In the Middle読書日記。下記エントリのAdvocacy Journalismを書く授業に引き続いて、pp540-551では、社会と実際につながるジャンルが紹介されている。 それがProfileだ。
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プロフィールといっても生徒自身のではなく、著名人の略歴のこと。日経新聞の「私の履歴書」みたいなものだろうか。生徒は、メーン州の人物を選んでインタビューし、プロフィールを書くのだ。
ただ、その人物が「女性」と限定されている。アトウェルによると、まだまだ地域の女性の活躍が知られていないかららしい。同じ女性の職業人としての彼女の意識が現れているのだろうか。
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授業の進め方は基本的にいつもと同じ。まず良いプロフィールを複数読んで、その評価基準をみんなで作って…から始まる。プロフィールの対象となる人物探しの時に、積極的に保護者に聞いてリストアップしているあたりが題材ゆえの特徴だけど、プロフィールを書くプロセスのミニレッスンや、アポイントをとる方法、取材の時に書き留めるべきこと、インタビューの際の質問リスト….これらは、Advocacy Journalismの時と変わらない。取材が終わっていよいよ実際に書く段になった時に、良い書き出しや結末のパターンを教えたり、最後に2日間置いてチェックするためのチェックリストを配ったりするのも、これまでのジャンルでやってきたことと同じだ。偉大なるワンパターン。書くサイクルを何度も回すことで書き手として成長する、というライティング・ワークショップの本質を、このワンパターンに見る思いがする。
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こうして完成したプロフィール。僕だったら作品集にして取材対象者にもお礼状とともに送付、というあたりで終わりそうなのだけど、アトウェルがすごいのはここから。実際にプロフィール欄を設けている新聞や雑誌の編集担当相手に、生徒に電話をさせるのだ。そして、自分の作品を送って、今後の新聞のプロフィール欄にこの記事を掲載してもらえないかどうか交渉をさせている。
これ、交渉が成功して、本当に新聞や雑誌に自分の文章が載った生徒は、嬉しいだろうなあ。もちろん掲載率は低いんだろうけど、こういう「リアルな出版の場」がゴールに用意されていることは、本当に大きな効果を持つと思う。
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Advocacy JournalismもProfileも、教室の外の人と直接つながり、発表の場も外に設けている。どちらも素晴らしい実践だと思う。そして、資金繰りに困っているだろうNPOや、まだ男性と平等に周知されているとは言いがたい女性にフォーカスを当てて、そうした人々の状況改善も狙っているのだから、なおさらだ。
アトウェルはこの章で、ドナルド・マレーの「問題はいい題材を産む(Problems make good subjects)」という言葉を何度か引用している。リアルな地域の問題を取材の場として扱い、それを書いて学校の外に発表して、問題の改善に貢献すること。「書くこと」の授業の一つの理想的なあり方が、アトウェルの学校では展開されていると思う。