[動画紹介] 哲学対話をもっと知りたい方に。哲学対話系再生リスト

近年、翻訳や関連書籍も色々と出てきて注目を集めている「哲学対話」。その哲学対話に関する、とても興味深いYou Tubeの再生リストがシェアされてきた。早速見たらとても面白かったので、ブックマークも兼ねて紹介したい。

目次

哲学対話系再生リスト

https://www.youtube.com/playlist?list=PLismC2DgRpJqWIC3vNPABmXUU6_avbDVx

哲学対話についての様々な動画をここから観ることができます。

オースリラリアの哲学教育の歴史

今回僕が見た動画は、このリンクのうち、オーストラリアのキャンベラ大学大学博士課程在籍中の西山渓さんによる、オーストラリアの哲学教育についてのレクチャー。オーストラリアで哲学対話教育が広まっていった背景、1990年代から2000年にかけて実践が広まって参考文献が増えていく経過、そこから生じた「実践者の質の確保」「一回きりのイベントで終わってしまう」という問題などについて扱われている。

これからの日本が迎える問題?

個人的にはこの「実践者の質の確保の問題」「イベントで終わってしまう問題」は、まさに自分自身の問題だなあと思った。僕自身は「哲学対話に興味はあるけど授業ではやってません」状態で、イベント的な哲学対話しか関わったことがない。また、自分が仮に授業の中で取り入れるとして、ファシリテーターとしては足りない部分もたくさんあるだろう。

同時にこれは、「子どものための哲学」(P4C)が最初の普及期に入ったかに見える日本にとっても、これから迎える問題だと思う。こうした問題に対して、オーストラリアではどのように対処していったのか、それが動画では説明されている。主には、FAPSA(オーストラリア初等・中等学校教育哲学協会連合会)の活動内容を中心に、システマティックな有料教員研修の話から、哲学対話の質をルーブリックに基づいて採点して最優秀グループを決めるコンテスト「Pholosothon」の話など、「え、そんなのありうるの?」みたいな話まである。興味のある方はぜひご覧になってほしい。

レクチャーの後にはそれをめぐっての対話篇も

また、このレクチャーの後には、講師である西山さんと、「子どものための哲学」(P4C)の実践&普及に関わっている土屋陽介さん、古賀裕也さんとの対談「オーストリアと日本の哲学教育をめぐるQ&A」があり、それも非常に面白い。コンテスト「Philosothon」がエリートだけの競争にならないのか?とか、教員研修はどうやるの?とか、聞いてみたいところを聞いてくれてる。

教員研修については、哲学対話の研修自体が探究的でフレキシブルなものであるべきで、「一つのやり方」を教えるものではないということだ。これに関して「(一つのやり方をやるのではなく)、やり方の引き出しを作る」という西山さんの言葉が印象深かった。

他では、海外の教育を経験してきた帰国生に「哲学」に対するニーズがあるという話もあった。日本の教育にどっぷり浸かっていると、こういう授業がある選択肢すら頭に浮かばないだろうから、言われてみればなるほどという話。

先行事例から学ぶ、Philosophy in Schoolへの道

この「子どものための哲学」、オーストラリアでは、Philosophy for Children (P4C)という言い方ではなく、Philosophy in Schoolという言い方をするらしい。そんなに学校の中に哲学教育が普及しているのだとも言えるが、それだけに、普及期には「哲学しろと言われても授業では実際どうしたらいいんだ」のような、日本の総合学習開始時に起きたような現場の戸惑いもかなりあったようだ。こういう動きの中で先述のFAPSAが果たした役割は、やはり大きいのだと思う。

対談でも述べられていたが、日本でも新学習指導要領で「主体的、対話的で深い学び」が求められたり、移民の増加による現実的な問題が生じてきたりしたことを考えると、たしかに今後の日本で哲学対話へのニーズが高まっていくことは十分に考えられる。日本よりも「先を行く」オーストラリアの事例から学べることは多そうだ。

他にも、哲学対話関連の動画がたくさん

今回僕が見たのは以上の西山さんのレクチャー関連動画だけ。でも、リストには実際の日本での哲学対話の様子も含めた様々な動画へのリンクが貼られている。興味のある方は是非どうぞ。

哲学対話系再生リスト

https://www.youtube.com/playlist?list=PLismC2DgRpJqWIC3vNPABmXUU6_avbDVx

(参考)哲学対話関連の主要著作・DVD

以下はご参考までに関連文献紹介。まだ他にもたくさんあると思うけど、とりあえず知ってるもののみ。

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4 件のコメント

  • 哲学対話おもしろいですよね。学校の授業に参加させていただき、いろいろな世代が混ざるとより思考が深まるように思いました(途中からだまってしまいました)。会社でやってみましたが、対話がうまくできるチームかの診断?にもなるように思いました。

    • 色々な世代でというのはいいですね。学校の場合は、いかに異学年でやるか、外部の人に参加してもらうか、ということが鍵でしょうか。

      • 私より年齢の上の方の話は、あまり気付きもなくおもしろくなかった(考え方がにているので、新鮮さがないのかなあと)のですが、高校生の発言は、まったく違う方向から飛んできて、新鮮かつ自分を鑑みてしまいました。異文化コミュニケーションのパワーを感じました。高校生に聞くと大人と真剣な話ができることが新鮮のようで世代や思考が違う方が混じるのがよいのかなと思います。

        • 哲学対話は学校の閉じた空間の中でやるのではなく、外部の人を巻き込んでやるのが良いように思いますね。ただもちろん、学校の中でやってらっしゃる方も多くいて、そういう方にはまた違う見方があるのだと思います。