ナンシー・アトウェルのIn the Middleを折に触れて読み直している。ライティング・ワークショップのミニレッスンでいいなと思えるものの一つが、「The Rule of Write About a Pebble」という題のミニレッスンだ。今日はこのミニレッスンを紹介しよう。
一般的なものでなく、固有のものについて書く
「一粒の小石の法則」とでも名づければ良いのだろうか。このルールは、「小石一般について書くのではなく、一粒の小石について書きなさい」ということだ。つまり、一般的なアイデアについて書くのではなく、自分の目の前にある、具体的な、自分特有の経験について書きなさい、ということ。
これは大切な法則だと思う。僕たちはつい、一般化された出来事や経験について書いてしまうから。書くべきは、他の誰でもない自分にとっての出来事や経験の意味。そこに、僕たちの書き手としての存在理由がある。
生徒の詩から生まれた「一粒の小石の法則」
このルールは、ネイサン君というアトウェルの生徒の書いた詩から生まれたルールである。そのもとになった詩を試しに訳してみた。
「小石」
どこにでもある小石について
は
僕は話していない
この小石について話している
角がいくつもあって
ざらっぽい
でもつややかな
石
手のひらで
ころころ
転がせる
石
空に
放り投げては
また
手のひらで
キャッチできる
石
テーブルに
落とすと
コン
とか
ガッ
とか
音がする
石
とても軽くて
親指で
バランス載せできる
石
今ぼくは
多くを望むまい
けれど
もう少し近づいて
この石を
ぼくみたいに
よく見て
くれるかい?
それから
見つけて
くれるかい?
この世界の
なかの
君だけの
素晴らしいことをさ。
拙訳で申し訳ないけど、短い語を重ねていく書き方や、このエンディングがけっこう好き。こんな詩を書くネイサン君も、これをそのままミニレッスンで教える「書く法則」に持ってくるアトウェルも、どちらもいいなあと思う。アトウェルは自分の作品もよく授業で見せるけど、こういう先輩の作品も、生徒には大きな刺激になるはずだ。