自分のやり方はこれ。お薦めです、穴埋め短歌。

以下のエントリで経緯を書いてるけど、今学期は授業の最初の15分くらいを使って、「穴埋め短歌」をやっている。これはなかなか面白いので、同業の方にお薦め。

 

授業開始。「穴埋め短歌」はじめました。

2015.04.16

短歌の穴埋めでプチ創作

2014.10.02

穴埋め短歌自体はとても単純で、短歌を一部分穴あけにして埋めてもらうだけ。今の所の僕のやり方はこう。ただし、まだ4月が終わっただけだから、今後やり方も変わるかも。

(1)プリントに空欄をいれた短歌を配布し、4分くらい時間をあげて生徒に穴埋め部分を考えてもらう。
(2)時間がたったら、1〜2分くらい立ち歩きの時間。生徒は教室内をうろうろしながら、いいなと思った短歌を探す。
(3)終わったら、ランダムに生徒を指名。生徒は、読んだ中から一番良いなと思ったものを挙げる。自分の作品を含めても良い。誰の作品であるかは言わない。
(4)時々、僕がその短歌について質問したら、答えるのは書き手ではなくて指名された生徒。「作ったのは誰々なのでわかりません」はダメで、自分が解釈したその歌について答える。
(5)4〜5名くらい指名したあとで、推薦作品が他にもないか聞く。
(6)元の歌では何が入っていたかを見る。
(7)歌人やその歌人の他の歌を三首紹介する。


特に(4)あたりは責任を持って選ばせるという面もあるんだけど、このせいで「説明しやすい歌」ばかり選ばれないかちょっと気になってて、今のところ様子見。かかる時間は15分くらい。本当はもう少し短くしたいんだけど…。

今までの授業で使った短歌は以下の通り。

1) 君かへす朝の舗石さくさくと雪よ(    )のごとくふれ(北原白秋)
2) (   )の(     )には夏という商品があるらしいと聞いた(笹井宏之)
3) 



焼き肉とグラタンが好きという少女よ わたしはあなたの(     )が好き(俵万智)    
4) 



靴紐を結ぶべく身を屈めれば全ての場所が(       )(山田航) 


元の歌は、それぞれ1)林檎の香、2)北極のパン屋さん、3)お父さん、4)スタートライン。元ネタをあかした時に一番生徒の反応がよかったのは俵万智の歌かな。「横顔」や「その笑顔」など、ほのぼの系の内容をイメージしていた人が多く、「え?何それ?」→「父親と不倫??」という展開に教室が少しどよめいていた。4)のスタートラインは、イメージしやすかったせいか「正解」をあてる生徒も。

もちろん「正解」はあくまで参考程度の扱いなので、生徒作でいいなと思う歌もたくあんある。

( 南極 )の( 百貨店 )には夏という商品があるらしいと聞いた
( 真冬日 )の( ビニルハウス )には夏という商品があるらしいと聞いた
焼き肉とグラタンが好きという少女よ わたしはあなたの( 大好き )が好き


当然、面白いネタに走ろうとする生徒もいて、その中で個人的に面白かったのは、

焼き肉とグラタンが好きという少女よ わたしはあなたの( もも肉 )が好き
靴紐を結ぶべく身を屈めれば全ての場所が( パンチラチャンス  )


あたり。下ネタは、思春期男子なのでお許し下さい…。でも、「ふともも」じゃなくて「もも肉」なのは、一気に生々しさや不気味さが増して面白いなあと思った。いずれにしても、短歌を読み込みつつ、どんな言葉を入れるといいか考えるいい材料になる。

ただ、この穴埋め短歌、ちょっと難しいなと思うのは、 いい歌や有名な歌の中でも穴埋めに向くものとそうでないものがあるということだ。文語よりも口語の、しかもライト・ヴァースと言われるほうがいい。また、やはり名詞を抜くのが常道で、周辺の言葉をヒントに穴埋め部分を推測できて、かつ安易な予測を裏切るもの…。僕はもともと短歌をあまり知らないので、穂村弘さんの本を読んだり、いいなという歌人を見つけたら歌集を買ってみたりして、なんとか準備している。

そんな中で、この本を購入した。

短歌の不思議
東 直子
ふらんす堂
2015-04


 歌人の東直子さんによる短歌の入門書で、なんと穴埋め短歌もたくさん!これは穴埋め短歌の材料探しにももってこい。今回のエントリで穴埋め短歌に興味を持って下さった方は、ぜひお読み下さい。 

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