[読書] 言葉の世界って楽しい!広瀬友紀「ちいさい言語学者の冒険」

僕の知人が何人も褒めていたので読んでました、広瀬友紀「ちいさい言語学者の冒険」。子どもの言葉の用法の「間違い」をもとに、ふだん気づかない日本語のルールを探る、という大変楽しい本でした。さすが、評判になってるだけある!

ふだん気づかない言語のルール

子どもはアクティブな冒険家だ。いつだって、手持ちの武器を使って色々なところに行こうとする。言葉の世界でもそれは同じ。子どもは大人の言葉の使い方を見て学んだり、すでに身につけたルールを適用して、どんどん新しい使い方を覚えていく。本書は、そんな冒険の中で子どもがおかす「ミス」をもとにして、日本語のルールに迫っていく一冊だ。大人になってしまった僕たちは、こういうルールにほとんど無自覚である。無自覚だけどできてしまう、それが母語の面白いところだけど、頭の中にある無自覚なルールが明かされる楽しさがある。

具体例の楽しさ

この具体例がいちいち面白い。例えば最初の「濁点」の例。「た」と「だ」、「さ」と「ざ」、「か」と「が」を覚えた子どもに「は」は?と聞くと、音を出せない。それもそのはずで、濁点化というのはもともと「無声音を有声音にすること」なのだが、実は「は」(ha)に対応する有声音ではないのである。「ば」(ba)はもともと「ぱ」(pa)を有声音化した音なのだ。ここから、国語教師ならよくご存知であろう、もともと日本語の「は」(ha)は、古代では「ぱ」(pa)と発音されていて、それが室町頃には「ふぁ」(fa)になり…という話につながっていく。

他でも、日本語では言葉のリズムが音節ではなく拍重視(チョコレートは4音節だが5拍)であること、「せる」「させる」が下につく活用の規則(五段活用は「せる」、上一段、下一段、カ行変格活用「来る」)、可能「れる」「られる」などを事例に、子どもたちが自分で言葉のルールを見つけてどんどん使おうとする(その結果、エラーを起こす)ことが説明される。いやー、やっぱり具体例の力ですなあ。これ読んで日本語の文法にあらためて興味を持った。ちゃんと勉強してみようかなあ。

読んで楽しい一冊

たくさんの事例とともに、僕たちの言語の中にひそむルールを知っていく一冊。この本の「ちいさい言語学者」に先導してもらって、言葉の世界を冒険しよう!

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