[読書]エリン・オリヴァー・キーン『理解するってどういうこと?』

下記エントリで書いた横浜の「大人のブッククラブ」で読んだ本。アメリカのリテラシー教育を席巻したMosaic of Thoughtの著者であるキーンが、「わかるってどういうこと?」という小学2年生の少女ジャミカの問いに向き合い、6年をかけて書き上げたものだ。

 

小学校の先生たちとの読書会

2014.12.26


「わかるってどういうこと?」 テストで良い点がとれれば、教師の質問に答えられれば、「わかる」なのか。それを否定しつつ、キーンは様々な先人の生き方に「わかる」ことのモデルを探り、それを教室で生徒が学ぶための理解の方法を整理し、そのような理解の方法を教える効果的な環境(念頭におかれているのはワークショップ・モデルだ)を作るために教師がなすべきことを書く。

話題が多岐にわたっているので、とても一読ではその中身を把握できない。僕は訳者の吉田新一郎さん(ライティング・ワークショップをはじめ、ワークショップ・モデルの授業を日本に精力的に紹介している方)の本はけっこう読んでいるので、既知の話題を手がかりになんとか読み進める事ができたが、関連書籍を未読の読者だとけっこうたいへんかも。

僕はそれでも、とても全体を整理することができず、読んでいてドキッとする部分を拾っていくという読み方になってしまった。生徒に高い期待を持つこと。待つこと。熱烈な学び手としてのモデルを示すこと。少数の大切な概念を長い時間をかけて深く学ぶこと。その概念を幅広い多彩な本や文章や状況に応用すること。そういう「学習が起きる状況」を僕が十分に作り出せているとは、到底思えない。

それを具体的な姿でつきつけられたのが、p310以降に書かれた教師クララのミニレッスン。クララの一挙手一投足が、クラスの生徒へのメッセージになっている。自分の授業に足りないものが、クララと比較するととてもよくわかってしまう。

 一言でいうと「ライティングやリーディングのワークショップに魂を入れる本」。実際に本書の冒頭でも形骸化したライティング・ワークショップの授業例を取り上げ、警鐘を鳴らしている。いや、ワークショップ形式の授業でなくても、授業で本当に追求すべきものは何かについて、読者に再考を促す本だろう。

大切なのは、生徒の活動ではない。だから、ワークショップ型授業であれば、(あるいはアクティブ・ラーニングであれば)効果的ということではない。それらの授業環境を通じて、いったい何を実現しているのか、だ。それを厳しく問うてくる一冊と言える。まだ未消化の本だし、おそらくこの本に書いてあることについて「ああ、そうそう」とごく自然な確信を持って言えるようになるには、まだ相当の時間がかかると思う。

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