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100ページに満たない作品。中でも「夕凪の街」は30数頁の小品ながら、強い感銘を受けた。舞台は終戦後10年たった広島。街は発展に向かい、一見、人々は前向きに明るく生きているようだけど、その中で時折表れてくる過去の記憶に苦しむ人を描いている。とにかく細部が丁寧に描かれていて、最初の時は読み流した箇所も、一度読み終えてまた読み返すと「こういう意味があったのか」と気づかされることが多い。勉強会の仲間と各自の読解を言い合いながら読んだのだけど、非常に面白かった。
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極限状態の中で、人間は他人にたいして本質的には加害者になること、そしてその地獄を見てきた人が、加害者である自分の記憶に苦しむこと。そんなテーマが、いま、高校生の授業で読んでいる石原吉郎「ある<共生>の経験から」とも重なった。そういう状況に置かれたら自分はどうするだろうとも考える。そもそも加害者でない生というのがありうるのかについても。
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生徒にも読んでもらおうかな。細部の作り込みが丁寧だから、小説を読み解くように読み解いていける漫画。国語の授業になっても、悪くない。この漫画の一場面を小説にして、漫画だからできる表現/小説だからできる表現に注目してもらうのもいいかもな。
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書名で調べたらとても有名な漫画らしい。よい漫画に出会えた。教えてくれたMさんありがとう。