小学校で「一日担任体験」をしてきました

毎週通っている地元の公立小学校で、先週、なんと小学校の先生体験をさせてもらえました。毎週国語の授業の見学に伺っているクラスで、担任の片岡さんが出張中の一日、代理で彼の教室にいさせてもらったのです。もちろん他の先生方のサポートを受けながら、作家の時間だけ自分が主導して、他は全部専科の先生の授業にチームティーチングで入る形。とはいえ、朝から帰りまで小学生の子供たちと一緒にいるのは、僕には初めての経験です。風越学園の同僚には「仮免路上教習だね」と言われたのですが、まさに最高の環境での仮免路上教習でした。

一日、生活をともにする価値

この日の僕の仕事は、朝の会の進行から。森絵都「流れ星におねがい」を紹介したり、片岡さんが毎日出している学級通信も、この号だけ書かせてもらって配ったり。

1時間目の国語は「作家の時間」。ここは、僕が中心でミニレッスンやカンファランスを進行させてもらい、2時間目以降は、他の専科の先生の授業に入らせてもらう形です。英語、音楽、書写は子どもたちと一緒に授業に参加。「もみじ」を歌いながらのエクササイズをしたり、「はす」という平仮名を半紙に書いたり…給食も教室で食べて、掃除の時間もいっしょに掃除をして、最後に子どもとハイタッチでサヨナラをして、ジャーナルにコメントを書いていたら、もう夕方の4時半過ぎ。一日が過ぎるのが本当にあっという間。

とても良い経験でした。「小学校の先生の一日って、こんな風に過ぎていくのか」と実感できました。今日は1時間目を除いてほとんどが「子どもといっしょに教室にいるだけ」だったけど、それでも、国語の授業を見学するだけだとわからない姿、長時間、いろいろな授業の時間をともにすることで見えてくる子どもの姿というものは確かにある。こういう日々が、毎日、毎週、毎月…と積み重なっていく。小学校出身の同僚たちが、教科という枠組みよりも、一日子どもと生活をともにして、子どもをトータルで見たいという思いを強く抱いているのは、こういう経験を繰り返して、それに価値を感じているからなのだろうな、と少し肌で感じることができました。

しかし、自分の勉強はできないなあ…

でも一方で、「これだと全然勉強ができないな…」と感じたのも事実です。学校にもよるのでしょうが、高校だとだいたい週に16~18コマくらい授業や担任を持って、それ以外の時間(いわゆる「空きコマ」)は分掌の仕事か授業準備にあてます。特に僕の前任校は、幸い授業準備にかなり集中できる環境だったので、授業準備がしっかりできて、それを生徒に還元できるのが自分の喜びでもありました。

一方、小学校の先生には授業準備のための「空きコマ」がほぼない。自分のクラスしか教えないので、回数を重ねて授業をブラッシュアップすることもできない。

そんな環境で日々の授業準備や工夫を熱心に重ねている先生たちには頭が下がるけれども、これだと、どんなに勉強熱心でも、とても一つ一つの教科の勉強をする時間はないですよね。「小学校国語の実践家」として名前を聞く小学校の先生は、本当にごく一部の例外なんだろうなあ。小学校では、多くの勉強熱心な先生方の学ぶ内容が、学級経営とか学び合いとか、教科に関係なく活かせる内容になりがちなのも、納得というか、わかる気がしました。教師として成長する仕組みや、その中で育まれる成長願望(理想の教員像)自体が、高校の先生とは違ってくるので。もともと教員になる動機にしても、高校の先生だと、僕みたいに「大学院まで勉強してきたことを活かした仕事をしたい」という動機の人も少なくない一方、小学校の先生には純粋に「子どもが好き」「教育に関わりたい」という人が多いという傾向は感じますが、それをそれぞれの仕組みの違いが強めるているのかな…

一日過ごして、改めて、小学校の先生と中高の先生は、同じ教育職と言ってもかなり違う仕事だなあ…と感じました(もちろん、高校でも実態は様々で、僕が「教員がずっと勉強を続けられる仕組みの学校」を選んで働いていたのでしょうし、学校種による二項対立は決定的ではないけれど、でもその傾向は確かにある)。

小学校の「専科・国語」があればいくらでもやってみたいんだけど、全部の教科を教えないといけない縛りのせいで国語の勉強ができなく(やりにくくくなる)なら、それは僕は嫌だなあ…。

次もまたやってみたい!

幼稚園・小学校・中学校・高校と、バックグラウンドの違いによる価値観(良し悪しの感覚や好み)の違いは、風越学園では避けられない話題です(というか、それを避けていたら集まった意味がない)。とはいえ、お互いの「譲れない一線」の違いに戸惑ったり、行き詰まったりするのも事実。でも、一日小学校で過ごしてみて、なるほど小学校の先生ってこういう気持ちになるのか、とほんの少しでも自分で経験できたのはとても良かった。自分が最終的に何をやりたいかと言われると、やはり自分は教科の専門家として働き、成長したいけれども、またチャンスがあれば経験したいと思っています。今回、貴重な機会をくださった片岡さんや、学校の関係の先生方、本当にありがとうございました。

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