ブクログの過去レビューより転載。読了日は2012年4月6日。
2012年4月7日のレビュー
「ショートして火事が起きた」というとき、「ショートした」ことが原因で、その結果として「火事が起きた」と僕たちは捉える。しかし、そのような認識は正しいのだろうか?
この本では、僕たちが日常的に考える「因果関係」が、いったいどのような関係であるのかを丁寧に考察していく。筆者によれば、実際には「時間的に先行する原因が必然的にある結果を引き起こす」ということは存在しない。しかしにもかかわらず、僕たちはそのような「因果関係」があると思う。その場合の「因果関係」とはいったい何なのか?
因果論については野矢茂樹や黒田亘の著作で読んでいたこともあり、全体としては非常に納得しながら読んでいった。興味深かったのは「原因とはINUS条件である」というマッキーの定式化だ。「原因」として語られるものがこのように定式化したことで、その対象が非常にクリアになったと思う。その上で「原因」を「十分な理由」へと読み替えていくあたりが、個人的には一番面白かった。
最後の章の、ヘーゲルの様相論を「十分な理由」論として捉え返す箇所は、自分がそもそもヘーゲルを理解していないのだなとわかる結果に終わったのが残念。まあこれは仕方ないかな。いつかまた手にとる機会があればと思う。
2019年3月から一言
僕は因果関係に興味があって、それは自由に興味があるからである。因果関係という世界認識と人間の自由意志の存在をどう両立させるか、この本からも学ばせてもらった。上では野矢や黒田の本に言及しているけど、当時すでに小坂井敏晶「責任という虚構」も読んでいたはず。
この本はその後、中学生の授業でも教材として使わせてもらった。ただ、こちらの取り扱い方がストレートすぎたせいか、ちょっと生徒と教材をうまく結びつけられなかった感触が残る。私たちの良く言う因果関係ってなに?という問いは中学生も惹きつける面白い問いだと思うので、ブラッシュアップしていつかまた再チャレンジしたいもの。