相性抜群!ライティング・ワークショップとChromebook

以下のエントリでも触れているように、中学生の授業は引き続きライティング・ワークショップをやっている。今年は実験的にお借りしているChromebookを使ってるんだけど、これがとても良いですよ、というお話。

「表現を評価されること」に対する生徒の不安な気持ち。

2017.01.19

「共有しない権利」と「下書きの読み合い」のジレンマ

2017.01.25

目次

そもそも作文の授業はPCでやるべき

僕はそもそも、「一定以上の長さの作文の授業はパソコンでやるべき派」である。文章を書くときには推敲という作業が伴う。推敲は、下書きを書いた後に来る「期間限定の」一時的な現象ではなく、文章を書くときにはいつでもどこでも起こりうる、書くことの要のプロセスの一つだ(下記エントリ参照)。

推敲とは「新たな始まり」である? 推敲についてわかっている大切なこと。

2016.05.23

そして、この推敲が、「手書き」ではやりにくい。字句の修正程度ならともかく、大胆な推敲をするには、カットアンドペーストやパラグラフの組みかえが容易にできるパソコンが必要になる。推敲をしにくくさせる手書きは、この点で決定的に劣っているのだ。また、原稿用紙の使い方は実生活ではほぼ役に立たない「学校限定」の化石的知識になっており、旧套を墨守することのメリットは、実際のところデメリットに比べると非常に小さいと思う。

パソコンやICTと作文教育をめぐる話題は、下記エントリで詳しく書いているので、よかったらご覧ください。

テクノロジーと作文教育の未来

2016.02.12

「書く時間」が有効に使えることに

というわけで、僕は数年前から自分の作文の授業は、生徒にもパソコンで書いてPDFで提出してもらっている。ところが、僕の学校のコンピュータ室は基本的に情報や数学の授業などで使われることが多く、いつも僕が使えるわけではない。結果、授業時間中に肝心の書く時間をあまり提供できなくて宿題になる時間も多く、申し訳ないなあと思っていた。

そこに、今回お借りしたChromebook(と、クラウドサービスとしてのG Suite)の登場である。シンプルな機能で起動が早く、充電も長持ちなChromebookを1クラス分お借りできたことで、この問題が一気に解決した。今は、生徒はライティング・ワークショップの「書く時間」中、自分のペースで執筆できている。机の上で、畳に寝転がりながら、珍しいところでは本棚の上で(笑)。「書く時間」を十分に提供できていることは、生徒の心のゆとりや、僕のカンファランスの時間確保にもつながっている

G Suiteならではの魅力は?

また、クラウドサービスのG Suite(旧 Google Apps for Education)ならではの魅力も良い。Classroomで課題や資料を簡単に配布・回収できるし、フォームやドキュメントの使い勝手もいい。

特にライティング・ワークショップで重要なのは彼らが実際に文章を書くドキュメント。紙の原稿と違って、僕がいちいちコピーしなくても、書き手が招待するだけで文章を共有できるのが素晴らしい。加えて、僕が気に入っているのは、以下の2つの点だ。

  1. ドキュメントを共有する側が「編集可」「コメント可」「閲覧のみ」を選べる
  2. ドキュメント変更のログがかなりの期間残る

書き手が主導権を持てる「共有」

特に生徒にとって、最初の点は大きいと思う。他の生徒との関わり方を、自分で選べるからだ。下記エントリで書いた通り、文章の共有というのは、書き手にとってとてもセンシティブな問題。

「共有しない権利」と「下書きの読み合い」のジレンマ

2017.01.25
その共有の場面で、誰にどの程度の共有を許すかというのを書き手がきちんと選べる点は大きい。これは書き手の安心につながる。

共同執筆が生まれる場面も

また、これだと書き手の合意さえあれば読み手が直接文章を編集することもできる。このおかげで、今学期のライティング・ワークショップでは、複数の書き手による共同執筆がちらほら登場している。これは、今までの僕のクラスではなかったことだ。ChromebookとG Suiteの組み合わせが、共同執筆のハードルを下げた効果だと思う。

もちろん僕のクラスにも書くのが苦手な生徒はいるけど、そういう子も、他の生徒に一緒に書いてもらうことで授業に参加できている。そういう場面を見て、僕はつい、最後まで書けなかった過去の生徒のことを思い出してしまった。あの時の彼にも、こういう形でのサポートがあれば、書けたんじゃないだろうかと。

変更のログが残るので、研究にも使えそう

また、ドキュメントでは変更のログがかなりの長期にわたって残る。これまでのところ、「前に書いていた文章を消してしまった」という生徒に「過去のバージョンが残ってるよ」と教えて復元してあげたくらいにしか使ってないけど、例えば生徒同士のやりとりの結果作文がどう変化したかとか、研究目的で生徒の推敲プロセスを見たいときには、とても便利なんじゃないかと思う。

今の所、ライティング・ワークショップと相性抜群!

というわけで、ChromebookとG Suite、今のところライティング・ワークショップと相性抜群だ。今学期の僕は、Chromebookに向かって図書館の思い思いの場所で執筆している生徒の間を、iPadを片手にカンファランスに回っている。8年前にライティング・ワークショップをやり始めた頃を思い出すと、雲泥の差。快適で、ちょっともう戻れないなこれは。

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4 件のコメント

  • G-suiteは良さそうですね! 私も、こういう機能を探しています。Chromebookを使っていなくても利用できるものなのですか? 自分で調べないで申し訳ありませんが、具体的な利用法を教えていただけると助かります。

    • はい、G suiteはChromebookを使っていなくても(WindowsやMacでも)利用できますよ!

  • 小学校でもこのレベルまでいきたいです。教師とハードと任される環境があれば、小学生でもかなりいけるきがしています。しかも、新たな子が芽吹くと思います。