉澤さん、当日は大変興味深い報告をありがとうございました。大量に読んでチャンスを増やすという観点、確かにと思います。読む力の向上だけでなく、良い出会いの機会になると良いですね。

  • 読書会、新潟までお越しくださいましてありがとうございます。こっそりとブログを拝見しておりましたので、お会いできたことが本当に貴重で、刺激的な2時間でした。夏休み明けからの実践にも生かしていきます。

    ライターより(^^)

    • こちらこそありがとうございました! 新潟の熱心な皆さんのネットワークにも驚きました! お互い頑張りましょう。