発見もあれば、新構想もあり。風越学園の「作家の時間」の実践ラボに参加しました。

3/7(金)、自分の担当LGをお任せして、同僚のとっくん(片岡利允さん)が主催する風越学園の実践ラボ「書きたい!なりたい!やってみたい!子どもが『のびやかな書き手』になる授業づくりとは?」に参加しました。

写真はスノーシューで歩いた池の平湿原。また雪が降ったし、今シーズンもう一回くらいいけるかな?

実践者としての違いに興味

僕が「作家の時間」の研修に(講師ではなく)一参加者として参加するのは久しぶり。純粋に研修プログラムを受けるのが楽しかったです。もちろん、「作家の時間は初めて」という人に比べたら知っていることが圧倒的に多いのは間違いない。でも「作家の時間」は、実践者の書き手としてのライフヒストリーやスタンスにかなり影響される実践だと思う僕としては、とっくんの捉え方や説明が自分とどう違うのかという点にも関心がありました。

とっくんのレクチャーは、教科書的な基本情報を踏まえつつ、自分の実践に話が及ぶととっくんらしさが出ていて、それが面白かった。当たり前だけど「ここは自分とは違うな」と思う箇所もちらほらあります。一番大きかったのは「全員とカンファランスしようとするかどうか」かな。ナンシー・アトウェルの影響下にある僕は(『イン・ザ・ミドル』参照)、「短時間で、できるだけ多くの子と」関わるのが基本スタンス。だから一つのユニットの中で全員と複数回関わろうとするのだけど、とっくんは、それよりも全体の雰囲気や子ども同士の関係性に力点をおいたり、「今回はこの子と関わる代わりに、次の単元ではあの子をターゲットにする」など、その都度の軽重がありそう。それはどちらが正しいと言うのではなく、とっくんと僕の実践者としての違いなんだと思いました。

実践の要素が線でつながった瞬間!

また、この日は、参加者の方とのやりとりから、より大きな発見がありました。一番大きかったのは、とっくんが「作家の時間」の説明をした後のやりとりです。この日、とっくんは「ワークショップ」の説明をするのに安斎勇樹『問いのデザイン』の工場と工房(ワークショップ)の違いの表を引用していました。

工場(factory)的なものづくり 工房(workshop)的なものづくり
トップダウン ボトムアップ
設計図に従ってつくる つくりながら探る
効率重視 実験重視
ミスは大罪 失敗から学ぶ
退屈な作業に耐える つくる過程を楽しむ

この時間のあとに、隣の席の方に、僕はこんな話をしました。自分の理想はこの工房モデルで、本当は自分もカンファランスをせずに一人の書き手として作品を作りたいこと。でも、実際にはカンファランスをやめたら、子供たちの様子がまるでわからなくなって、またカンファランスの記録を再開したこと…。そうしたら、相手の方が「工房モデルは理想だけど、でもそれは参加者がみんな書きたい人じゃないと難しいのでは」という趣旨の感想を言ってくれました。それに対して、とっさに「だから環境設定に興味があるんです」と答えたんですね。

ただ、この時まで、僕の中では「理想的にはカンファランスを止めたいこと」と「書きたくなる教室環境」は、どちらも本当の思いではあるけど、両者に架け橋がなかった。どちらも意識はしていたけど、それが一本の線でつながっていなかったんですね。でも、「ワークショップ(工房)」というキーワードを軸に、この相手の方の言葉に答えようとしたおかげで、自分の中でも「カンファランスを止めること」と「書きたくなる教室環境」が一本の線でつながった感じがしました。自分で自分のことがよくわかった。この日の一番の収穫は、この発見だったかもしれません。

何気ないひとことが、意外な価値を生む?

また、ささいなんだけど、休み時間の雑談でもこんなことが。とっくんの発言に応じて何の気なしに「人間には飽きるっていう才能がありますからね」と言ったところ、目の前の参加者の方がわざわざノートをとってメモしてくださって、その様子を見たらなんだか急にいいこと言ったような気になってしまって(笑)  何か強い信念や根拠があって言った言葉ではないんですが、この言葉の意味をじっくりあじわうと、なんだか今後の自分にも大事な言葉になる可能性がありそうです。こんなふうに、やりとりの中で、ふっと生まれた言葉を、他の人が価値づけてくれる経験は、自分一人だとできないこと。ありがたいですね。

今後につながる構想も…

今回の実践ラボで、今後につながる動きも生まれました。一つは、3・4年生の「出版アウトプットデイ」(56年の「出版記念オーサーズトーク」は、もともとこれを真似したものです)を見ながら、「やっぱり3年から6年までで一緒にやりたいね」という話になったこと。これ、本当は今年度やりたかったのだけど、タイミングがあわなくてできなかったこと。34年のフィードバックの合言葉「うれしい、くわしい、ためになる」(これはロン・バーガーの「親切で、具体的で、役にたつ」とほぼ同じことを言っています)を、みんなで実践できたらいいな。

また、もう少し大きな視点の話も。今回の研修で、小学校1年から6年まで「作家の時間」をやっているのが風越の大きな特徴であることを、あらためて実感しました。そして今はちょうど1・2年をふぅ(林里紗さん)、3・4年をとっくん、5・6年を僕が受け持ってそれぞれ数年たち、実践も安定してきているところ。だから来年度はお互いの実践から共通言語を見出したり、お互いの学年の交流をより促進したりししてみたい。そのためのプロジェクトを一つ、研修終了後にふぅととっくんに提案しました。なにしろ開校5年たった風越は、初年度1年生だった子たちが来年はちょうど6年生。来年度は「作家の時間」で育った子たちが6年目を迎えるのです。過去の作品もひもときつつ、子どもの書き手としての6年間の変化を眺められたら、面白いだろうな。

とまあ、新しい発見があったり、今後につながる構想が生まれたりと、得るところの多い実践ラボでした。ありがとうございました!

この記事のシェアはこちらからどうぞ!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です