軽井沢の小学校での「モチモチの木」演劇的手法の授業を見学してきました。

軽井沢では昨日今日と雪が降っています。雪かきや道路状況など心配なこともあるのですが、シーズン終盤のスノーシューを楽しむ機会がもう一回は増えそうで、ちょっとワクワクもしています。さて、そんな雪の中、地元の小学校の小学校3年生の国語の授業を見学に行きました。担当の先生はこいちゃん(小石原智宏さん)で、演劇的手法を使った「モチモチの木」の授業です。今日はそれについてのエントリ。

がらっと動きが変わる子どもたち

僕が演劇的手法に興味を持ったのはつい最近のこと。昨年秋から冬のテーマプロジェクトでパロディ演劇をやったときに、生き生きとした子どもの動きに「風越の子には演劇が合うのかもなぁ」と思ったからです。1月に京都・立命館小学校の吉永かおり先生の「ごんぎつね」の授業を見学に行ったことは、下記エントリで書きました(今思い出しても、吉永さんの立ち姿が印象的な授業でした)。

印象的なのは、真剣勝負をいどむ先生の姿。演劇的手法を使った「ごんぎつね」の授業を見てきました。

2025.01.26

というわけで今回が2回目の演劇的手法の授業の見学でしたが、今回も違う意味で面白かった! というのも、今回見学させてもらったクラスは、あえて言うと集中が難しい子も多いちょっとわちゃわちゃしたクラス。前に見学した立命館小学校の子達とは違いも大きくて、それが良かった。具体的に言うと、吉永先生のクラスでは、読みを深めるための演劇的手法という色彩が色濃かったのですが、今回のクラスでは、そもそもじっと座って話を聞いたり、ノートを書いたりするのが難しい子達が、授業中に立ち歩いても目立たない(注意されない)方法としても演劇的手法が機能しているように感じられました。石川晋さんの言うところの「合法的立ち歩き」です。座るのが難しい子たちも複数いることもあって、オーソドックスな読解の授業(先生の問いに、子どもたちが根拠となるページ数を示しながら答えるスタイル)だと、あまり間が持たないのですよね。次第にこぼれ落ちる子が増えてしまう。それが、演劇の時間になると生き生きと動き出すんです。「やりたい!やりたい!」の声も聞こえる。空気がガラッと入れ替わったような子供たちの変化が印象的でした。

ホットシーティングをめぐって

この日の中心は、爺様の腹痛に驚いた豆太が、表の扉を蹴飛ばして、お医者様のところに走りに行く場面。それを何人かの子に演じてもらってから、ホットシーティングの手法で、豆太役の子にインタビューをする流れでした。このインタビューで大人ならしない質問(「裸足で歩くと怪我をして感染症になると考えなかったんですか」「ただでさえ貧乏なのに、扉を蹴ったら良くないんじゃないんですか」)が相次いだりして、なるほど、実際にホットシーティングをするとこういうことが起き得るんだなと体感できたのも良かった。

これはきっと、質問をした子たちが作品世界の中に十分に入れてなかったのかな、その子たちにこそ豆太役をしてもらったらよかったのかな。授業後のこいちゃんとのふりかえりではそんな話題になり、こいちゃんからは、国語の授業の読み取りとしてはよくないかもしれないけど、まずは思い切り扉を蹴飛ばすことをやるのが大事なんじゃないかという言葉も出て、なるほど、と思いました。そうやって作品世界に身体からはいっていくのは、国語の授業そのもののように思えます。

そしてもう一つ面白かったのは、ホットシーティングの時に、主役ではなくて、脇役に語ってもらったらもっと面白くなったのではないかと言っていたこと。この場合だと豆太ではなく、モチモチの木にインタビューをする。モチモチの木が豆太をどんなふうに見ていたかとか語ってもらったらどうだろう。そうすると授業がどう変わるのか、今の僕には実践知がないので何とも言えないのですが、確かに展開は変わりそう。面白い変化がおきるかもしれません。

演劇の可能性を活かす

また事後のふりかえりで、こいちゃんが「演劇を、単に教科書の文章を読解する手法の一つとして使うのではもったいない」と考えていたのも印象的。行間が読めない子に読みやすくするための手立てとして使うだけでは、演劇の持つ可能性をとても狭めてしまうのではないか。それよりも物語世界の中にある空白を手がかりに、その世界観の中で新しい物語を創造できるのが、演劇の魅力ではないかと(一字一句この通りではなく、あすこまの理解に基づいた要約ですが…)。ご自身もアーティストであり演劇ワークショップなどにも関わっているこいちゃんならではの視点だな、と、聞きいってしまいました。例えば展開次第では、モチモチの木をめぐるこの村の物語をみんなで作ってみるのも面白そうです。これはちょうどライティングワークショップで、元のお話を考案して、自分独自の世界を作っていくのと似ているのかもしれません。

というわけで、仕事の隙間時間を無理に作って見学させてもらった地元の小学校の授業、とても面白かった。担任のこいちゃんの子供たちへの接し方も、あたたかで、子どもたちも楽しそうでした。自分も見習わなきゃなぁと思うことしきり。勉強になる見学でした。どうもありがとうございました!

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