今年の僕のテーマの一つは「漢字指導」。中高教員時代は、せいぜい漢字テストを生徒に文章で作らせる程度で、あとは「はい、各自でやっておいてね」とテストする程度だったのが、風越に来てこんな切実に漢字指導について考えることになるとは….笑。今も試行錯誤中なのだけど、その中で面白い本に出会った。栗林育雄『漢字学習アイデア事典』。これは自分の漢字指導にもとても役立ちそうな本なので紹介しておく。
漢字を楽しく理解するさまざまな手立て
端的に言えば、本書は漢字学習に興味を持たせるさまざまなクイズやゲームがふんだんに紹介されている本である。しかも、単に楽しいだけでなく、部首への理解を深める、画数を確認する、対になる熟語を学ぶなど、漢字学習としても意味があるクイズやゲームなのが良い。対戦型のクイズやゲームだけでなく、国字を作るなど勝ち負けのない遊びもある。山川晃史さんの漢字ゲーム(下記エントリ参照)と違って運や戦略の絡む要素が薄いのがやや惜しいが、それでもこれだけのバリエーションを用意されているのは素晴らしい。
漢字の手書き習得へのサポートも充実
また、同様にとても助かるのが、漢字の手書き習得へのサポートも充実していることだ。「漢字学習の最終ゴールは手書きではない」とはいえ、やはり「書ける/書けない」が定着の判断基準となる(そして保護者の関心もそこに収斂する)漢字学習においては、手書きのサポートは大事になる。
本書では、まず、小学校で書き間違いやすい漢字の一覧が学年配当表別に掲載されている(19ページの一覧と、p150-151の「ざんねんな漢字まちがい字典」)。おそらく子どもの書き間違いはパターン化できるだろうことは予測できるが、小学校での経験が浅くまだその傾向が掴めていなかった僕には、大変ありがたい。同様に「間違いだらけの漢字テスト」や「チラ見せ漢字テスト」のように、典型的な間違いを意識させたり、部首や音符を意識させたりする漢字テストも、全て手書きで書けるようにするサポートとして有効だろう。「チラ見せ漢字テスト」は、漢字練習用として一枚作って自由に利用できるようにしたらどうかな、と思う。
長年の試行錯誤の蓄積がこの1冊に!
筆者の栗林さんは、修士論文で漢字指導をテーマにし、それ以降ずっと漢字指導に取り組まれている方のようだ(現在は新潟県長岡市の小学校で教頭先生をされている)。奥付によると漢字教育に関する様々な賞を受賞されており、それも納得のクイズやゲームの豊富さである。漢字指導に関する長年の試行錯誤の蓄積を、こうやってハンディな形で利用させていただけるのは感謝しかない。漢字学習といえば土居正博さんの『漢字指導法』が良い指針となるが、それとはアプローチは違っても、こちらも大変お買い得な一冊だ。僕もありがたく、先達の肩に乗らせて頂こう。