[ITM]読み手を/書き手を評価する(1) 柱は自己評価

In the Middle読書日記。第8章(pp282-311)はいよいよ、と言いたくなる「評価」の章だ。



まず言っておくと、総じてプロセス・アプローチの弱点は「評価」である。作文教育についての6つの言説的立場(言語技術重視とか、創作性重視とか、「書くことは社会的営みだ」派とか….)を比較検討したRoz Ivanič(2010)Discourses of Writing and Learning to Write でも、「プロダクトよりもプロセスを評価する」というプロセス・アプローチの立場に対して「プロセスそのものを評価することは本当にできるのか?」という疑問が提示されている。特に、40人学級だと個々のプロセスを教師が把握すること自体が至難の業(というより不可能)なので、これはかなり説得力のある批判だと僕も認めざるをえない。

しかし、こうしたプロセス・アプローチへの批判についてはさておき、ここではアトウェルがどのように評価しているのかに注目しよう。

まず、アトウェルが評価の中心においているのは生徒の自己評価である。「そうでないとしたら、評価はワークショップ自体を裏切ることになる」(p282)とまで言っていて、強い信念に裏打ちされていることがわかる。

アトウェルの学校では、もちろん毎回のカンファランスを通じて生徒に自己評価をさせているのだけど、特に各学期の最後の一週間を「評価ウィーク」にして、これまでの作品をまとめたポートフォリオを作成し、自己評価をさせている。その時のアトウェルのミニレッスンの最初の声掛けは、こんな感じ。

この学校の一年間で、最も重要な3つの一週間の1つが来ました。立ち止まり、自分を振り返って、書き手や読み手としてのあなた自身を評価する時が来たのです。あなたの努力や達成したことを振り返り、次に何に取り組んで達成したいのかを見通す時間です。
リサーチ・プロジェクトをする時のように、自己評価をして下さい。リサーチの対象は自分自身、学期が始まって以降の、自分の成長と達成です(p295)

   (他の2つって何なのかな…? ちょっと気になる)

これだけでも、「評価ウィーク」の重要性がわかろうというものだ。この台詞はとてもいいなと思って、僕も自分の授業で真似させてもらった。

もう一つの探究レポートを書く

2015.02.27

「自立した書き手」を育てることを目指すライティング・ワークショップにおいて、自己評価を重んじるのはとてもよくわかる話だ。こうやって始まった「評価ウィーク」、生徒はポートフォリオを作成した後で、ライティングやリーディングのそれぞれについて、学期の終わりごとにいくつの作品を書いた(読んだ)か、自分にとって重要なものは何か、それはなぜか、書き手(読み手)としてこの学期に何を学んだか、良い書き手になるために何が必要だと思うか….などを、学期ごとのミニレッスンの内容に合わせながら、とにかく書いていく。そして、振り返った後には、読み手/書き手としての次の学期の目標を設定させる。三学期の終わりには、教師と一緒に一年間の振り返りも書くらしい。

うーん、これだけ書かせるってことは、当然教師も読まなきゃいけないわけだよなあ…と思っていたら、全然甘かった。この生徒の自己評価を元に、次は教師評価があるのである。それは次回で。

(追記 3/9続きはこちら)

[ITM]読み手を/書き手を評価する(2) 教師からの評価

2015.03.09

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2 件のコメント

  • 「他の2つ」についてですが、各学期の最後の一週間ということなので、一年間で三回評価ウィークがある、ということではないでしょうか?(アメリカが三学期制なのか確かめたことはないですが……)

  • コメント有難うございます。なるほど、アトウェルの学校は3学期制なので、その可能性もありますね。これは見落としていました(^_^;) ありがとうございます!