今週になって、いよいよ授業も本格化してきた。今学期、中学生の授業では帯単元の扱いで「短歌の穴埋め」をやる予定。以前、短歌創作のワークショップで体験したこれだ。
自分が実際に経験してとても面白かったし、表現の読みと創作をつなげるいい試みだと思ったので、特に工夫もせず、そのまま授業に取り入れてみる。初回にとりあげたのは有名なこの歌。
君かへす朝の敷石さくさくと雪よ( )のごとくふれ (北原白秋)
語り手と「君」の関係、いまの場面、「さくさく」という音の響き、雪に体する直喩…そのあたりが考える材料になるだろうか。こういう表現を読解して、それを手がかりに自分で短歌を「創作」することが主眼。 「正解」はあくまで参考程度だけど、自分で考えたからこそ、「林檎の香」という、「香りのように降る」という意外な言葉の結びつきを意外と捉えられる。
こう考えると、文学的な表現の読み取りと創作を短時間で経験できる穴埋め短歌というフォーマットは素晴らしい。そういえばアトウェルが詩の授業を重視していた理由の一つも、詩が短い分量で文学的な表現技術を学べるからだった。
「穴埋め短歌」初回の今日は、クラスによって、色々と詩的表現を考えてくれたクラスもあれば、ややおふざけ気味なクラスも(とはいっても何かしら短歌の表現とリンクしているものが多かったのはさすが)。でも初回にしては悪くない。読むことと創作することを一緒に楽しめる空気をこれから作っていけたら。
問題は、穴埋め短歌に適した作品を見つけるのが、短歌をあまり読んでない僕にはけっこう大変な点かな。でも、これも短歌を読むいい機会と思って色々探してみよう。
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穴埋め短歌のあとは、読解の授業。今学期はこうの史代「夕凪の街」をとりあげる。定例の勉強会で勉強仲間の先生がとりあげていて、自分もつい読み込んでしまった漫画。きちんと生徒の読解を引だせれば、よい授業になると思う。そういう力のある作品だ。
今日は初回なので登場人物や舞台設定の整理のみ。広島市の中央公園があったところがかつて原爆スラムだった様子を、以下のサイトの航空写真で歴史をさかのぼって見せたら、なかなか良い反応だった。こういうテクノロジーは、以前に比べて本当に使いやすくなったねえ。
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穴埋め短歌も「夕凪の街」も、どちらも定例の勉強会の仲間に教えてもらったものだ。彼らとの出会いがなければこのどちらもなかった。やっぱり、一緒に勉強する仲間がいると助かるし、大切なことなのだと思う。 仲間に感謝しつつ、自分も彼らに多くのものを与えられるように、今学期も頑張ろう。