ちょっと議論を呼びそうな面白い記事を見つけたので紹介。「教師は、個々の生徒にはそれぞれに合う学習スタイルがあるって思いたがるけど、それって証拠がないよね」という記事だ。
▷ Are ‘Learning Styles’ a Symptom of Education’s Ills?
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言語で学ぶほうがよく学べる生徒、ビジュアルを使うほうがよく学べる生徒、自分で実際に行動することで一番よく学べる生徒…。人にはそれぞれ最適の学習方法があり、それは多様だから、できるだけその多様性を尊重することが大事である。「学びの個別化」という文脈からは、こういう考え方は「当たり前」のものとしてしごく受け入れやすい。僕もつい最近次のようなエントリを書いているし、学校では多人数を相手にするがゆえに、やむを得ず特定のスタイルの学習方法を全員に押し付けざるを得ないのだと思っていた。
▼しかし、この記事によると、この通念はそれを支える調査結果を欠いている。むしろ、逆のネガティヴな結果はたくさん出ているらしい。もとの論文にあたってないので確認していないけど、それにしてもちょっと驚きである。
この記事はそのような点を指摘した上で、「個々の生徒に合う学習スタイルがある」という通念が広まった理由として、「今の教師がそう習ったから」「教育の現場で、証拠に基づいた(evidence-basedな)研究が十分になされていないから」という問題に言及している。そして、最後に、教室における研究のより良い利用法を模索するには、まずは研究者と授業者で実際の対話をすることが大事、と結んでいた。
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この「個々に合う学習スタイルは存在しない」というの、正直衝撃的だなあ。あくまで僕個人の体験からは、これについてはにわかに受け入れがたい気持ちがあるのも正直なところ(ただ、その違和感にしたって、僕の「最適な学習スタイルがある」思い込みがそう感じさせている可能性もあるのだから、反論にはならないかも)。
しかし、個々に合った学習スタイルの存在を肯定する研究結果がほとんどないという指摘は面白いし、この記事の後半で書かれていた、教育現場での研究の不足(研究者と実践者の交流不足)の問題点は、本当にその通りだと思う。自分も研究者的視点を持った実践者でありたいのだけど、なかなかそこまでたどりつくことができてない実情だ。研究と実践を相互に往還するようなアクション・リサーチをやっていけば、今回の学習スタイルの話のような「常識」がひっくり返る日もくるのだろうか。
3年後の追記:下記エントリをどうぞ
3年後にラーニング・スタイルについての2018年時点での理解を書きました。ご覧下さい。