授業を通して子どもの関係性をどう作っていくの? 風越の校長(ゴリさん)に聞いてみた。

風越学園の2023年度が始まっている。初日から3日間は、子ども中心の「風越づくり」。改めて、子どもたちが「作り手」としてスタートする良いスタートをきっている。その一方で、毎日忙しいのに、授業準備は本当に全然できていない(汗) そんな中、忙しい校長のゴリさん(岩瀬直樹さん)に、お願いして、公立小学校担任時代の実践について話してもらった。テーマは「授業を通じた関係性づくり」。超一流の実践者だったゴリさんだが、校長に立場が変わって遠慮している面もあるのか、風越ではその時代のことを話すことはあまりない。とはいえ、その頃のノウハウに学びたいことはたくさんある。とくに僕は、新年度(僕はまた5・6年ラーニンググループを担当する)、グループの人間関係づくりを頑張っていきたいし、その鍵はたまのイベントではなく日々の授業にあるので、ゴリさんにレクチャーをお願いしたいのだ。快く引き受けてくれて、ほんと勉強になる時間だった(なお、ゴリさんにはクラスづくり系の著作も複数ある)。

というわけで、備忘録的に、大切なことをメモしていこうと思う。たぶん、ベテランの小学校の先生たちからは「当たり前」なことも多いのかも。でも、小学校経験の浅い僕にとっては、勉強になることばかりだ。

写真は、我が家のご近所名山、平尾山からのぞむ八ヶ岳の峰々。本当に遠くまで晴れ渡ってよく見える日でした。。

目次

自然な交流に任せないで構成的に「混ぜる」

一番大事だなと思ったのは、自然に「混ざる」のを待つのではなく、構成的に「混ぜる」ことの大切さ。詳しくはゴリさん自身が自身のブログで書いているので、そちらを読んでほしい。人間の関係性は自然に任せていたら固定化するので、意識的に混ぜて、小さなコミュニケーションの成功体験をたくさん作っていくこと。

席替えを完全くじ引きにすること。

学級づくりを考えるシリーズ。関係性のつなぎなおし。

僕は去年からトランプを使って意識的に「混ぜる」意識はあったけど、今年は一層、子供たちを意識的に「混ぜて」いきたいな。「混ざる」と比べて「混ぜる」は当然「不自然」なのだけど、自然であることが良いわけではないのだ。教師としての権力を適切に使っていこう。

この話をするときにゴリさんが「誰かの授業でだけ混ぜると、その人の授業だけ混ぜられる嫌な授業っていう間違った伝わり方をするから、ラーニンググループで揃ってやろう」という趣旨のことを言っていたのも印象的。確かに、一人で受け持つ小学校担任と違って、全員が共通理解を持っておくことは大切だ。具体的な方法は個々に任せるにしても、同じ方向は見ていたい。

コミュニケーションは「小さく」「たくさん」

ゴリさんがよくやっていたのは、「小さな」コミュニケーションを「たくさん」仕組むこと。「今の話聞いてどう思った? 30秒隣の人と話してみて」という問いかけをたくさんしていたそうだ。ここでのコツは「小さく」「たくさん」。30秒とか長くても1分くらいの長さのコミュニケーションを積み重ねる。いきなり5分も設定すると、話すことがなくて失敗体験の積み重ねになる恐れがあるからだ。このレクチャーでは、「2人で15秒」くらいから始まって、「4人で5分」のブッククラブを行うまで、少しずつ時間を伸ばし、人数も増やすゴリさんのやり方が聞けて面白かった。

ミニホワイトボードの効用

また、そのコミュニケーションにミニホワイトボードを使うのも、良さは知ってたけど、改めて良いな。ホワイトボードを使うことで意見が可視化できる良さや、間にものを挟むことでコミュニケーションがしやすくなる良さもある。でもそれ以上に、「手をあげてもらって誰か一人を指名すると、当たらなかった人はどんどん手を上げなくなるけど、全員にミニホワイトボードに書いて貰えば、30秒もあれば全員の意見を一度は取り上げられる」とゴリさんが言っていたのは印象的だった。なるほど、そういう意識は僕にはなかったかも。これは、公平性を保ち、全員を承認する仕組みでもあるのだ。

もちろん、コミュニケーションの量が十分に溜まって質に転換するタイミングなら、ミニホワイトボードは、ちょんせいこさんの「ホワイトボードミーティング」に乗っ取って話を聞き合ったり、オープンクエスチョンをしたりするときの強力な武器にもなる。僕の場合、ミニホワイトボードを渡すとお絵かきに走る女子も少なくないのも悩みだけど、ホワイトボードを使う理由をきちんと伝えて、活用していきたいな。そして、子どもたちが自分でホワイトボードを使いながら問題解決できるようになっていったら素敵だ。

教室がうまくいかなくなるとき

ちょんさんの話が出たついでに書くと、ゴリさんがいう「教室がうまくいかなくなる仕組み」はちょんさんと全く同じだった。一つは「待たされ時間」の増加、もう一つは「怒られる声を聞く」こと。これは、本当にそうだよなあ。自分でも頭ではわかっててもついやっちゃうけど、一番よくないのが、時間になっても遅刻する子を待って授業を始めず、遅刻してきた子を怒ること、なんだと思う。これって、真面目にその時間に来た子が一番損をする仕組みだもの。ちゃんと時間に来るのが馬鹿馬鹿しくなってしまうよね。このことは、去年、みんなが揃っていなくても時間通りに漢字クイズを始めることからスタートしたら、だんだんみんなが時間通りに来るようになったので、効果を実感してる。今年も、時間になったらすぐに始める、を徹底しようと思う。なるべく、遅れてきた子が「遅れて損した」と思えるような、楽しい始まり方にしたい。

コミュニティの成長段階を意識しよう

ゴリさんの教室実践の話を聞くと、コミュニケーションの量を構成的に増やし、関係性をつなぎ直す「知り合う」時期の作業をとにかく徹底的にやっている。そして、そこで徹底しているせいか、コミュニケーションの質を高めて良質のチーム体験を作っていく第二段階に行くのが意外に早い。6月くらいにはそうなっている感じ。その先に、第3段階として、「必要に応じて誰とでも関われて、一人でやることも選べる」個別化と緩やかな協同の時期が訪れるというわけ。なるほど、こうやってコミュニティの成長段階のイメージを持っているのは大事そうだ。

今回、新年度が始まる前にこうやってゴリさんの話を聞けてよかったな。そして何より、同じラーニンググループのメンバーと一緒に聞けたのも大きい。風越は学級担任制ではないので、一人の担任が持つような凝集性はなかなか持てない。もちろんこれは、その凝集性が生み出す苦しさを緩和できる強みでもあるのだけど、一方で複数のラーニンググループスタッフがばらばらなことをしていては、いつまで経ってもコミュニティは良くなりにくい。今年、まだ始まってたった数日だけど、本当に心強いメンバーに恵まれた。このメンバーとビジョンをしっかり共有して、一緒に前に進んでいきたいな。よし、頑張ろう!

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