[読書]「作家の時間」のアイディア出しにも役立つ!田丸雅智『ショートショートでひらめく文章教室』

最近、風越の子たちに手渡せるような「文章の書き方」本はないかなあと、また図書館で色々な本を読んでいる。今回紹介する田丸雅智『ショートショートでひらめく文章教室』もその一つ。意外なオチを柱にした物語を書くときの「アイディアの見つけ方」に焦点をしぼった発想系の本だ。

一番頭を悩ませる「アイディアの見つけ方」

軽井沢風越学園での「作家の時間」でも、苦しむ子のパターンの多くは、「アイディアが見つからない」こと。実際、「何を書くか」が決まれば、もう作文の7割は終わったようなものだろう。もちろんこちらも色々な発想法は知っているので紹介はするのだけど、どれもしっくりこなかったりして、教えていてなかなか難しいと感じるのもここだ。そして、本書『ショートショートでひらめく文章教室』の特徴は、「アイディアの見つけ方」に全振りしていること。文章表現の話は一切なく、すべてアイディア。この潔さが良い。

類型別のアイディア集

では、どんなアイディアの見つけ方が紹介されているのだろう。詳しくは実際に読んでほしいのだけど、本書ではそれが「言葉の組み合わせから考える」、「身の回りの言葉から考える」「ビジュアルの類似から考える」「当たり前のことから考える」の4つに類型化されている。例えば、「身の回りの言葉から考える」では、「ことわざが実際に起きたと仮定したら?」(例:本当に身から錆が出るetc)とか、「パソコンの誤変換が実際に起きたら?」のように、身近な言葉にアイディアを求める。他にも色々なアイディアの種が載っている。もちろん「種」にすぎないので、結末をどうつけるかなどの難しさは残っているけれど、アイディア探しの強力の武器になることは間違いない。

別のこんな本やカードゲームも…

実は、いま風越学園の3・4年生では、同じ田丸さんの『たった40分で誰でも必ず小説が書ける 超ショートショート講座』を元ネタにしてショートショートを書く授業を展開中である。この本は、『ショートショートでひらめく文章教室』の一部を切り取ってメソッド化した本だ。スタッフはけっこう手応えを得ているようで、詳しい実践報告を聞くのが楽しみ。

そして、これも風越スタッフで遊んだのだが、田丸さんには、『ショートショートnote』というカードゲームもある。三題噺の発想を取り入れて物語を書くツールと言えばいいだろうか。ただ、もとのルール通りにやると、書く材料にせよ、時間制限にせよ、けっこうしばりがきついのが特徴。このしばりのきつさは、「きつくて難しい、こんなの無理」と子どもに受け取られる可能性もあるし、一方で「これだけしばりがきついのだから、どうせうまくいくはずがない」と、結果の良し悪しを気にせずに遊べるかも、という可能性もある。『カタルタ』と並んで、物語創作を助けるツールとして授業で使ってみたいカードゲームである。

田丸さんは、教育出版系の中学国語教科書にも登場されていて、ショートショートの普及活動に力を入れている。この分野のいまの旗手と言っていいだろう。もちろん、田丸さんのやり方があうかどうかは、書いてみたい作風にもよるかもしれない。例えば、僕は星新一系の機知に富んだ意外性あるショートショートよりも、安土萌『海がくる』のような叙情的で描写が美しい作品が好きだ。田丸さんの手法とはやや相性が悪い気がする。

とはいえ、創作の授業をする上では、こういう引き出しをまとめてくれるのはとてもありがたい。「作家の時間」の実践者であれば、持っていて損のない本だと思う。

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