無藤隆さんが「保育Lab」で連載していた「ときがたり 質的研究入門」が完結したそうなのでお知らせします。
ときがたり 質的研究入門
https://sites.google.com/site/hoikulab/home/studyandresearch/readarticles/tokigatari
スタンダードなハンドブックの「超訳」
この「ときがたり 質的研究入門」は、質的研究のハンドブックThe SAGE Handbook of Qualitative Research 4th editionの要約版(無藤さんご本人のfacebookでの言葉だと「超訳」版)。もとのハンドブックは大変有名な本で、僕もエクセター大学で勉強していた時にはけっこうな期間手元に置いていた。いや、正確に言うと膝の上に置いていたほど、「ハンドブック」の名前を裏切る分厚くて大きな本である。
日本語では、このシリーズの2nd editionが北大路書房から3冊の分冊で翻訳されている。
ただ、2nd editionは元々が2005年なのでもう10年以上も前のもの。このシリーズは改訂の度に内容がけっこう変わるので(ただし僕も一部の論文しか読んでいないのではっきりしたことは言えない)、内容的には古いのかもしれない。だから、最新の第4版の内容が日本語でちらっとでも読めるというのは大変ありがたいことだ。
特に、個々の研究法(メソドロジー)についてはともかく、質的研究の理論的枠組み(存在論や認識論など)については、日本語で読める文献が限られていると思うので、実は僕も留学中に読ませていただいた。初めて質的研究という言葉に触れる人にはちょっと難しい内容だと思うけど、無料で読めるとても良いリソースだと思う。
他の質的研究の文献について
ついでに、他の質的研究の文献で、僕が知っているものについてあげておきます。僕が日本語で読んだ中では、フリックの次の本がとてもしっかりしていて、勉強になった。理論的背景からデータ収集のためのメソッドまで網羅的に書かれているし、序盤で説明されるドイツから見た質的研究の歴史も、英米系の教科書にある質的研究史と違っていて面白かった記憶がある。
あと、質的研究のベースになる考え方の一つ、social constructionismについては、ガーゲンのこの本が素晴らしい。わかりやすいとかそういうのじゃなくて、感動的ですらある。読み終えた時には胸がいっぱいになった。
この2冊については、また読み直して感想をブログに書きたいなと思う次第。
日本語訳はないのだけど、質的研究の具体的な研究方法については、Mixed Methodで有名なクレスウェルのこの本が良かったです。
以上の本も、良かったらご参考にどうぞ。