先週の木曜日は、久しぶりの「軽井沢Adventure in the Classroom」の会(軽井沢AITC)があった。この回は、風越学園の同僚であるKAIさん(甲斐崎博史さん)とあっきー(木村彰宏さん)が豪華ダブル講師を務めて、ファシリテーションやプロジェクト・アドベンチャーについて、月2回のペースで学ぶ一年間の連続講座である(月2回なのに「久しぶり」と書いたのは、僕がメニエールの体調不良で2回休んだから)。すでに15回目。あまりブログには登場していないが、今年度の自分にとって大事で大きな学びの場なので、ちょっとそこで気づいたことを書いておこうと思う。
目次
「自分について知る」機会
この講座で一番感じるのは、さまざまなアクティビティへの参加と、その後のふりかえりや体験の共有を通して、「自分はどういう感じ方をする人間なのか」「自分にはどういう思考の癖があるのか」をふりかえれるありがたさだ。前回も、チームで何か課題を解決する「イニシアチブ」系のアクティビティが提示された時に、自分はすぐに「その課題をどう解決するか」に意識が行ってしまう。ファシリテーター役にゲームの用語やルールを確認し、その範囲内で課題を解決することを考える。一方で、他の参加者がいまどんな気持ちで何を考えているのかには、残念ながら意識がほとんどいかない。「人間よりも事柄に興味がいく」自分の傾向が、ここでも強く表れてしまう。
また、自分には得意なアクティビティや苦手なアクティビティがはっきり存在する。頭で考えたり言語で課題解決したりするのは得意。逆に、イラストや写真を使ったり、(この勉強会ではやってないけど)レゴを使ったりするのはとても苦手な人だ。いわゆる「言語優位」なタイプなのだと思う。関係ないけど、Youtubeの解説動画も自在に前後を一覧できないのがイライラしちゃって、文字のマニュアルにしてくれ…というタイプ。
同様に苦手なのが「感情を取り扱う」ワーク。これは「なんで自分のプライベートな感情を、ここに提出しないといけないのか」「自分の感情に他者に介入してほしくない」という反発もあるのだと思う。もとはといえば、プロジェクト・アドベンチャーも、「人間の感情に介入して、人間関係を操作する」面が気持ち悪くて、敬遠してきた。風越で最初に経験したPA研修も、あまりに自分に合わなくて途中離脱したくらい…。
「多様な体験」がそこにあること
こういう「自分の思考の癖」に気づく上で大事なのが、周囲の参加者の反応だ。毎回のアクティビティのあとに参加者がみんな感じたことを交流する機会があるのだが、自分が「面白い」と思った同じ瞬間に、「たいして面白くないが、適当につきあっている」人がいる。もちろんその逆もある。本当に、感じ方は千差万別なのだ。それを実感できただけでも、この勉強会に参加してよかった。
前回の軽井沢AITCでも、自分がアクティビティのルールを確認した上で、そのルールに抵触しない限りでの攻略法を提案して、結局そのやり方でゲームをクリアしたことがあった。ただ、それでよかったとはならない。「その提案で、ゲームの難易度は下がったが、つまらなくなってしまった」「難しいほうがわくわくした」という感想が事後に出されて、なるほど、自分は単純に良い攻略法を見つけたつもりになっていたけど、そういう感じ方もあるのかと驚いた。僕が攻略法を提案したあとのあのゲームは、「これなら達成しそう」と思って安心して参加した人もいれば、「つまらなくなってしまった」と思って参加した人もいる。同じアクティビティをしているようで、体験は多様だったわけである。ある参加者曰く、攻略法を思いつく人はそれで楽しいかもしれないけど、思いつかない人はただそれに乗っかるだけで楽しくはない。なるほど、自分は比較的「攻略法を思いつく側」だけど、それだけに、「思いつかない側」の気持ちに配慮できていないんだな、と改めて思う。
教室での場づくりにどう活かす?
「自分の」というか「どの人にも得意や不得意があり、思考や感情に偏りがあること」「複数の人がいる場では、各自の体験は一致しないこと」を経験できたことは、この一年間の大きな財産だ。だって、授業も「場づくり」なのだ。僕がある願いを持って特定の活動を仕組んでも、それが参加者にとって同一の体験になることはない。僕が何かを説明して、それがその通りに伝わるなんてことはない。それは、聞いていない子が悪いというよりも、「そもそもそういうもの」なのである。
自分がつくる場は、どうしても自分の思考や感情の癖に沿ったものになりがち。僕は言語優位な人間なので、放っておくと言語優位な人にだけ居心地が良く、わかりやすく、参加しやすいものになりがちな危険がある。そこは十分に意識した上で自分の授業づくりをチェックする必要がある。そして、その上で、結局は体験の意味はバラバラであることを肯定するしかないのだろう。だからこそ、個々人が体験の中から自分なりの意味を作り出すようなふりかえりの支援が、けっこう大事になるんだろうな。
「参加者が授業から受け取る体験は多様」なんて、書いてみればしごく当たり前で、授業づくりの一丁目一番地じゃんという気さえするけど、自分はようやくそのあたり前が実感できた一年だったと思う。
軽井沢AITCで学んでいること、他にもあるんだけど、長くなってきたのでいったんはここまで。あとはまた気が向いた時に書きます。
参考文献)KAIさんの著作
おまけに参考文献として、この講座の講師のKAIさんの著作。PAのアクティビティが目的別にまとまった良い本なので、興味のある方はぜひ!