渡英直後に各地の図書館を巡っていた時、「ライフ・ストーリーを書く」「ファミリー・ヒストリーを書く」というような講座がしばしば図書館で案内されていて、どんなことをやっているのかなとちょっと気になっていた。
そしたら、地元のエクセター図書館でCreative Writing Workshopが開催されるとな。ラグビーW杯の後だけあって テーマは「Reading, Writing, Rugby!」。ラグビーにはぶっちゃけ全く興味がないんだけど、ライティング・ワークショップに興味があるので、参加してきた!
僕は昔、吉田新一郎さんの訳本(『ライティング・ワークショップ』)の影響もあって、ライティング・ワークショップと言うと「ミニレッスン→書く時間→共有」という手続きを踏むものだと思っていたけど、英語圏ではこの言葉は「書くことについてのワークショップ」を指す一般名詞で、必ずしもこの通りではない(例えばアトウェルのライティング・ワークショップには共有の時間が定められていない)。一般向けのライティング・ワークショップにも、色々なスタイルがあるのだと思う。
とはいえ、「書く前に技術について学ぶ」「実際に書いてみる」「共有する」のステップはやはり基本なのか、今日参加したワークショップも、午前に「読んで学び」、午後に「書き」、最後に各自の作品を「共有する」流れだった。
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活動の中で面白いなと思ったのは、スポーツのクリエイティブ・ライティング講座なのに、午前中は歴史映画(ブレイブハート、グラディエーター)のセリフ・描写を読むところから入ったこと。スポーツの描写には戦いのメタファーが使われるからだ、と後になって理由を聞いた時には、なるほどと感心した。同じ流れでテニスンの詩、エリザベス1世のスピーチも登場。
また、午前のレクチャーでは3C(Clear, Coincise, Coherent)や次の3つのゴールデン・ルールが紹介されたのだけど、
1)Avoid Run-ons (長々と続けない)
2)Trim the Fat (無駄を削ろう)
3)Read Your Work Aloud (音読しよう)
まあこのへんはどの言語でも同じなんだなあと思う。そうコメントしたら講師のクリスさんも面白がってたけど。
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午後に各自の創作に行く前に、プロの書いたラグビーについての文章の穴埋めをするワークに時間をかけて、読解と創作の橋渡しをしていたのも面白い。参加者がみんな違う言葉を入れるので、表現の可能性を考える機会になる感じ。これ、穴埋め短歌と同じ発想だと思う。
この穴埋めに時間をかけてから、最終的にはラグビーW杯の写真を使って、それについての短いナラティブを、視点や語り手の人称を自由に設定して書くという課題だった。全体としては、「読解→穴埋め→フリーの創作」という形で、読むことと書くことをつなぐデザインになっていた。また、事後にクリスさんにワークショップの組み立てについてお尋ねしたところ、約20分を目安に作業を組み替えることを意図されていたそう。
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ただ、地元の方に混じって、しかもクリエイティブ・ライティングのワークショップに加わるのは大変な面もあった。僕の英語力では、イギリス人同士の、しかも予備知識のないスポーツについての会話は正直2割程度しか聞き取れない。何よりクリエイティブ・ライティング向けの語彙が決定的に不足しているのだ。作文をはじめ教育に関連した文章しか読んできてないからなあ…。
でも、クリスさんや他の参加者の方が大変優しい方ばかりで、こちらの参加目的を理解して色々な配慮や励ましをくださって、最終的には僕も「ラグビーの写真を見て英語でナラティブを書く」体験ができたので満足。共有する際に自分で音読するのは緊張したけど、拍手と「ポエティックだ」というコメントをいただけて嬉しかった。やっぱり初心者の書き手には、「相互批判」や「改善点の指摘」より先に、「励まし」と「承認」が次に進む大きな力になるんだと身を以て感じた次第。楽しかったです。ありがとうございました。
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今回の参加者の方も、書くことを趣味としてカジュアルに楽しんでいらっしゃる印象。お昼ご飯の時に同席してお話を伺ったところ、イギリスではある程度大きな町にはたいていライターズ・グループがあって、趣味で書いたり出版したりするのが好きな人が集まっているらしい。で、エクセターにもわりと大きなライターズ・グループがあるんだそうな。これかな?
▷ Exeter Writers
いつかこの活動も覗いてみよう。
韓国の討論フェスティバルでも最後に著名な作家が講演して、上記の3点を挙げてました。
面白かったのは、
日本語のように「の」を入れすぎない。
助詞の使い方に気をつける。
といった所が同じ膠着語だなと。
いかに共感してもらえるように書くか、ということにも言及してました。
以上、通訳してもらいながらの理解なので、不十分ですが。
イクトスさん、韓国語でも同じようなことはあるんですね。語順も日本語と同じだから、良い文章の共通点も英語よりも多いかもしれないですね。