前回の更新で書いた大英図書館見学(下記エントリ)のあとは、地下鉄を乗り継いでホワイトチャペル駅へ。新しいタイプの公共図書館として2000年代に生まれた「アイデアストア」を見学するためだ。
「アイデアストア」とは、2002年にロンドンのタワー・ハムレット地区ホワイトチャペルに第1号がオープンした新図書館のこと。一言で言うと、貧困地域にあり利用率も低かった従来の図書館を、住民へのアンケートをもとに再生したのがアイデアストアである。
貧富の差が大きく、金融街でありながら深刻な貧困問題を抱えるこの地区の実態や、その中でのアイデアストア構想については、詳しくは下記リンク先から入手できる荒井宏明さんのレポートを読んでほしい(僕もTwitterでこれを教えていただいて予習した)。
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ホワイトチャペル駅で降りると、ロンドンの中心街とはやや違う風景が広がっている。広い道路に停車中の落書きされたトラック、寝ているホームレス….。歩いているのも有色人種が多く、観光客らしき人はほとんどいない。
その駅から徒歩すぐのところに、アイデアストアの第一号館・Idea Store Whitechapelがあった。大きな、モダンなデザインが印象的な建物だ。
中に入ってスタッフの方に見学と写真の許可を得て見学開始。5階建ての建物で、館内は広々としている。まず驚くのは、このアイデアストアには非常に多様な機能があることだ。図書の貸出はもちろん、CDやビデオの貸出、無料でインターネットもできるPCが使えるあたりまでは想像の範囲内なのだが、最上階にはカフェやギャラリーがあり、他の階にも会議やセミナー用の部屋が多数、さらにはピアノやダンススタジオまである。
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「なんで図書館にダンススタジオが?」と思うのだけど、実はこのアイデアストアは、Idea Store Learningという日本のカルチャーセンター的な企画を行っている。就業スキルや英語や数学の学習からフィットネスやアートまで、実に多彩なコース。80ページに及ぶパンフレット(下記写真)を見ると、なんとコースの数は800以上! Leaner Support and Advice Teamというスタッフもいるし、割引制度もあって、まさに至れり尽くせりの感。
この図書館、メインのユーザーにやはりこの地区の貧困層がいるようで、蔵書でも就業支援の本、ESOL(English for Speakers of Other Languages)の本、そして英語以外の言語としてはベンガル語やソマリ語、ウルドゥ語の本が多かった。ハードウェアの面でもサービスの面でも、彼らの経済的自立を支援することが、図書館の大きな目標の一つになっているのは間違いなさそうだ。無料で利用できるPCが多数あるのも、もしかして経済状況に関係なく情報へのアクセス権を確保するという意味もあるのかもしれない。
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長くなってきたので記事を2回に分けることにして、次回は児童コーナーを中心に書いてみたい。
(9/2追記)