中2のライティング・ワークショップ。僕の受け持ちは40人学級×複数クラスなので、どうしてもカンファランス(生徒への個別指導)が手薄になる。自分なりに工夫はしてるつもりでも限界もある。今日は悩ましい現在の心境を書いてみよう。
目次
ライティング・ワークショップの核「カンファランス」
ライティング・ワークショップの大きな特徴が、授業中に生徒が「書く時間」があることと、先生がその時間に生徒の間を回ってカンファランスをすることだ。「個別の書き手を見る」この時間こそが、ライティング・ワークショップの真骨頂である。ミニレッスンや共有の時間がないライティング・ワークショップはありえるが、カンファランスのないライティング・ワークショップは想像できない。
したがって、ライティング・ワークショップの実践者たちもカンファランスには力を入れている。このブログでは、例えば以下のエントリでカンファランスに触れてきた。
40人学級では難しいカンファランス
ところが、日本の(というか僕の勤務する)学校だと難しいのもこのカンファランス。40人学級を複数クラス担当する身では、生徒一人一人の個別の状況を把握することなど到底できない。アトウェルの学校の先生も「40人クラスで週2回では、ライティング・ワークショップは難しい」という立場だった。
とはいえ、教師によるカンファランスは、ピア・カンファランスとは違って知識の直接的な伝授には向く場面でもあり、教師の専門性を生かせる場面でもある。だから、授業をする身としては教師によるカンファランスの機会もできるだけ確保したい。問題は、一体どうしたら40人の教室でカンファランスできるのか?ということだ。
どっちにする?40人学級でのカンファランスの基本方針
一度の授業で全員を見るのが無理な以上、40人学級でのカンファランスは、基本的に2つの方針にわかれるはずだ。
- 短い時間で、全員とカンファランスすることを優先する
- 特定の課題を抱えている生徒とカンファランスすることを優先する
のどちらかである。前者なら、1回の授業で一人2〜3分×10人とカンファランスするとして、週2回の僕の授業では二週間(4回)の授業で全員とカンファランスすることになる。後者なら、特定の課題を抱えた生徒と何回かカンファランスを繰り返す代わりに、全員とのカンファランスはできないということになる。さて、あなたならどっちを選びますか?
僕の今のカンファランスのやり方は…
以前の僕は、一人2分を目安にして全員とカンファランスしていた。でも今はちょっと違う。僕の現状のカンファランスのやり方は次の通り。数年前から使っている大福帳を活用するやり方だ。
- 毎回の最後に大福帳に進行状況や質問・助けてほしいことなどを書いてもらう
- 授業の合間に大福帳を読んで、次の授業でカンファランスをする人を決める。一言だけ助言すればいい生徒には、ここで簡単にコメントを書いて「簡易カンファランス」してしまう。
- 手帳の名票を使って、次の授業でカンファランスする生徒にマルをつける。急ぎの生徒がいる場合はカンファランスの順番も書いておく
- カンファランスしたい生徒の大福帳には「話を聞きたいからテーブルにいて」と書いておく(僕の授業では図書館内なら居場所自由のため、場所を指定しておかないとカンファランスする生徒を探す時間がもったいない)
- 次回の授業で、iPadに入れた大福帳のスキャンデータと手帳を片手に、カンファランスする生徒のところをまわる
つまり、先ほどの2つのやり方で言うと、「全員と直接カンファランスすること」よりも、「課題のある生徒を発見してその生徒とカンファランスすること」を優先している。大福帳でチェックして問題なさそうな生徒には合間に軽く声かけするくらいで、ほぼ放置しているに近い。
このやり方のメリット
「大福帳で課題のある生徒を発見し、その生徒とカンファランスする」このやり方は、以前にやっていた「二週間で全員とカンファランス」よりも、実質的な助言ができている実感がある。何しろ「全員」を意識しすぎると、ノルマをこなすような感じになってしまうからだ。それよりは、手助けを必要とする生徒に関わる、実質的な意味のあるカンファランスになっていると思う。
このやり方のデメリット
しかし、このやり方には問題もある。「大福帳頼み」の部分があるので、大福帳でちゃんと書いてくれない場合には課題のある生徒のところに適切なタイミングでサポートできない危険があるということだ。
「いかにも気になる生徒」の場合は問題ない。大福帳を見ればわかるし、Chromebookを使うことで他の生徒の助けも得やすくなったからだ。Chromebookで共同執筆が簡単になったのは本当に大きい。
今回の授業で僕の盲点になってしまったのは、例えば、
- 僕の目から見ても書く力はある。実際に良いところも多い。
- けれど、文章に対するこだわりがあって、自分でハードルを上げてしまう
- いい加減に書くことができず、一文ごとの時間がかかったり、不満を感じると消したりする
- 「真面目に」なんとか自分で対処しようとするので僕や周囲の生徒の助けを求めない
- 結果、なかなか進まずに行き詰まる
という生徒である。技術の問題ではなく、「自分で自分を書けなくしている」タイプだ。彼の場合、ある程度進んでいたのに、不満を覚えてざっくりと削除してしまった。
僕がそのことに気づいたのは授業の終盤。(多分彼の目には自分の文章がダメに見えているので)良いところを一つ一つ指摘したり、アイデアを出したり、「個々の表現にこだわる前に、とにかく最後まで書いてしまうこと」「書きやすいところから書いていくこと」などの一般的助言をしたりした。締め切りまであと少し。間に合えば良いのだけど、気づくのが遅れて申し訳ないことしたな…と思っている。
どうすればいいのかな、40人のカンファランス
ライティング・ワークショップのカンファランス。取り組みを重ねて自分なりに質は上がっていると思う(思いたい)のだけど、こういう失敗があると、限界の方を強く感じてしまう。やっぱり一回の質を落としてでも、全員とのカンファランスを優先した方がいいのかなあ。僕はもともと記憶力も良くないので、一人一人とカンファランスしてその内容を覚えるのも難しいんだけど…。
というわけで、40人×複数クラスはやはり僕には厳しい。20人だったら、一人一人の進行状況や書き手として個性を把握して、もう少しオーダーメイドの授業ができると思うのだけど。もうちょっと人数を減らせないかなあ…。