In the Middle読書日記。約600ページに及ぶこの本の最後の章はHumor and Homage。他の作品のパロディを扱った章である。
同年代の生徒を教えているので僕も実感としてわかるのだけど、もともとアトウェルが教える中1~2年生の生徒にとって、笑いは「アンダーグラウンド・カリキュラム」である。彼らは至る所で笑いのネタを探し、作っている。アトウェルはそれをワークショップにも活かしているわけだ。
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パロディの幅は広い。アトウェル曰く、授業で扱った詩をもとにしたパロディが出来が一番良いらしいのだけど、他にも、レ・ミゼラブルやハムレットなどの有名な劇の一節のパロディ、歴史の授業のテキストのパロディ、他の生徒の作品のパロディなどなど。変わり種では、授業中のアトウェルと生徒のやりとりをおもしろおかしくパロディにしたExtreme Writing Workshopという作品もあって、ミニレッスンの様子が生き生きと描かれてるし、アトウェルの決まり文句らしいのも随所に出てくるしで、これは面白かった。
また、アトウェルは、個々の生徒の情報をきちんと把握したいという理由から、ふだんは生徒同士の「共作」を認めていないのだが(これはアトウェルのこだわりの一つだと思う。彼女の授業ではピア活動やグループ活動はあるものの、読み書きの力をあくまで個人単位で把握できるようにしている)、パロディだけは例外だそうだ。その方が面白いアイデアが浮かぶことが多く、きっと生徒にとっても楽しい期間となっているに違いない。
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そんなふうにして授業の中にパロディを取り入れる理由として、古代ギリシア以来、書き手がこれまでもずっと他の作品をそのように扱ってきたからだ、とアトウェルは語っている。また、パロディを書くという営みは生徒を書き手だけでなく、読者・批評家としても成長させる。風刺するためには、注意深く表現の隅々まで気を配り、テーマを把握しなければいけないからだ。だから「風刺は、文学の分析の究極の形かもしれない」(p555)とも述べている。これには、なるほどなーと思ってしまった。彼女のリーディング・ワークショップで書かせているレター・エッセイと同様に、パロディも、読むことと書くことをつなげる活動だと位置づけられているのかもしれない。