[資料]「浅間山を究める」ための施設&ブックリスト

11〜12月、56年の僕のチームでは、テーマプロジェクトとして「浅間山を究める」にとりくんだ。今回のテーマプロジェクト、僕はサブ担当だったのだけど、ちょうど登山に興味を持った時期ということもあり、個人的にはとても楽しいプロジェクトだった。ただ、終わったいまは、期間が短かったことや時期的な問題(気候がよければみんなで浅間山に登りたかった!)もあって、もったいなさも感じている。そこで、いつかまたこのテーマでプロジェクトをやる時にそなえて、未来の自分に向けて、集めた資料と訪れた施設のメモを書いておく。ほとんどの人には役立たないけど、浅間山観光をしたい人、浅間山に興味のある人には役立つかも?

軽井沢発地から撮ったこの写真、右から小浅間山、真っ白な雪が目立つ浅間山(前掛山)、その手前に石尊山、浅間山の左に剣ヶ峰、黒斑山、更に一番左に高峰山が見える(はず)。前は同じ景色を見ても「浅間山だ〜」としか思えなかったのが、ここまで「見える」ようになったのが、この一ヶ月の学習の成果ですな…

目次

浅間山について学ぶなら、ここに行く

まずは、浅間山について探究したい時に行きたい施設をメモします。

浅間山北麓ビジターセンター

残念ながら2021年3月で閉館となった旧火山博物館のそばにできた、浅間山北麓ビジターセンター火山博物館の施設を引き継ぎ、浅間山の歴史、地質、生き物などの展示をしています。こぢんまりとした施設ながら、資料がどれも興味深い…。特に、噴火後の溶岩だらけの状態からどうやって植物が生え、生き物がやってくるのかという植生の変化を示した模型が面白かったです。また、屋外のトレイルコースもとても魅力的。30分から1時間以上のコースがあり、ちょっとしたハイキングを楽しめるのもgood。浅間山の溶岩というと下の鬼押出し園が有名だけど、ここも立派な鬼押出しの一部で、巨大溶岩の迫力も楽しめます。

群馬県側から見る浅間山は、長野県側からよりもおだやかに見える山容だけど、山頂付近には、長野県側からは見えない千トン岩(1950年の噴火で噴出した岩塊で、実際には三千トンあるらしい…)もくっきりと見えるのもポイントが高いのです。さらにさらに、ここの展望台は80メートルの落差があり、その落差がそのまま天明3年(1783年)の浅間山噴火、通称天明の大噴火のときに山の中腹で爆発がおき、爆発で土石が崩れたぶんの落差なんですよね(って、ブラタモリで言ってた)。

とまあ、かなり面白い場所なのだけど、何よりスタッフの方が親切で温かくって、今年の冬、プライベートで2回、生徒を連れて2回と、合計4回もいっちゃいました(笑)。

嬬恋郷土資料館&鎌原観音堂

天明の大噴火でおきた土石流が流れ込んだ場所として有名なのが、「日本のポンペイ」群馬県の嬬恋村鎌原です。5メートルにも及ぶ土石流が遅い、村があっというまに壊滅したことで知られています。ここ、嬬恋郷土資料館では、その噴火の被害の様子や鎌原の村の生活を語り継ぐ資料が展示され、「天明の生死を分けた十五段」として語り継がれる、鎌原観音堂も見学できます。こちらの施設にも、DVDをお借りしたり、子どもたちを案内していただいたりと、とてもお世話になりました。個人的に訪問される場合も、事前にボランティアガイドをお願いしてから行くとよいと思います。

ちなみにこの鎌原には、天明3年噴火の際に発生した吾妻火砕流が樹木を燃やした跡、「溶岩樹型」もあります。木が生えていた跡が穴となり、その穴が無数に空いているという不思議なスポット。当然あすこまも行ったのですが、ちょうど落ち葉の時期のせいか、ネットで穴が覆われて、ちょっとガッカリでした…。

やんば天明泥流ミュージアム

鎌原を襲った土石流は、そのまま吾妻川に流れ込み、川を氾濫させる泥流となります。これが「天明泥流」。やんば天明泥流ミュージアムは、その泥流についてのミュージアム。泥流の様子を再現した映像にはじまり、泥流の被害や復興の様子まで見られます。流された家屋や死体が一夜で東京湾や銚子まで流れ着いたのだというから、泥流、恐ろしい…。2021年4月にできた新しい施設ということもあり、展示の仕方も工夫をこらしています。個人的にツボだったのは、噴火の被害だけでなく、当時の人々の暮らしや復興の様子を見られたところでした。最初の迫力ある「泥流体感映像」は、風越の子どもたちの食いつきもすごかったな…。

個人的には、丸一日かかるけど、「浅間山北麓ビジターセンター→溶岩樹型→嬬恋郷土資料館→やんば天明泥流ミュージアム」の順番で訪れることをおすすめします。天明3年の土石流の被害を、その発生場所から順に学んでいけるからです。

鬼押出し園

天明3年(1783年)の浅間山大噴火で発生した溶岩流がつくった鬼押出し。鬼押出し園は、その鬼押出しを観光地化した場所で、普通は、浅間山といえばまずここという有名な観光地。が、巨大溶岩が浅間山北麓ビジターセンターのトレイルで見られることもあって、実はまだ行ってません。一度行った妻が「一度行けばはいいかな…」と言ってるので、家族で行く機会がなさそう…笑

浅間縄文ミュージアム

天明3年の噴火の被害が群馬県側に集中したせいもあるのか、長野県側の浅間山に関する資料館はあまりみかけません。そんな中で、わが御代田町の浅間縄文ミュージアムでは、2階に浅間山に関する常設展示室があります。こぢんまりした展示室だけど、そもそもの浅間山の歴史から植生から天明3年の噴火まで、ひととおりのトピックにふれられます。僕が今回のテーマプロジェクトの予習で最初に訪れた施設でもあります。浅間山のふもとの縄文文化について学べるのはここだけなので、あわせてどうぞ。

NPO法人浅間山麓国際自然学校

浅間山麓国際自然学校は、高峰高原を拠点に、浅間山麓での様々な自然体験プログラムを実施しているNPO法人です。今回のテーマプロジェクトでは、小浅間山登山や浅間山北麓ビジターセンターのトレッキングの際、風越がいつもお世話になっている別の専門ガイドの方にネイチャーガイドをお願いしました。でも、一般の方が浅間山のネイチャーガイドをお願いするなら、ここに打診するのが良さそうです。

浅間山について知るなら、これを読む/見る

僕の住む軽井沢・御代田・小諸の図書館には、地域資料コーナーに浅間山関連の資料がたくさんあります。ただ、専門的な資料の多くは館内閲覧のみ。ここは館外貸し出し可のものから選びました。

浅間 火山と共に生きる

浅間縄文ミュージアムの館長、堤隆さんの著作です。ご専門は考古学の堤さんですが、他の学術文献なども引用しながら、浅間山の歴史についてまとめています。有名な江戸時代の天明の噴火だけでなく、実はそれよりも規模が大きかった平安時代の天仁の大噴火、さらに2万年前の黒斑山の山体崩壊まで、僕はこの本でまずは学びました。

浅間嶽大焼

同じく浅間縄文ミュージアム館長の堤隆さんの著作。こちらは天明3年の大噴火、「浅間嶽大焼」に特化した内容。平安時代におきた天仁の大噴火とは違い、江戸時代の天明の噴火では多くの記録が残されました。この本では、たくさんの図版とともに、天明の噴火の記録を見ることができます。他にも天明の噴火の本は多いけど、ぱらぱらめくるとだいたい似たような内容だったので、あまり本格的には読みませんでした。

週刊 ふるさと百名山 34号 浅間山・四阿山

「山と渓谷」社が出している登山愛好家向けのシリーズの一冊。こちらも全34ページ、浅間山に関する部分はその半分とても薄いのだけど、浅間山の登山ルート、歴史(特に天明の噴火)、生き物、周辺の山まで簡潔にまとまっていて、最初にパラパラ見るにはいいんじゃないかなー。

浅間山、歴史を飲みこむ

これ、児童書なんだけど、実に良いです。天明の噴火の大被害を、その背景となる田沼意次の治世の様子とあわせて描いてくれています。子供向けとはいえ、実際の史料に基づいて書いていて、大人でも読み応えがあります。ただし、鎌原を襲った土石流を「火砕流」と書くなど、やや古いゆえの間違いもありました。

上信越高原国立公園浅間地域ジオ資源データブック

環境省長野自然環境事務所発行。浅間山周辺の地形、地質、植生、自然景観、歴史など、「ジオ資源」の一覧とその連絡先が書かれているデータブックで、これ一冊持っておくと、テーマプロジェクトで「これについて調べたい」→「どこに行くと良いかな?」という時に大変便利でした。これは小諸市の図書館にあったもので、周辺に住んでない人にはアクセスしにくいのですが…。

浅間山の火山災害と防災

長野県佐久建設事務所が発行している、浅間山の防災啓発目的の冊子。40ページほどの小冊子だけど、浅間山の成り立ちからはじまり、火山ならではの火山災害や土砂災害、今日の防災対策まで、とてもよくまとまった一冊で、個人的には超おすすめ。一般の書店では手に入りにくいが、PDFファイルをこちらからダウンロードできます。

にっぽん百名山 関東周辺の山Ⅱ(DVD)

NHKのDVD「にっぽん百名山 関東周辺の山Ⅱ」では、天狗温泉登山口から浅間山に登る回が収録されています。この登山道には、巨大な噴石の落下で地面に大きな穴ができている場所があるのだけど(火山館をすぎたあたり)、このDVDを見ていなかったら見逃してしまうところでした。

ブラタモリ「浅間山」(2019年10月放送分)

2019年10月に放送されたNHK「ブラタモリ」の第145回は、「浅間山~江戸時代の大噴火!衝撃の1日に何があった?~」という回で、まさに天明3年の噴火を扱ったものでした。ただ、ブラタモリはDVD販売やレンタルもしていないし、NHKオンデマンドでも過去2回分しか配信されていないので、一般には手に入れにくいかもしれませんね。撮影場所にもなった浅間山北麓ビジターセンターに行くと、このブラタモリが常時流れています。

ブラタモリ4 松江 出雲 軽井沢 博多・福岡

同じくブラタモリの軽井沢回の書籍化。ブラタモリの過去放送はなかなかアクセスしにくいのだけど、本でなら読めるので…。

実際に浅間山を見る/登るなら…

最後に、やはり実際に「登る」ことを無視はできないでしょう。実際に登ると愛着も湧くし、ただの「山」に名前がついてきます。浅間山は火山「群」で、現在の噴火口である釜山、その外輪山である前掛山、さらにその外の牙山(ぎっぱ)、剣ヶ峰、黒斑山などを総称して「浅間山」とも呼ぶらしい。ただ、登山者にとっては、現在登れる山頂である前掛山がイコール浅間山というわけです。

前掛山

なんと、今回のテーマプロジェクトのために、前掛山(一般に言う浅間山)に2回登りました! 活火山なのでヘルメットなどの装備は必要ですが、日本百名山の中でも比較的手軽に登れるわりに変化に富んだ素晴らしい山だと思います。ニホンカモシカにも会えたし、火山ならではの景色も見られました。今回は2回とも天狗温泉からのルートだったのだけど、一番面白いのは、車坂峠から第一外輪山の黒斑山に登り、蛇骨岳〜Jバンドを経由して浅間山に登るルートだと思う。これは来年の楽しみにとっておきます。

また、この秋は子どもたちと登る計画もたてたのだけど、降雪シーズンが近づいていたので断念。いつか、夏〜秋シーズンに、風越の子どもたちと登りたい!

黒斑山

浅間山の第一外輪山でもある黒斑山は、浅間山の絶景スポットとして有名な場所。そして、もともと10万年前〜3万年までは、浅間山のもとになっていたのはこの黒斑山でした。当時の黒斑山は2800〜3000M級の成層火山だったそうです。それが2万4000年前頃に噴火で山体崩壊して、いまの2568Mの浅間山になったのだそう。その時に崩れ残った東側の側壁が、現在の黒斑山。そのため、今も浅間山を登ると黒斑山の迫力ある側壁が楽しめます。この黒斑山、僕は夏シーズンに登ったけど雪山入門の山でもあるらしいので、冬にも登ってみたい…。

小浅間山

小浅間山は、約2〜1万年前の仏岩火山期にできた溶岩ドーム。登山口の峰の茶屋から40分くらいで山頂にたどり着き、しかも迫力ある浅間山が眺められるという超お得な山。かつて使われていた登山道もくっきり見える。小さなお子さんでも登れる浅間山ビュースポットとしておすすめ。

石尊山

軽井沢方面から浅間山を望むと、浅間山の手前にこんもりと見える低めの山が、この石尊山。追分宿から登って3時間ほどで山頂につく山です。火山性の土壌のため、鉄分を含んだ水が空気に触れて酸化した結果、「赤滝」や「血の池」と呼ばれるほど、流れる水が赤く見えるのが特徴。天候のタイミングが合わずまだ登れていないのだけど、早く登ってみたい山。冬でもアイゼンなしで登れるかなあ…。

離山

小浅間山と同じく1時間弱で頂上までたどり着く離山は、軽井沢町民に親しまれる山です。でもこの離山、実は、軽井沢を作った噴火の名残でもあります。2万3000年前頃、黒斑山が山体崩壊した影響で、川がせき止められて軽井沢一帯が「古南軽井沢湖」を形成していた時期がありました。離山は、その湖時代の約2万年前頃におきた噴火の影響でできた溶岩ドーム。ブラタモリ第14回「軽井沢」によると、この時の噴火の火砕流で南軽井沢湖が埋まり、軽井沢は現在のような広く平らな土地になったのだとか….。その名残を示す離山は、今はその形状から「テーブルマウンテン」とも呼ばれています。軽井沢の山といえば、まずはここかな? でも、いつでも行ける気軽さゆえか、まだ登ってません。これも冬の登山の候補に….。

まだまだ知りたい、浅間山

とまあ、この一ヶ月ほどで予習した知識をまとめてみました。小学校6年生の理科にちょうど火山の単元があるし、火山に関連して土壌、生き物、歴史、防災と、かなり広がりを感じさせる学習材の浅間山。実は僕の住んでいる御代田町は「田切地形」という深い谷が多く、土砂災害警戒区域も多い地域なのだけど、その理由もまた、1万年以上前の浅間山(仏岩火山)の噴火によって御代田・小諸の土壌が作られ、侵食されやすい軽石が多く含まれているからだとか。僕らの身近な生活にも浅間山が関わっているのかと思うと、ますます面白い。来年は専門のガイドさんをお願いして登ってみようかなあ。いずれにせよ、風越にいるあいだは、ちょっとずつ詳しくなっていきたい山です。

 

 

 

 

 

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