[ITM]書き出しのミニレッスン

In the Middle読書日記。言うまでもなく、読者の興味を惹きつけるためにも書き出しは大事だ。ただ僕は、生徒がとにかく文章を書き始めてしまうまでのハードルを低くしたいので、「書き出しは後回しにして、途中の書けるところから書いていい」ということをよく伝える。




アトウェルは違う。彼女は、「良い書き出しは書き手を駆り立てる」(p433)と言っていて、ドナルド・マレーの「良い文章を生み出すような書き出しがないと、文章を書き進めることはできない」(p496)という言葉も引用している。つまり、書き手が書き進めるためにも、最初にしっかりと書き出しを教える方針のようだ。具体的にどうやっているのだろう。



「書き出し」のミニレッスンの基本的なやり方は、先輩の作品、または実在する作品を使って効果的な書き出しの種類を教えるというもの。

例えば、回想録の場合では、生徒の良い作品を見せて、そこから

・行動から書く:中心人物が何かをしている
・会話から書く:中心人物が誰かと話している
・リアクション:中心人物が何かについて考えている
・描写:場面やトーンを決める感覚的な描写をする

という四つの分類を示している。

また、本や映画やテレビ番組の批評(レビュー)を書く時には、生徒と一緒に実際の批評を集め、そこから20近くもの書き出しの例を収集したり、書き出しに絶対に含まれる必要がある情報を抽出したりしている。

さらに、小論文では、同様に過去の生徒作品から、次の7つの書き出しを示している。

・エピソード:自分の話題のエッセンスを伝えるような逸話から書く。
・引用句:自分が賛成または反対したい誰かの言葉の引用から書く。
・シナリオ:読者に、こんな状況に置かれたらどう思うか、事例をあげて考えてもらう。
・主張:いきなり自分の主張を書く。その後に根拠を書く。
・背景:問題の背景の説明から書く。
・描写:自分の話題に関係する実際の場面の描写から書く。
・ニュース:自分の話題についての最新の情報や統計から書く。

面白いのは、小論文では「避けるべき書き出し」も示されていることだ。「辞書の定義」「読者への問いかけ」「陳腐な言い回し」「焦点が絞られていない書き出し」などがあげられている。「読者への問いかけ」を避けるべきとはちょっと意外な気もするけど、答えを読者に推測させてしまうのと、読者を見下すような感じになるから、とのこと。この後、生徒に自分の書き出しをチェックするリストも配っているから、小論文の書き出しは難しいのだろうか。


いずれにせよ、どのジャンルでもアトウェルは書き出しを教えることを重視している。良い書き出しは、良い文章を生むからだ。最後に触れておくと、レビューのレッスンで配布するプリントには、こんな言葉も添えられていた。書き出しについての彼女の考えを最もよく表す言葉だと思う。

「いつも、他の書き出しがないか考えてみなさい。あなたに一番ぴったりくる書き出しは、書き手であるあなたを楽にしてくれて、レビューの続きに方向性を与えてくれるから」(p497)

 

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