誰でも名前なら知ってるドフトエフスキーの名作「罪と罰」を、実は読んだことのない現役作家4名。この本は、岸本佐知子・三浦しをん・吉田篤弘・吉田浩美の4名が、わずかな手がかりとともに未読の「罪と罰」の内容を空想して語り合うという痛快な一冊。とにかく、これを読むと無性に「罪と罰」を読みたくなる!
わずかな手がかりで重ねる推理!迷探偵・三浦しをん
4人の推理は、「最初のページと最後のページだけ読む」ところからはじまる。他の手がかりは、ドフトエフスキーやこの作品についてそれまで仕入れた知識だけ。そもそも主人公は?舞台は?みたいなところからはじまって、どんなストーリーなのかを推測していく「読まない読書会」だ。
実はメンバーのうち、吉田浩美だけ、以前にNHKの番組で影絵になった15分間の超ダイジェスト版「罪と罰」を見ているので、彼女のヒントは重要。それを参考にしつつメンバーが「主人公のラスコ(ラスコーリニコフをこう呼ぶ)はいつ殺しをするのか」「動機は?」「ソーニャとの関係は?」などと考えていく。ここで、推理、というより妄想力が際立っていたのが三浦しをん。僕にとっては「舟を編む」「風が強く吹いている」などの作家さんだが、この人の発想力が本当にすごすぎて笑えた。
少女漫画やボーイズラブ作品に詳しい、好きな行為は妄想と語る。
とあって、なんだか超納得してしまった…。
読後読書会も面白い
この「読まない読書会」、最後のほうはついに実際に作品を通読してからの読書会と相成るのだが、これがまた良い。さすが現役の作家さんだけあり、答え合わせの楽しさはもとより、ドフトエフスキーの描写のうまさ、登場人物の魅力などについて、ぞんぶんに語り合ってくれる。マイナーな人物についてしっかりスポットライトをあてるところがすごいなあ。
「罪と罰」のおともにどうぞ
僕は「罪と罰」はなかば義務心で過去に読み通したことがあるのだけど(ロシア文学は人名が覚えられなくて苦手…)、この本を読むと、誰だって「罪と罰」を手にとってみたくなることうけあい。未読の人は、途中まで読んでから、この本の「読後読書会」パートの前に作品を読んでもよし、ネタバレがあっても良いのなら、この本で皆さんの妄想を楽しみ、登場人物やあらすじについてしっかり把握してから原作にいっても良い。とにかく、「罪と罰」を読む気があるならセットで読まないと損、そして「罪と罰」を読む気がなくても、この本を読んだらきっと読みたくなる。そんな一冊である。僕も今度は古典新訳文庫で読んでみようかな!