下記エントリに引き続き、ロンドンのタワー・ハムレット地区のアイデアストア・ホワイトチャペル館の見学記。
アイデアストア・ホワイトチャペルの児童書(ヤングアダルト含む)コーナーは、グランドフロア(1階)の奥まったところにある。
アイデアストア自体が広いからなのだが、子供向けコーナーだけでも「広い学校図書館」くらいの規模がある。お薦め本コーナーや床にごろんと寝転べる場所もあるところも、なんとなく学校図書館を思い出させた。
ちなみに、僕が入った時の利用者は、全員アフリカ系かインド系で、白人はゼロ。
▼
見学する中でちょっと驚いたのは、ParentingというコーナーがInfomation BooksやMangaなどと同じ規模であったこと。妊娠・出産の準備、子育てのための本が低書架の本棚3棹ぶん、かなりの冊数ある。
ちょうど受付で見学希望を伝えた際に対応して下さったスタッフの方が「日本の図書館と似ている?」と聞いてくださったので、「子供向けコーナーに妊娠の本がここまでたくさんはないと思う。ティーンエイジャーの妊娠は深刻な問題なのですか?」と聞いたところ、頷いていらっしゃった。ただ、同時にこの地区だけではないと言っていたので、いずれ他の公共図書館を見た時に児童書コーナーを注目して見てみたいところ。
▼
また、大人向けのそれと同様、子ども向けの企画も多数開かれている。毎週や毎日の定例企画として、
STORY TIME
STORY TIME BOOK CLUB
DAD’S CLUB
FAMILY READING GROUP
THE DAILY SERIAL(お菓子片手に個人で集中して好きな本を読むイベント)BOY’S BOOK CLUBGIRL’S BOOK CLUBCOMPUTER CLUBTEENAGE BOOK CLUBHOMEWORK CLUBART CLUB
と、ブッククラブを中心にこれだけの日々企画が開かれているのでびっくりしてしまった。これに加えてSummer Reading Challengeやショートストーリーのコンテストなどの季節ごとの単発企画もあるのだ。その中にはファミリーや親向けのイベントも複数あって、子どもだけでなく親にも一緒に参加してもらおうという意図も感じ取れる。館内には親の関わりを促すこんな標語もあった。
これらのイベントの予算についてスタッフの方に質問したところ、予算は自治体から出ているらしい。ただ、図書館のスタッフがこうしたイベントの運営もせねばならず、それには別の給料も発生しないので(という点を強調してた)、かなり大変なようだ。加えて、子ども相手という点でも大変だろうと思って聞いたところ、この館のスタッフの多くは、図書館学だけではなく教育の学位も持っているという。「じゃあ両方のエキスパートなんですね」「エキスパートとは言えないけれど、そうなれるように努力はしています」との言葉に、感銘を受けてしまった。
ただ、上のやりとりでも分かるように、傍目にはアイデアストアの理念は理想的にも思えるが、それを実施するには色々な問題もありそうだ。今回は時間と僕の英語力不足であまりつっこんだ質問はできなかったけれど、このへんはいつか聞いてみたい話題である。
▼
今回、1時間半ほど滞在したアイデアストア・ホワイトチャペル。 短い時間の見学だったが大変感銘を受けた。何より、子どもも大人も関係なく、生涯を通じての人間の学習を支えようとしている姿勢が明確で、「アイデアストアは、図書館機能を含んだ学習のための総合施設」というコンセプトがよく見えた。きっと運営にあたっては色々な課題もあるのだろうが、学ぼうとする人を支えるその姿勢は、すべての図書館が目指すべきものだとも思う。見学できてよかった。ここは、できればうちの司書さんにも見てもらいたい図書館だ。