なんとも不思議なイギリスの算数教育

今日はレポートの合間の息抜きにイギリスの算数教育についての雑談を。娘(10歳)が地元エクセターの「マス・チャレンジ」という大会に参加したのだけど、謎の出題だったという話。

ちなみに上の写真は今日の我が家(エクセター大学の家族寮)の玄関から見える風景。きれいでしょう?

イギリスの算数教育はレベルが低い?

イギリスの小学校にお子さんを通わせる日本人が一様に同意するのが、イギリスの学校の算数のレベルが低いことである。確かにその通りで、週に1回しか出ない娘の宿題を見ても、こちらでは小5なのにいまだに掛け算の筆算が宿題だったりするのだ。日本の小学校でそこそこの算数の成績であれば、こちらに来たらトップになれるのではないだろうか、と思う。実際、日本で小4の夏までを過ごしたうちの娘も、そのときまでの日本の学校教育の貯金だけ(他に塾や公文やらは一切やっていない)で、一気にクラス2位となり、算数の自信が学校に行く支えになっていた(最初は学校に行くのが辛い時期だったので、これは実際ありがたかった)。

ちなみに断然の1位は中国からの男の子。彼は「イギリスの教育では中国に戻った時に生き残れない」というお父さんの教育方針のもと、毎日放課後午後5時から10時まで帰国に備えて勉強するという本当にハードな日々を送っていて、中国の受験競争の熾烈さが伺えて不憫なほどだった。彼はまた例外なのかもしれないが、こと算数の授業に関しては、日本・韓国・中国・インドからの留学生のお子さんは、みんな通う学校でトップクラス。アジア勢が圧倒的に強い。

娘(10歳)がクラス代表でマス・チャレンジ出場

さて、その娘、この3月に中国男子くんが帰国してしまい、棚ぼた式に算数の成績がクラスで1番になった。そこで、エクセターで開かれた「マス・チャレンジ」という算数の大会に、クラス代表として出場することになったのである。「本当にこんなんでいいのか…」と思う親をよそ目に家で算数の勉強をする気配も全くなく、「ふん、井の中の蛙め、大海を見て思い知るいい機会だ」と思っていたその大会が、いよいよ先日開かれた。

その算数の大会は、問題が配られて一斉にガリガリ解き始めるのかと思っていた僕の予想とは大幅に異なるものだった。まず意外なチーム制。「チームで問題を一緒に解決しましょうね」ということらしい。会場にはスカッシュやビスケットもあって、なんともゆるい雰囲気。参加した小学生用だと思うのだけど、なぜか引率のお父さんや弟妹までむしゃむしゃ食べてて、しかも誰からもとがめられないのがイギリスである。注目の課題もこれが驚愕。

「はい、ここにレモンと新聞紙があります。この新聞紙を材料に、あなたの算数の知識を使ってできるだけ高いタワーを作ってください。ただし、そのてっぺんにちゃんとレモンが乗るだけの強度と広さを保ってくださいね」

というものだったのである。え、なにそれ…!それでいいのマス・チャレンジ?

そのあとで展開されたのは算数というよりもさながら工作の時間。各チーム相談して新聞紙を丸めたり、筒のようにしたり…。ちなみに評価基準は高さと堅牢性とデザイン。算数なのにデザイン!

さすがにペーパーテストのセクションもあったのだけど、それもチームで相談して解くもの。チームメンバーと各々の得意分野を考えて分担してもいいらしい。数独(SUDOKU)の問題も出されたのだけど、これは参加した子どもの多くがそもそも数独を知らない中で、飛行機内の暇つぶしに数独をやったことがある娘が圧倒的に有利な状況。そんなこんなであれよあれよと娘のチームは2位に入賞してしまい、上位の大会にも進むことになったのでした…。

求めるものが違う、イギリスと日本の算数教育

うーん、それにしても面白い、イギリスの算数教育。確かに日本の基準で言うととてもレベルが低いので、こと計算やペーパーテストとなった時に、アジア勢が圧倒的に強いのもよく分かる。PISAテストでも、そりゃあ中国・韓国・日本が上位でしょう、負けるわけないよ、という感じさえする。

ただ、マス・チャレンジの問題でわかるように、そもそも求めているものが日本の算数とまったく違う。計算軽視・問題解決重視。簡単に比較はできないのだろうけど、イギリスのやり方でイギリス社会がちゃんと成り立っているのだったら、日本を含むアジア勢はなんであんなに苛烈なペーパーテストをやってるんだろう、というのもちらりと思ってしまったのでした…。

とはいえ、エクセターのお店ではお釣りの計算を間違えるレジ店員さんが本当に多いので、イギリスの算数教育はやっぱりかなり怪しい面もあるんじゃないかと思ってるけど。

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