ただいま、中軽井沢図書館でショートショート展示中!軽井沢の学校の連携事業への思い。

現在、中軽井沢駅前の軽井沢町立図書館にて、軽井沢風越学園・軽井沢東部小学校・軽井沢西部小学校の児童が書いたショートショート集が展示されています。10月30日までの予定です。近隣の方、軽井沢に遊びに来る方、ぜひお手に取っていただき、子どもたちへの感想をお寄せください。そしてこのショートショートの授業、この秋の個人的な一大イベントの一つだったのだけど、このブログではまとまった形では書いてこなかったので、背景の文脈も含めてここに記録として書いておきます。基本的に公開されている情報なので、書いてまずい内容とかはないはず…。

目次

始まりは、地域の先生たちとの勉強会

このイベントの始まりは、地域の先生たちとの勉強会だった。数ヶ月に一回のペースで、地域の公立小の先生たちと国語の授業の共有会のようなものを開いている。4・5名の小さな会だけど、その中でお互いの授業の資料を共有したり、「作家の時間」や「読書家の時間」について学び合ったりする、僕にとっては大切な会だ。

その中で、風越学園の3・4年生と西部小学校の4年生で2021年度にやったショートショートの交流会が良かったので、今年もやりたいね、という話になった。そして、「どうせやるなら、できた作品を図書館で展示してもらえたら….」「最初にショートショート作家の田丸さんに来てもらって一緒に授業を受けられたら…」と妄想があれよあれよと膨らみ、「できたら楽しそう!」となったのだ。

この話が弾んだのは、確か今年の春の勉強会のこと。それから、この勉強会の仲間が軽井沢図書館に研修に行ったり、僕の仕事上の繋がりで田丸さんと連絡をとれたり、いくつかのラッキーがあった。そして、町の教育委員会も応援もしてくれて、無事に実現の運びになったのだ。

2つの言葉の組み合わせから、不思議なお話を作る

こうして開かれた9月上旬の田丸雅智さんのオンラインのショートショート創作講座。当初は勉強会に参加していたメンバー間だけの取り組みだったはずが、町の教育委員会をはじめ色々な方の助力もあって、軽井沢の4校(東部小・中部小・西部小・風越学園)の3年生から6年生まで、合計500名を超える児童が参加するイベントになった。

この日、「2つの言葉の組み合わせから、不思議なお話の骨格を作る」という田丸さんのワークショップを、多くの子がとても楽しんで受けていた。「はい、ではこれを5分で書いてください」という感じで「サクサク」進行するワークショップで、個人的には「時間的制約がけっこう厳しくない?」と思ったけど、子どもたちの反応は前向きだし、後で田丸さんに聞くと、アドレナリンを出して思い切り良く書くために、あえてタイトにしている面があるとのこと。結局、2時間のワークでほぼ全員がショートショートの骨格を書けてしまえたのには驚いた。

作品は現在、軽井沢図書館に展示中

この日のオンラインレクチャーを切り口に、それぞれの学校ではショートショートを書き上げる授業が行われた(同じスタートでも、その後の展開は学校ごとに少し違うはずだ。それを知るのも楽しみの一つで、どう違うかは、次の勉強会で聞こうと思っている)。そして出来上がった作品のうち、風越学園3〜6年生・東部小5年生・西部小4年生の作品集が、いま、中軽井沢図書館で展示されている(10月30日午前中まで展示予定)。ファンレターも書ける仕組みなので、近隣の方はぜひ足を運んで感想を書いてあげてください。

このあとは、この学校間で作品を交換して感想を書き合い、一緒に遊ぶ時間も作る「交流会」も11月に予定されている。そこは子どもたちに運営を委ねるつもりなのだけど、どうなるか楽しみだなー。

軽井沢の町の学校間連携、進行中。

さて、この連携授業の背景にあるのは、軽井沢町の学校間の連携だ。軽井沢町には、軽井沢風越学園のほか、軽井沢東部小・中部小・西部小と3つの公立小学校、軽井沢町立中学校、県立軽井沢高校の、合計6つの公立の学校がある。ISAKという私立のインターナショナルスクールも入れると、7校だ。軽井沢町は学校間の連携が進んできていて、今年はそのうち5つの学校(東部小・中部小・西部小・風越学園・軽井沢中)で年間5回の合同研修が企画されているのだ。風越のスタッフも大勢が、講師としてあるいは一参加者として、この合同研修に関わってくれている。

僕は、この連携を進める「コアメンバー」、つまり中核スタッフの一人でもある。今回のショートショートの授業は、この組織的な連携に支えられてのものであり、同時に連携を推進するものでもあった。僕は一国語教員としてと同時に、連携のコアメンバーとしてもこの授業をやっていたわけだ。

こうした私立と公立が垣根を超えて連携する動きは、県内でもきっと珍しい。それもあって、信濃毎日新聞さんがショートショートの授業(9月6日付の記事)と合同研修(9月28日付の記事)と、二度にわたって取材してくださり、また、地域のFMラジオの番組「まんぼのラーニングアドベンチャー」でも学校連携の観点で、ショートショートの取り組みを取り上げてくださっている(9月29日の放送)。連携事業がこうやってメディアに掲載されて、町内外の教育関係者に知られることは、来年以降の展開にも好影響だろうから、本当にありがたい。

循環を作り出す教員派遣研修の仕組み

さらにいうと、こういう組織的な動きを生んでいるのは、長野県の風越への教員派遣研修の仕組みだ。実は(といいつつこれもウェブサイトにも書いてあるので秘密ではないのだけど)、風越学園が2019年に開校準備に入ってから、長野県との協定で、今のところは毎年公立学校の教員が風越に派遣されている。そこで風越のスタッフと派遣教員が一緒に汗を流して働いて知り合い、その後、その派遣教員が公立の現場に戻った後も、そのつながりを生かして一緒に何かやる、そういう流れがある。これは本当に大きいことだ。

実際、こういう連携の大きな文脈の中に、僕個人の文脈もある。まず前史として、僕は開校前の2019年に西部小を毎週訪問訪問させてもらって小学校教員の仕事を覗かせてもらい、担任体験もさせてもらった。

小学校で「一日担任体験」をしてきました

2019.11.15

そして、2020年度の開校初年度は、この研修制度で派遣された西部小の女性スタッフと東部小の男性スタッフと一緒にホーム「か」のスタッフを担当した。「学ぶことが多い、ホームスタッフとの週の振り返り」というエントリで書いているように、この2名と一年間を過ごせた経験は、「公立」「小学校」がどちらも未知だった僕には本当に大きかった。風越学園という特殊な現場に身を置くからこそ、公立小学校の仕組みの良さや、そこで使命感を持って働く人たちの凄さもわかってきた。だからこの2名には恩義を感じているし、この最初の一年間は「異年齢ホームっていいな」という思いの原点にもなっている。

学ぶことが多い、ホームスタッフとの週の振り返り。

2021.03.06

そして、この2名はその後公立の現場に戻り、所属や立場を変えながらも、今も一緒に連携に取り組んでいる大切な仕事仲間。恩返しをしたい気持ちも強い。そういう思いが、僕のコアメンバーとしての働きにも影響している。夜の会議が続く連携の仕事も、大変ながら、けっこう楽しい。

この事業、予算があることなのでいつまでもは難しいだろうけど、2019年から続いてきたこの派遣制度が培ってきた人のつながりが、2022年の連携の強力な推進力になっているのは間違いない。軽井沢の町の教育に良い循環をもたらすために、この派遣が今後も続いてほしいと、心から願っている。

これから先も、やりたいことあるな〜

今回のエントリでは、この秋のショートショートの授業と、その背景の学校間の文脈、そこに重なる個人的な文脈について書いてみた。2019年からの動きや人とのつながりが、ここにきて目に見える一つの形になったので、ふりかえると感慨深い思いもある。でも、今年で終わりじゃなくて、これから先もまだまだやりたいことがあるな。個人的には、教員同士がお互いにリスペクトを持ってそれぞれの実践から学び合う関係になれたらと思うし、それがこども同士の交流や学び合いにもつながっていったら面白いはずだ。

そして国語の教員としての個人的な希望もある。僕は風越に読み書きを大切にする文化を育てたいと思っていて、それはまだまだ途上。風越だけじゃなくて、軽井沢の町の子どもたちが読み書きを楽しむ機会を、この連携の仕組みを上手に「利用」しながら作っていけたらと思う。町という大きな単位だからこそ、できることもあるはずだ。

 

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