[読書]こんな月もある。読書どころではなかったが正直なところの、2024年1月の読書

月のはじめの恒例の、前月の読書エントリ。1月といえばお正月休みがあるので読書の「稼ぎ時」なんだけど、今年はメニエール氏病の再発で、文字やパソコンの画面を見ると気持ち悪くなる状態が続いたので、二週間以上もまるまる読書をしなかった。というわけで、「読んだ中から選ぶ」というよりも「ほとんど読んだものすべて」になりそうな、2024年1月の読書エントリ、行ってみましょう。

目次

今月も安房直子。短編集『春の窓』はいいぞ!

昨年11月から月1巻のペースで読み始めた安房直子の作品。1月はコレクション第4巻『まよいこんだ異界の話』を読んだ。どれも、登場人物が不思議な動物や精に誘われて異世界に行ってしまうのだが、昨今の転生ものと違うのは、そのことで何か後悔や罪を背負ってしまうということだ。「ハンカチの上の花畑」では、菊酒をつくる小人たちが暮らす不思議なハンカチを手に入れた若夫婦が、もらった時の約束を破ってその菊酒で金儲けを始めてしまうことから、ハンカチの上の花畑に閉じ込められてしまう。「丘の上の小さな家」では、少女がレース編みを教える不思議な学校に行って夢中になって教わっているうちに、家に帰るのを忘れて、母親を失ってしまう…というふうに。

誰にも取り戻せない後悔や、背負ってしまった罪がある。そういう人たちの心情を告発するでもなく、許すでもなく、ただどうしようもない様子を描く安房直子のファンタジーは、読んでいて心にしみる。そうそう、この巻にあった「ライラック通りの帽子屋」は、たしかに子供時代に読んだ覚えがある。すっかり忘れていたのだが、大人になって読み返してみると、僕は安房直子のいくつかの作品を確実に子供時代に通り過ぎていて、当時は忘れ難い印象をおぼえていたようだ。この年齢になって再会できるのを嬉しく思う。

そんな安房直子の作品でどれか一冊選ぶなら、安房直子『春の窓』をおすすめしたい。

この短編集には、どこかさびしさや欠落を抱えている人たちを描いたお話が多くて、とても安房直子らしい。とりわけ、収録作品の一つ「日暮れの海の物語」は一読して忘れ難い印象を残す。自分の好きな正太郎の病気をなおすために、海亀の妻になる約束をしてしまった少女さえ。正太郎は快方に向かうも、別の娘と結婚してしまい、恋のかなわなかったさえは、海亀からの求婚におびえる生活を送り始める…というストーリーだ。他にも、小さな宝石のような、かなしく美しい物語がつめこまれている。

死ぬ前の120日間を描いたエッセイ、『無人島のふたり』

1月の読書で安房直子の次に印象に残ったのが、山本文緒『無人島のふたり』。1月はメニエールも再発したし、もともと肝臓の数値がとても悪いし…で、自分ももういつまでも健康というわけにもいられない。それで、つい手にとったのが、直木賞作家の著者が膵臓がんになって以降の死ぬまでの生活を綴ったこの本。発病して、治療というよりも緩和ケアを選んで夫婦で徐々に近づく死に向き合う日々。読んで色々と思うことはあるけれど、この夫婦の在り方がよいなあと思った。こんなふうに、どちらかの死にちゃんと向き合える夫婦でありたい。なお、著者は軽井沢在住だったので、僕もよく知る医療ケア施設が「Aクリニック」として登場しており、そのお仕事の大切さにも改めて気付かされた。死をめぐるエッセイというと、1月は佐々涼子『夜明けを待つ』も読みたかったのだけど、ちょっと手が届かずに終わった。2月に手にとってみたい。

思わぬ掘り出し物、どらえもん探究ワールド「漢字のひみつ」

『ドラえもん探究ワールド 漢字のひみつ』は、年末年始に立ち寄った本屋でなんの気なしに手にとった本なのだけど、意外にとても良くてびっくりした。漢字の歴史、成り立ち、構成、字体、字形、当て字のことなど、漢字に関する一通りの知識が書いてある。まあ、「説の一つ」程度の話を断言している雰囲気のものもあるのだけど、ひとまずはこのくらいの射程があれば、小中学生の漢字の知識としては十分すぎるのではないかな。ドラえもんの漫画は個人的には正直余計なのだけど、これがあるほうが売れるんだろうな。手持ちで持っておきたくて買った一冊。

 

眺めるだけで楽しい『美しい和菓子の図鑑』

青木直己『美しい和菓子の図鑑』は、めまいからの回復期にぱらぱらとめくっていた本。イラストもきれいだし、和菓子の歴史についてもけっこう書いてあって、眺めるだけでも楽しい。どら焼きがもともと、今でいうバームクーヘンのような棒状のどらの形をしていて、いまのような形になったのは大正時代以降だとか、そういう豆知識系のエピソードも充実している。

今月は、他ではテーマプロジェクトでドキュメンタリー映像をつくることになって読んだ『動画・映像制作が創るクリエイティブな学び』が面白かった。これは動画作りの授業をやりたい人は必読なのではないかな。僕は、「編集」がとても国語的なアプローチだと思うので、映像の撮り方のコツよりはそっちのほうを興味深く読んだ。

今月読んだ本は以上でほぼすべて。あとは、読んだけどいまいちな本だったので、ここにはわざわざ記さない。まあ、メニエールがあったわりには、安房直子の作品をちゃんと読めたから、それでいいのかもしれない。2月は、とりあえずは安房直子コレクションの第5巻を楽しみにしているが、他にも『夜明けを待つ』とか『超人ナイチンゲール』とか、興味があって読みたい本が何冊かある。読めるといいな。

 

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