今学期のライティング・ワークショップは、「小説かエッセイのどちらかを書く」という課題。僕もこの機会にエッセイを色々と集めて読んでみたのですが、「ザ・随筆」と呼びたくなるような古風なエッセイから始まって、今の作家によるお気軽に読めるエッセイまで、エッセイって本当に多岐に渡るんですね、カバーしたり整理したりは到底無理…。というわけで、ブックリストと名乗るのはおこがましいながら、以前の「短い小説のブックリスト」(下記エントリ)にならって、エッセイの授業の参考になるエッセイ集を紹介しておきます。
目次
「ザ・随筆」と呼びたくなる! クラシックなエッセイ編
エッセイだったり随筆だったり随想だったり、呼び方は様々なエッセイ。でも、「ザ・随筆」と呼びたくなる古風なエッセイは確かにある。「日本の名随筆」シリーズとか、「現代の随想」シリーズは僕でも知ってる定番のシリーズ。
エッセイのシリーズではないけど、岩波文庫には小説家・歌人・俳人の随筆集が多数収録されている。パラパラとめくっていると、昔の文人の文章は、適度に論理の飛躍もあって余韻もある。作問がしやすいなあ…とかも思う(笑)
女性作家のエッセイシリーズ
クラシックな作品を集めたシリーズにも、特徴的なものがある。まずは「精選女性随筆集」。幸田文、野上彌生子、岡本かの子、向田邦子…何冊かめくってみたけど、良い作品が多かった。
「中高生向け」と銘打たれたシリーズ
中高生向けに短いエッセイを集めたシリーズもあります。ひと昔前のものでいうと、筑摩書房「高校生のための文章読本」「高校生のための批評入門」(今はどちらもちくま学芸文庫に収録)には、短めのエッセイも多く収録されている。今時の高校生が読んでいる文章とはかなり違うので、ハードル高いかな?という気もするけど…。
他では、松田哲夫さん編の「中学生までに読んでおきたい哲学」(全8巻)にも、「愛」「悪」「嘘」などのテーマごとに多彩な書き手の短い文章が多く収録されている。
ただ、「中高生向け」とあるが、この辺のシリーズは実際には中高生よりももっと大人向けかな。この辺を中高生が読んでたらいいなあという感じのシリーズです。
理系学者たちのエッセイシリーズ
他にも、平凡社のSTANDARD BOOKSというシリーズが良い。寺田寅彦、湯川秀樹、朝永振一郎、岡潔など、理数系の研究者たちによるエッセイ集。うちの生徒は理系が多いので、助かります。岡潔なら…と、数学好きの生徒が手を伸ばしたこともあったし。
いま活躍中の作家たちのエッセイ 現代編
クラシック編の次は、現代のエッセイ編。現代のエッセイは、軽くって、文脈の飛躍のないものが多いので、読みやすい。「随筆」というより「エッセイ」と呼びたくなるのはこちら。
現代のエッセイアンソロジー
現代の作家たちのアンソロジーには、「ベスト・エッセイ」や「日曜日の随想」というシリーズがある(あった)ようだ。先ほどのクラシックなものに比べると、生徒たちにとってもかなり読みやすい。長さも短いものが多く、授業で紹介しやすい。
個人のエッセイ集は、紹介しきれません…
個人別の作家のエッセイ集はそれこそ山のようにあるので、とても読みきれない。読んだのは、男性作家だと穂村弘、万城目学、朝井リョウ、東海林さだお、堀江敏幸。女性作家だと岸本佐知子、米原万里、三浦しをん、川上弘美、三宮麻由子あたり。
この辺になると、生徒もだいぶ読みやすくなって、「エッセイってどんなジャンル?」というイメージも持ちやすくなるようだ。でも、僕はもともとエッセイを読む人じゃないので、基本を押さえてないと思う。いい人がいたらぜひ紹介してください!
食べ物がらみのエッセイ集
僕は授業で自分の作品としてラーメンを食べるエッセイを書いたので、食べ物系のエッセイを司書さんに集めてもらって目を通した。「おいしい文藝」シリーズを筆頭に、結構たくさんあるものです。
女性詩人たちのエッセイ集
個人的に好きなのが「女性詩人のエッセイ」。小池昌代のようなエッセイの名手として知られている人から、井坂洋子、蜂飼耳、三角みづ紀まで。どれも賑わったような感じも、ひっそりと一人でいるような感じもあって、こういうエッセイを書けたらなと思う。
ということで、授業準備で手にとったものを、ざっくりとまとめてみました。どなたかの役に立てれば幸い。もし「これはおすすめ!」があったら、教えてくださいね!