奥野庄太郎の「創作エレメントの循環指導」

滑川道夫『日本作文綴方教育史 昭和編』の、奥野庄太郎『新綴方文話大系』(昭和6年刊)についての記述を読んでいたら、「創作エレメントの循環指導」という言葉が出てきた。


滑川の説明をそのまま借りると、

綴り方は知識習得の教科ではなく、創造の教科であるから「創作の心理過程に基づくそれらの重要機能を幾回となく繰り返し刺激を増大する所謂「創作エレメントの循環指導」にまたなければならないとする。単純な文法作法書を超えた識見をもつ原則論である。それまでは、児童の創作心理過程を研究しても「指導のエレメント」をとらえて整理することなしに「たゞ漠然と伝統的方法によつて概念的羅列的系統」を追求してきたと批判して、重要な指導事項をおさえ、循環的に繰り返しながら創作機能を身につける方法をとるべきだというのが奥野の指導原理である。 (pp312-313)


ということらしい。「重要な指導事項をおさえ、循環的に繰り返しながら」身に付ける方法をとることが大事だというのは、本当にその通りだ。アトウェルも言っているように、作文の発達は非常にゆっくりで、一度扱ったくらいでは何も定着しない。何度も何度も、日常的に書くことが大事なのである。作文の指導事項を循環的に繰り返しながら教えるべきという奥野の主張は、「作家のサイクル」をまわすライティング・ワークショップの理念とも合致するし、今の学習指導要領でもそのように配慮されていると思う。

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