『イン・ザ・ミドル』読書会@大人のブッククラブに参加してきました。

前回の青国件に続き、年末のお出かけエントリ。リーディング/ライティング・ワークショップの実践仲間たちが主催する読書会「大人のブッククラブ」にお出かけしてきました。今回は課題図書に「イン・ザ・ミドル」を選んでくださって、総勢19名の読書会となりました。


参加者は、小学校から高校までの先生を中心に、教科書会社の方や院生の方も。リーディング・ワークショップやライティング・ワークショップを実践している方も、そうでない方も。この秋からお世話になりっぱなしの甲斐利恵子先生も来て下さいました。

教えられることが多かった会でした

本当だったら、訳者こそ、この本のことを一番理解しているべきかもしれません。でも、実態としてそんなことは全くありませんでした。

この本については「文字が詰まった感じが…」「厚くて…」という声も、「第二章が大変」「内容的に重い」という感想も伺っています。僕自身も、「確かに第二章の細かさには圧倒されるし、そう思うのも仕方ない」と思っていました。実際に、僕自身も、例えば第二章で書かれている7種類のファイルなどはやっていません。そんなに何種類もファイルを作っても生徒も僕も管理できる気がしないからです。

ところが、この読書会では、ある司書の方が、「第二章に書かれている7種類のファイルのイメージがわかないので実際に作ってみました」と見せてくださいました。執筆中ファイルには、詩の作品の下書きが留められ、ワークショップノートも挟まれています。まさかこういう体験的な読み方をしてくださる読者がいるとは! びっくりです。

また、甲斐利恵子先生が「私が一番好きなのは第二章でした」という言葉に続いて「自分がこうすればよかったと授業しながら思うことが全て書かれていて、まさに我が意を得た感じで…」という主旨のことを発言されていて、これにもハッとしました。ああ、実際に実践を奥深くまで進めている方は、アトウェルの細かさ、丁寧さの持つ意味がわかっていらっしゃるのだな、大村はまの手引きもそうだものな。

甲斐先生は、「異なる国の大村はまとナンシーさんが、なぜこんなに似ているのか」という疑問について「人間とはどういう存在か、中学生とはどういう人か。その理解が、二人は同じだからではないか」ともおっしゃっていて、大村はまを介してアトウェルを語る言葉に、大村はまを鑑としてきた甲斐先生ご自身の長年の蓄積を感じました。

結局、僕はたまたまアトウェルに出会って、たまたまその本の翻訳に携わることはできたけど、それだけのこと。まだまだ自分にはアトウェルの実践の価値がわかってないし、わかろうともしてなかったんだなあ…。そんなことも感じた会でした。でも、翻訳することで、他の方の助けを借りて自分の理解を深めることができるのって、とてもありがたいこと。自分の力不足や理解不足をいったん受け止めて、自分の歩幅で前に進もうと思います。

グループに分かれてのディスカッションも

全体での輪になっての感想の共有の後は、テーマごとの小グループに分かれての話し合い。自分は「何を自分の軸にして実践しているのか」というテーマを選びました。ここでも、書くことの授業やリーディング/ライティング・ワークショップをめぐる具体的ないくつかの問題について話をしました。とりわけ、安心して学べる教室を作るにはどうすればいいのか、という話題が印象に残っています。僕は「書き手の権利10か条」を尊重してきたけど、そういうやり方ではなく、少しずつ自己開示の程度を高める方向性も模索したい。そう思いました。

この後の懇親会も夜の10時すぎまでと、僕には珍しく、遅くまでの外出。この日、集まった皆さんと、「イン・ザ・ミドル」を囲んで色々なお話ができたこと、訳者として本当に幸せな時間でした。この本、やはりもう一度ちゃんと読まないと。日本語にしておいてよかった。そんなことも感じました。ありがとうございました。

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3 件のコメント

  • 以前コメントさせて頂きました田中です。後期の授業でワークショップを試してみて,再度『イン・ザ・ミドル』を読んでみました。その読書メモをブログに掲載しましたので,お知らせします。やはり,実際に授業をやってみると,アトウェルの言っていることがより良く理解できたように思います。

    8つに分けて書かれていますが,下記リンクから辿ることができます。

    https://sitetanaka.net/nissi/2018/12/09/18304/

    • 田中さま、あすこまです。再読してくださって、さらにこれだけのコメントを書いて下さるとは、感無量です…! この本を翻訳して本当によかったと思いました。新しいほうにもリンクを貼らせていただきます。よろしくお願いします。