今学期のライティング・ワークショップでは、迷った結果、「今日の予定表」を導入しました。『イン・ザ・ミドル』の86ページに書いてあるものです。これまで自分は、生徒のプライバシー保護を理由に導入を躊躇していたのだけど、「できるだけ書いてくれると助かるが、強制ではない」と伝えて導入に踏み切りました(とはいえ、こういう台詞は強制感を持って伝わるのだ…ということを、後で思い知ります)
「今日の予定表」の目的
アトウェルは、この「今日の予定表」の目的を次の3つだとしています。
- 生徒に、自分の執筆計画に責任を持って欲しい
- クラスメイトが何を書いているのか互いに知って欲しい
- 口頭確認するときに、書くプロセスに関する語彙を生徒に教えるきっかけになる
僕の場合は、時間を短縮したいので、口頭確認ではなく、Google Classroom上に置いたスプレッドシートに一斉に書き込んでもらう方式です。そのため、アトウェルの3番目の目的は達成できません。ただ、アトウェルが個人で持つ「今日の予定表」と違い、スプレッドシートは生徒が常時見ることができます。個人作業が基本のライティング・ワークショップで、お互いの情報を共有し、刺激を与える効果を期待しています。
改めて自問する「カンファランスでは何を記録すべき?」
予想外の効果もありました。僕はいつも生徒のカンファランスの時に目元のiPad miniのスプレッドシートに、カンファランスで聞き取ったことをメモしていくのですが(こちらのシートは非公開。僕だけが読めます)、そこのメモの内容に変化が現れました。というのも、毎回の進捗状況やテーマについては「今日の予定表」に書いてもらうので、こちらでわざわざ記入する必要性が薄れたのです。とすると、自分のカンファランスの記録で本当に記録すべき内容はいったい何なのだろうか? そう自問するきっかけになりました。まだ軌道には乗ってませんが、カンファランスの記録の取り方が変わり、それがカンファランスに影響するかもしれません。楽しみです。
やっぱり感じる、共有の難しさ
一方で、やはりプライバシーの問題は存在します。特に、軽い気持ちで、今日の予定だけでなく、自分が書いている作品のテーマを書く欄も加えたのですが、人に自分の書くテーマを知られるのが嫌で、わざわざ「偽のテーマ」を書く生徒がいることもわかりました。それなら書かなくていいのにとも思うのですが、いくら「強制ではないよ」とは言っても、教師がそう言った時点で、一定の強制感で「書かざるを得ない」と感じ、でも知られたくないのでフェイクの情報を書く生徒は存在するということですね。
先日、授業の振り返りで、僕の授業にずっと来てくれている共同研究者のK先生が、共有に対する僕の姿勢を言語化してくれました。「自発的な共有は促進したいけど、それを強制はしたくない」。本当にそうなんです。こういう「今日の予定表」でも、強制感を持たせてしまう。個々の自由をできるだけ守りつつ交流や共有を自然に発生させるって、なんて難しいんだろう。きっと、今の僕にはできていない、別のアプローチが必要なんだなあ、と思います。