タイトルが気になって手にとった本。著者は九州大学で文章表現力向上の指導をされている方で、そこでの授業やアンケート調査がもとになっている。
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初年次教育を中心に大学での文章表現力の向上プログラムはいまや数多くあるけれど、「書くのが下手」ではなく、「苦手」意識に絞った研究というのが興味を惹いた。というのも、僕の勤務校も、学力上位校のはずなのに、多くの生徒が「書くのが苦手」と言うからだ。今年も中学一年生に「実は僕は一番興味があるのは作文指導で、三学期は期末試験やらずに作文だけで評価するよ」と言った時の、生徒たちのブーイングに近い反応といったら! 同世代に比べて書く力がないわけではないはずなのに、「苦手」で「嫌」な生徒の心理ってどこからくるんだろう、と思っていた。
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この本で筆者は、書くことについての意識調査や、書くのが苦手な学生たちの過去の作文経験を掘り起こすことで、書くのが苦手な学生に次のような共通点を見つける。
(1)自己評価が過小である(謙遜という意味ではない)
(2)あまり構想をしないまま書き始めて行き詰まる
そして、(1)については学生同士の相互評価を通じて自己の文章への客観的な視点を養わせ、(2)についてはマップやアウトラインを活用することで、構想の手助けをしていくことで、対処しようとする。
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こういう対応策としてのアクションの部分だけを取り出すと、どれも国語教育やライティング・ワークショップの本で前から言われていたことで、新鮮味はない。そりゃそうだよね、という感じ。ただ、目の前の学生の態度に疑問を持って、調査して、それを授業の改善につなげていく方法にはなるほどと思う。自分にはリサーチのスキルがないから、研究者の人と協力して、リサーチからアクションへの流れをこうやって組み立てていけたらいいな。