2月も終わるので、今月読んだ13冊の本から、良かったものをピックアップして紹介します。
目次
今月のベストはハッティ「教育の効果」
今月のベストは文句なくハッティ「教育の効果」。これ、前回のエントリに書いた通り「劇薬」だけどとにかく面白い一冊です。ぜひ教育方法についての議論の参考書にしたい。
山元先生のこちらの本も
お仕事系読書では山元隆春「読者反応を核とした「読解力」育成の足場づくり」も良かった。思想的にはリーディング・ワークショップにも近いところにいる山元先生だけど、この本では「絵本の読み聞かせ」「ブッククラブ」(テラビシアにかける橋の8週間のブッククラブの実践あり)「理解のための方法」など、読者反応理論に基づいた読みの交流活動を軸にどう読解力を育てていくか、外国の事例が紹介されている。ブッククラブなどに興味のある人にはおすすめ。
この本も、できればまた別にエントリを立てて書いてみたい。
小説は、甲乙つけがたい「鹿の王」「穴」
さすがの上橋菜穂子、安定の面白さ
今月読んだ本からはこの2冊を。本屋大賞をとった上橋菜穂子「鹿の王」は序盤から息を呑む展開で、さすがの力量。「鹿の王」としての道を選ぶヴァンの生き方もさることながら、第二主人公のホッサルの、医療をめぐる考えも色々と考えさせられる。
ブッククラブで読んでみたい傑作
もう一冊は有名な児童書、ルイス・サッカー「穴」。グリーン・レイク・キャンプに送られて穴を掘り続けさせられるスタンリー・イェルナッツと、そこで出会ったゼロたち仲間の物語。現在の話と過去が密接に関連していて、伏線が多い。なるほど、これがブッククラブで使われている理由がわかるな。他の人と話してみたら色々と発見がありそう。
1973年に書かれた石垣りんのエッセイが味わい深い
石垣りんのエッセイ集「ユーモアの鎖国」を今さら読んだのだけど、これはいいですね。初版1970年代の本なので古い風俗も多いけれど、それがまた味わいもあるし、美化されていない昭和30〜40年代を見る思い。表題作をはじめ、この人ならではの、透徹した、地に足のついた視点を感じる。
新書ではちくまプリマーの2冊が良かった
先月から今月に出た新書のうち、ちくまプリマー新書の2冊がとても良かった。これは司書さんにもすぐに「図書館に入れてください」とリクエストした。
「踏まれたら立ち上がらない」雑草の強さ
中でもイチオシはこちら。この著者の本を読んだのは初めてなのだけど、所々に読者の興味をひく「問い」を立てて、引っ張っていくのがうまい書き手。心地よく読むことができた。そして、よく言われる「雑草魂」とは違う。「踏まれたら立ち上がったりしない」雑草の真の強さ、柔軟さも面白い。ちょっと教訓話に流れがちだったのが残念だったけど、ジュニア向けだし仕方ないかなー。
誰にもでも身近な生命倫理の問題
こちらはキュアの思想とケアの思想の相克という倫理的課題をどう考えるかという生命倫理の入門書。類書はいくつかあるが、テレビドラマ「ラストホープ」「コード・ブルー」や羽田圭介「スクラップ・アンド・ビルド」などのフィクション作品を使ったり、アンパンを食べたがる患者の事例を使ったりして、読みやすい。高校だとつい「生命倫理=医学部志望」と短絡的に考えられがちだけど、介護の問題は、僕の世代にも、(祖父母のいる)生徒の世代にも身近な問題。
というわけで、今月読んだ本からの紹介でした。こうやって見ると、先月今月と、詩歌を読んでないな(石垣りんのエッセイに引用されてるけど)。来月は読むことにしよう!
『読者反応を核とした「読解力」育成の足場づくり』注文しました!教員になる前から子どもたちが良書に出会うことを助けたいと思っていて、ブッククラブがその助けになると考えています。この本を読んで、自分のブッククラブの授業を改善したいです。