6月が終わり、7月になりました。6月は子供達もスタッフもしんどい時期。ようやく夏休みの入り口が見え、それをはげみになんとかのりきった感じ。今日は、つい先日のイベントを手掛かりに、風越の保護者コミュニケーションについて書いてみたいと思います。
ライブラリーに泊まるイベント「本の日Night」
先週末の風越では「本の日Nighr」というイベントがありました。風越のライブラリーに泊まってたっぷり本を読む、ただそれだけのイベントです。それでも、20人を超える保護者や子供たちがいて、15名弱が宿泊しました。この間にやったことといえば、夕食を一緒に食べることと、夜9時に一旦集まって、お互い読んでいる本を紹介すること。あとはひたすら本を読むだけのイベントでした。
で、これがよかったんですね。日頃なかなかまとまって本を読む時間が取れないので、この夜は一切仕事をしないと決めて、ひたすら読みました。ちなみに読んだのは、稲葉俊郎『山のメディスン』でした。
保護者とゆるくつながる「裏風越」
風越学園では、こんなふうに、保護者同士や保護者とスタッフがつながるゆるいイベント「裏風越」が時々開かれています。実は金曜日の放課後には「本の森カフェ」という別のイベントの一環で、僕も保護者に私の創作ワークショップを開いたばかり。なんでも、この「本の森カフェ」は、保護者とライブラリースタッフでやっている活動で、今年から来年にかけて自分たちの本を出版することを目標にしているそう。「本の日Night」の活動とあわせて、こうやって書くことと、読むことを保護者と分かち合えるなんて、贅沢だなぁとしみじみ感じました。
実は、僕もこれまで何度か保護者と作るイベントに関わってきました。もう卒業した保護者の方に声をかけられたことをきっかけに、九代目春風亭柳枝師匠をお迎えして「風越落語」という落語会を年1回開いています。東京の私立学校にあるような芸術鑑賞の機会が風越学園では少ないので、僕としてもありがたい機会です。
また、長野に移住してから好きになった山に関連しては、2023年に、「天明の噴火」の痕跡をたどるツアーを開催したり、この秋にも、地質に詳しいガイドさんをお迎えして「黒斑山ディープ・トレッキング」というツアーを企画したりしています。まあ、僕はこの仕組みを使って楽しんでいるスタッフの1人かもしれません。
もちろん忙しい中なので、よくそんなことやる暇がありますねと思われるかもしれません。でも、こんなふうに、何か何かの事柄を介して、保護者とスタッフが繋がれる機会があるのは、とてもありがたいことです。事柄を仲介して、「誰々のお父さん、お母さん」として出会うのではなく、大人同士が共通の興味を通して出会う感じ。それが、学校の日常をどこかで支えるゆるい網の目になっている。この「裏風越」のアイディアを出して運営しているスタッフの辰巳さんの慧眼には、恐れ入るばかりです。
5・6年の保護者コミュニケーション
「裏風越」に限らず、風越学園の保護者コミュニケーションは、教員の一般的感覚から考えると、かなり細かく丁寧で多様。僕の所属する56年ランニンググループを例にして言うと、まず、保護者会が毎月あります。そして、月によってスタッフからの話が中心だったり、おしゃべりの会だったりと趣向を変えています。僕の息子の保護者会が年2回、それもほぼ進路の話ばかりと言うことを考えると、これは正直言って異常です(笑)
また、週末には「イレブンラジオ」と題したpodcast番組を配信しています。基本的にはスタッフがその週の振り返りを語る番組なのですが、時に子供たちが語る「子供版」もあり。僕は今年、このラジオで配信する名目で、56年に関わるスタッフのインタビューを週一回位の頻度でしているのですが、これは個人的にもとても良い時間。雑談が苦手な僕が、仕事を名目にスタッフとじっくり話ができる機会となっていて、昨年度の授業見学と同様の、僕にとって大事なコミュニケーションツールになっています。
全般的にラジオは負担感なく、学校の最近の様子やスタッフ同士の雰囲気を保護者に伝えられる手段として結構オススメです。学級通信や学年通信を書くより負担感はありません。ただ、内容を管理職がチェックしたりし始めると一気にめんどくさくなるので、そうしない風越の管理職には、感謝しかないのですが。
管理職と言えば、風越には、校長自らガイドして、学校の日常の様子を保護者に見学してもらう「うろうろ風越」が毎月のようにあります。他にも年に数回、保護者やスタッフが自由に出店できるイベント「だんだん風越」があったり、年に1度、新しい子供、保護者、スタッフを歓迎する「風開き」があったり。それに加えて、給食のない風越のお昼ご飯を支えてくれる保護者の皆さんの動きがいくつもあったり…本当に保護者との関わりがたくさんある学校だなと感じています。
ここまで読むと、同業の方は驚き、「そんなのやってられない」と思われるかもしれません。前任の筑駒時代の僕もそう思ったと思います。何しろ保護者との関わりと言えば、年3回の保護者会に2回の2者面談位でしたから(風越にももちろん2者面談や3者面談はあります。というか個別のケースを入れるとほぼ毎週誰かしらと面談しています)。でも、まぁ、筑駒の場合は、その圧倒的な数字偏差値や東大合格実績で保護者の方が「黙ってくれていた」部分も多分にあったのでしょう。
一方、風越にはそれがありません。あるのは大事にしたい理念と、ごちゃごちゃした日常。そこで育っているものは、確かにあるのだけれど、数字では表されないので見えにくいし、不安にもなる。そんな中、何とかかんとか明るく前向きに子供たちの変化を見守っていくには、保護者とスタッフ、そして保護者同士が、顔の見える関係でおしゃべりできることが大事です。風越はそのための工夫を惜しみなくしている学校の一つです。
もちろんうまくいくことばかりではないし、問題点もあるので、風越の試みに対する保護者の方の受け止めは、いろいろでしょう。100%うまくいっているなんて胸を張って言うことはできません。でも、保護者との関係を「サービス」ではなく、「一緒に作る」という観点で本気でより良くしようとしている点において、風越はちょっと胸を張ってもいいんじゃないかと思ってます。
コメントを残す