期末試験期間中という忙しいさなかだけど、自分の首を締めてでも行ってみたいイベントもある。金曜午後は半休をとって、アンディ・ハーグリーブス教授の東大本郷での講演会に行ってきた。ハーグリーブス教授は学校組織やスクール・リーダーシップの研究者。秋田喜代美さんのご紹介によると「世界で5本の指に入る教師教育研究者」とのこと。今回は、『知識社会の学校と教師』の訳書刊行にあわせた来日となった。
(上のリンクはペーパーバック版だけど、kindle版なら1870円で買える…ちょっと欲しくなる)
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で、これが面白い話だった。1970年代のアメリカ・イギリス・カナダの教育モデルを「第一の道」、1980年代以降の教育の市場化と標準化を目指したレーガン&サッチャー路線を「第二の道」、2000年代に入ってからの、いわゆる21世紀型スキルを追求するような教育を「第三の道」、フィンランドやカナダのアルバータ州、シンガポールなどでのモデルを「第四の道」とモデル化して、それぞれ「政府」「教師」「市民」といったプレイヤーがどのような役割を果たし、どんな教育目標が追求され、システムの一貫性が何によって支えられているかを指摘している。この第一〜第四は発展段階というわけではないし、非常にざっくりとしたモデルで、実際にはこれらの色々な要素が日本の教育にはあるのだろうけど、ハーグリーブス教授が「第四の道」にシンパシーを持っていることは明らかだった。
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他に興味深かったのは、「第二の道」をとった国(アメリカやイギリス)は全て国際テストでの成績を落としていること。ハーグリーブス教授が「第三の道」の21世紀型スキルを追求する教育について、「知識基盤社会を知識基盤経済に読み替えたもので、経済の中でいかに効率的に働く人間を育てるかを目標にしている」「教師は全てのクラスの全ての生徒についてチームでデータを分析するようになり、全てが可視化(監視)される」(大意…なにせ僕のなんちゃってリスニングなので)と、批判的トーンで話していたこと。 「第四の道」の教師が持つ資本に関連して、教職についてから4〜7年めの期間の教師は無視されがちだが、将来のリーダーになる教師が育つ大事な期間であるので、この期間の教師に資本が必要になること。
また、講演後には旧知の藤田英典教授との応答もあり、その中では日本の教育が世界をリードできる強みとして、レッスン・スタディ(授業研究)が盛んであること、各地方に教育委員会の存在があることをあげていた。
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こうやって、社会の仕組みの中で教育の立ち位置を考え、その中で学校のあり方や教師の成長を考える機会は、現場の教師だけでは持ちようがない。ハーグリーブスの4類型以外にも、モデルはありうるのだろうか。いま日本はどこにいるのだろう。そして例えば自分の勤務校は。こういうふうに一歩ひいて考える機会を貰えるのが研究者がいることのありがたさ。管理職にも聞いてほしい内容だったな。機会を捉えて、Forth Wayの紹介だけでもしてみようか。