[読書]これは小学生向けによくできた作品! 森絵都「流れ星におねがい」

毎週お邪魔している地元公立小の4年生の教室で、10月に学級の本棚のリニューアルがありました。その際に、クラスの本が貸出も可能になったので、せっせと毎週本を借りています。たまたまそのクラスに森絵都が好きな女の子がいたので、今、意識して読んでいるのは森絵都。先月から『カラフル』『リズム』『ゴールド・フィッシュ』『アーモンド入りチョコレートのワルツ』『流れ星におねがい』『宇宙のみなしご』『つきのふね』『永遠の出口』と進行中です。中でも、「これはクラスの子に紹介したいなあ」と思ったのは『流れ星におねがい』でした。

個人的な好みは『アーモンド入りチョコレートのワルツ』

最初に書いておくと、これまでの中で一番好きなのは『アーモンド入りチョコレートのワルツ』でした。表題作を含む3つの短編集は、いずれも、過ぎ去っていく時間や失われていく場への愛おしみを感じさせる、とても美しいストーリー。なかでも、成長期の男の子たちの力関係の変化を描いた「子供は眠る」は好き。でも、この本は角川つばさ文庫に入ってはいるものの、全体的には小学生にはまだちょっと早いかな?

小学生にお勧めなのは「流れ星におねがい」

クラスの4年生にもお勧めできるのが『流れ星におねがい』。このクラスにも、絵本、学習マンガ、ゾロリのような、絵が主体のものばかり読み続けている子が一定数います。国語力のことを考えるとそろそろ文字主体の本にジャンプしてほしいけど、青い鳥文庫や角川つばさ文庫だと、文字が小さくて多くて、とっつきにくい感じ。文字の本を読むにしても、まだスタミナがないので、短い怪談話とかが多い。

このくらいの読書レベルの子が長い本を読み通すきっかけの一冊に、『流れ星におねがい』はとても良さそうだと思いました。文字が大きくて読みやすいこと。走るのが遅い主人公の女の子が、冒頭から、体育係というだけでリレーの選手にされてしまう困難に直面すること。「仙さんの流れ星」が何を意味するのかという謎。ラスト近くで明らかにされるクラスメートの意外な一面。読書の醍醐味が味わえるよう、きっちり構成されている本です。

岩瀬さんやKAIさんがブッククラブで使っていたらしいけど、さすが、その価値はあるなと思います。全然手を抜いてない感じ。読むのが得意な低学年の子どもにも、苦手な高学年の子どもにも、お勧めできる一冊でした。ただこれ、残念なことに、古本しかないんですよね…。小学校の先生は、見つけたら即購入の価値あり。同じく彼女が書いた児童書の「にんきもの」シリーズも読んでみようと思います。

追記:「にんきもの」シリーズ、超素晴らしい!(11/11)

さっそく翌日の追記になりますが、上記の「にんきもの」シリーズ、図書館にあったのでさっそく読んでみました。結論は「超素晴らしい!」。文字の大きさや文字数から言っても本を読み始めたばかりの子たち向けの本なのですが、こんな面白い本が書けるんだ!というシリーズです。

シリーズ第1作の「にんきもののひけつ」の主人公は小学校3年生のけいたくん。バレンタインデーにチョコを1つしかもらえないけいたくんは、たくさんチョコをもらえる人気者のこまつくんの人気の秘密を探ろうとしますが…というお話。

この巻だけでも十分に面白いのですが、続巻「にんきもののねがい」「にんきものをめざせ」「にんきもののはつこい」と、けいたくんのクラスメートたちに主人公が変わって、どんどん面白くなります。前の巻ではこんな風に描かれていた子も、実は本人の立場から見ると…ということがユーモアたっぷりに、武田美穂さんのかわいいイラストも交えて優しく描かれていて、いつの間にか登場人物みんなを応援したくなってしまう。

学校もの群像劇を、小学校一年生向けに書くとこうなる、という本でしょうか。とにかくこのシリーズ、大人なら全部で20分で読めるので、全てをこの順番で読んでみてください。傑作です。子どもの頃にこの本に出会った子たちは幸せだなあ…!

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