目下のお悩みの一つ。漢字の学習をどうする?

前任校では、生徒の高い自学能力に頼ってこちらはテスト(小テスト含む)で出題するだけだった漢字学習。でも、風越学園で漢字の学習をどうする?という問題は、目下の関心事の一つ。色々と資料を集めています。今日はその資料の整理エントリ。

写真はこのエントリの後半に出てくる熟語ゲーム。楽しかった〜!

目次

読みについてはどうにかなる。でも…

国語のカリキュラムを一緒に考えているKAIさんと合致しているのは「漢字の読みは、たくさん読書すれば大丈夫」ということ。これは自信がある。でも、書きについては練習しないとどうもならない。これからの時代、手書きで漢字を書けるスキルがどこまで必要なのかという疑問があるのも事実で「パソコンで変換できればOK?」という声もあるけど、一方で高校入試までは確実に手書きなので、書けないと不利益を被るのもまた事実。授業時間を漢字練習にはあまり割きたくないけど、やらないわけにもいかない。さて、どうしたものか。

やはり、練習するしかないか?

漢字学習についての論文をCiniiなどで拾ってみると、国語教育だけでなく心理学系でも論文がいくつかヒットします。それを斜め読みすると、「書く練習を繰り返すと効果がある」「テストを繰り返すと効果がある」という「そらそうですよね…」な論文から、「空書きには効果がある」とする論文まで、基本的には「練習が大事」というまっとうな?主張を支えるものが多そう。

その中で印象に残ったのは、丸山真名美(2004)「漢字学習方略の検討」という論文。漢字学習には、何度も書いて覚えるリハーサル方略と、既有知識と関連づける体制化方略があり、両者は独立に働くという論文です。おそらく初期の学習者はリハーサル方略しか方略がないにしても、漢字知識が増えれば体制化方略が使えるようになるはず。そこをうまく支援したいなーと思います。

丸山真名美(2004)「漢字学習方略の検討」

また、「教員の経験年数や漢字指導法が児童の漢字読み書きの正答率に及ぼす影響」という調査結果も面白かったです。

教員の経験年数や漢字指導法が児童の漢字読み書きの正答率に及ぼす影響

こちらは、小学校教員16名に対する比較的小規模な調査とはいえ、漢字の正答率と相関が高い漢字指導法として「宿題をだす」「単語ではなく例文で練習する」「ノートの書き方の手本を示す」などの手法が上位に来ています。「決まった時刻に宿題をさせる」というのもありますが、これは、学習習慣と関係があるということかな?

同時にこの調査では、ベテラン教員がよく使う漢字指導法が必ずしも児童の漢字正答率の向上に寄与していないという結果も出ています。これもちょっと面白いですね。ただの推測だけど、漢字指導については経験だけに頼ってあまりブラッシュアップされないので、教員経験年数が質の向上につながらない側面があるのではないでしょうか。

参考になる漢字指導の関連本

漢字指導の本としては、評判のこの本が参考になりました。

僕はここまで漢字指導に手間をかけたくないなというのが本音なのですが、先行研究と実践に裏打ちされた本で内容はとても参考になる。それはここまでやればできるようになるだろうなあという感想です。漢字指導のゴールを文字指導ではなく語彙指導にしている点にも共感できます。

また、指導法ではないのですが、小学校の配当漢字の漢字字典として、首藤久義さんが編著の「はじめてつかう漢字字典」も非常に良かったです。見やすいし、例文や熟語もたくさんあるし、漢字の音訓索引が充実している。これは児童に一冊ずつ持ってもらってもいいくらい。小学生のお子さんにはおすすめです。

漢字の成り立ちから学ぶという点では、白川文字学をベースに易しくまとめたこの本のシリーズも良いな。図書館に入れると良さそうです。

漢字を楽しく学ぶゲームも色々

実は上の字典、先日、佐久地域の小学校の先生と一緒にやっている国語の勉強会「コメダの会」(と言いつつ柏屋旅館というシェアハウスで開催)で紹介されたものでした。この日の会では、漢字を楽しく学習するためのゲームも紹介されたのだけど、個人的に実際に遊んで一番楽しかったのは、これ。

漢字指導というより語彙指導だけど、漢字を組み合わせて熟語を作る色々なゲームを楽しめます。ポーカー風にしたり、ババ抜き風にしたりと、自分たちでルールを考える余地も大きくて、ある程度熟語を知っている子なら結構楽しめそう。こういうのを1セット置いてもいいかなと思いました。

ちなみに、この種の漢字ゲーム、馬場雄二さんというデザイナーさんが結構作られています。「コメダの会」でやってみたのはこれ。

神経衰弱的なゲームもできれば、ババ抜きのようにペアを作って遊ぶことも。一つ一つの漢字を作るのは簡単だけど、熟語を作るとなると途端に難しくなる。これ、もっと部首のバリエーションがあるといいのになあ、惜しい、というのが感想でした。

以下の本もデザイン性がある漢字クイズがたくさんあって、かなりユニークで楽しい漢字本でした。

とまあ、現在、資料を色々と集めております。どんな風に漢字指導をして行くかはまだまだこれから考えるので、皆さんのおすすめの本があったらぜひ教えてください!

 

追記:ご助言の数々

facebookページでいただいたコメントから、以下にいくつか備忘録としてまとめてみました。ありがとうございます!

  1. 経験則からは、字形で覚えるタイプ、用法で覚えるタイプ、成り立ちや構造で覚えるタイプ、音で覚えるタイプがいそう。
  2. 最小限押さえるべきことは、1)読みと書きがまるで異なる学習プロセス、2)音と訓(意味)の違いとそれぞれ読み方が複数あること、3)漢字の構成単位(へんとつくりよりもっと細かい認知単位)、というあたり。
  3. 子ども自身が「学びたい。学ばないとまずい」と思えると進むよね、とは思いつつ、楽しく学ぶツールはやっぱり用意してあげたいなぁとも思います。「学び方は色々ある」が子どもに伝わるといいですね。

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2 件のコメント

  • 道村静江先生の部品で覚えるミチムラ式もいいですよ。
    全盲の子どもに漢字を教えた方法から生み出された方法です。
    下村式の唱えて覚える方法とも違います。

    視覚優位か聴覚優位か、または同時処理か継時処理かによって何が合うかは子どもそれぞれなので、様々な方法から選べるといいですよね。