[ITM初版]書き手のオーナーシップを支える環境とは?

アトウェルが初版の中であげている「書き手が必要としている3つの必需品」はとてもシンプルだ。Time (時間)、Ownership(裁量権)、そしてResponse (読者の反応)である (p54)。



 


この3つの内容はいずれも第二版以降にも書かれているのだけど、シンプルに3つにまとまっている点で第一版の方がわかりやすいかもしれない。このうち、今回僕が特に注目したいのはOwnershipの所だ。

オーナーシップを生み出す環境づくり

 「オーナーシップ」というと、多くは「書き手に裁量権を与えましょう」ということを意味する。題材や書くペースを教師が決めないで、各自で判断できるようにするということだ。In the Middleの第一版では、それだけでなく、書き手が自分で判断して動きやすい環境づくりに注目しているところが面白い。しかも、それを生徒を巻き込む形でやっているのだ。


ついには、生徒たちと私は教室を何度もアレンジして、書き手である彼らにとって必要な場所を作るべく、教室の備品を活用した。(p63)
 


生徒たちと一緒に教室を「ワークショップ(工房)」に作り変える作業を通じて、7つのエリアからなるアトウェルの教室が出来上がる。その7つのエリアは、

・文具などの必要なものを置くエリア

・アトウェルに提出したり出版したりする作品を置くエリア
・これまでの完成作品を置くエリア
・”No Man’s Land”. 静かに一人で書きたい書き手のエリア
・普通の書き手のエリア。アトウェルのカンファランスはここで。
・生徒同士のカンファレンス・エリア
・カーペットエリア。全員集合しての共有はここで。
 

というものだった。第一版(1987)のアトウェルは、公立学校勤務時代ということもあり、また彼女自身もライティング・ワークショップを始めたばかりということもあって、生徒と一緒に教室を作っていったのだろう。

 

生徒たちと一緒に環境をつくることの意義も大きい

In the Middleの第二版(1998)では、pp98-104で教室の備品についての詳細な説明はあるものの、「生徒と一緒にレイアウトを考えた」という記述は、ざっと見た限りではない。この頃のアトウェルは、すでに公立中学校を退職し、自分のデモンストレーションスクールCenter for Teaching and Learningを立ち上げている。理想の環境を自分で作れる立場になったわけだ。だから生徒と一緒に試行錯誤する必要を感じなくなったのかもしれない。

ただ、初版における「生徒とのアレンジ」は、岩瀬直樹さんが小学校勤務時代にやっていた「教室リフォームプロジェクト」に通じるものがある。きっと、この作業そのものが大きな意味を持っていただろうし、その点で僕たち普通の学校の教師に参考になる点は多いのではないだろうか。

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