夏休み期間前半(8月第1週まで)の風越はスタッフのミーティングや研修を中心に時間を過ごした。その中でも印象的だったのは、しんさん(理事長の本城さん)が1日かけてやった後期全体研修の中の「試練」というアクティビティ。今日はそれについて振り返るエントリ。僕はこういうアクティビティ系が苦手なんだけど、今回は割とすんなり取り組めて、色々と感じたり、考えたりすることがあった。それを忘れる前に書いておきたい。いつものように自分用の振り返りなので、読み手には伝わりにくいかも…。
目次
「試練」ってどんなアクティビティ?
この「試練」、チーム全員が目隠しをしたまま、スタート地点から何十メートルか先のゴールに45秒以内に到達することを目指すアクティビティ。しかも、ただ到達するのではなく、目隠しをして出発する直前に、メンバーにしんさんから一人ずつ番号が割り振られ、ゴール地点でその番号順に列を作れたらチャレンジ成功となる。練習は何度もしてもいいけど、2時間の制限時間内に「本番」に挑戦できるのは3回まで。今回は、全ての後期スタッフが7人程度の3つのチームに分かれて挑戦し、僕もその中の1チームに入った。これ以降書くのは、その1チームの参加者としての出来事だ。
突拍子ないアイディア、笑い…楽しく進む原動力は?
このアクティビティの難しさは、「目隠しをしながら(45秒以内に)全員がゴールにたどり着くこと」と「ゴールしたら番号順に並ぶこと」の2点にある。どうしたらその2点をクリアできるか試行錯誤する時の、チームの雰囲気がとても良かった。年齢差を超えて、みんなが意見を言って、とにかくやってみよう、という感じ。時折、「手拍子の音の感じで誰の音か聞き分けて並ぶ」とか突拍子もないアイディアが出て、一同笑って、でもそれを実際に試してみたり。この時の楽しく進む原動力ってなんだろう? と後で振り返ったのだけど、やっぱり笑えることは大きい。「失敗できない」と思うと萎縮しちゃうから、「楽しくやってみる」雰囲気を作ることはとても大事。それには笑いとかユーモア、突拍子もないアイディア。この辺、自分の苦手領域だけど、この時のチームの感じは良かったなー。
「本番」をリクエストする難しさ
そんな風に楽しく試行錯誤を繰り返しつつ、一方では、30分経過したくらいから僕はじりじりした思いも抱えていた。練習ではなく、早く本番一回目をやってみたかったのだ。正直なところ、実際の状況下でやってみないと、何が鍵なのかもよくわからない。だから、一回本番を早目に体験して、そこからフィードバックを手に入れることでしか先に進めないんじゃないかと思った。それで「とにかくやってみよう」ということも言ったけど、他のみんなは練習はともかくすぐに本番に行きたい感じではなく、僕も強く言えなかった。事情は他のチームも同じだったのかもしれない、持ち時間の2時間のうち、最初のチームが1回目の本番に挑戦したのは1時間経過したくらい。それからは、全チームが雪崩を打ったように本番リクエストが続いた。
今振り返っても、僕としては本番を早めに経験したほうがよかった、と思う(ただ、それが本当に良いのかどうかわからない。みんなはどう考えていたのか聞いてみたらよかったな)。それでも、自分の意思で本番をリクエストするのは難しい。全部で3回しかないし、まだもっと良いやり方がある気がするし、他チームの様子も見たいし…と、リクエストを躊躇する要素がたくさんあるのだ。「早く本番したいなー」という思いを抱えつつ、僕にもその躊躇があったので、なんとなく時間が過ぎてしまった感じ。もし「とにかく一度本番を経験して、そこからまた考えよう」ともう少し強く言ったり、あるいは、人間の意思に任せるとなかなか進まないから「30分経ったら一度本番にしよう」と決めたりしたら、その後の展開も変わっていたかもしれない。
不安をどう取り扱う?
チームでの試行錯誤の最初、全員が目隠しをしてゴールまで行ってみた。この時が思った以上に前に進めなかったのが、今振り返るとその後のチームの動きに大きく影響していた。僕自身も感じた「一人で目隠していくのは怖い、足が前に出ない」という思いが、じゃあ全員で手を繋いで行こう、になり、どんな形でつながるといいかという話からムカデ競争みたいにつながって行くことになった。そしてこのムカデがどうやったらゴールにたどり着けるか、が僕たちの試行錯誤の中心だった。
今振り返ると、僕もチームも、この最初の「不安」にだいぶとらわれていたなと思う。「一人で目隠しで歩くのは怖い」という、当然ある不安の取り扱い方には、「避ける」も「慣れる」もあったはずだし、人によってその不安の大きさも違うはず。でも、最初に「歩くの不安だよね」の確認から始まったこともあって「どうしたらその不安をみんなが避けられるか」が話の中心になっていった。今思うと、「何度もやってみることでこの不安に慣れる」選択肢もあったはずなのに、そっちには話が進まなかった。
僕たちのチームでこの「不安」の取り扱い方が変わったきっかけは、他チームの「本番」を見たことだ。他チームの本番で、一人で目隠しをしたままゴールに向かって猛進したスタッフがいて、「一人でも不安なくいける人がいる!」という勇気をもらった人が多かったと思う。こういうチャレンジャーの存在は本当に大きい。また、本番の時には目隠しをしたメンバーの危険を防ぐために他のチームメンバーが両脇に立っているのだけど、自分がこのサポート役を経験することで、「もし自分たちが目隠しをして危険な目に合いそうになったら、きっと支えてもらえる」気持ちも芽生えた。他のチームのメンバーに頼っても大丈夫、という思いだ。
おそらくそんなこともあって、2回目の本番に失敗した後(後述)、チームメンバーの一人が「一人で飛びだせる人は飛び出す、それ以外の人はムカデで行こう」という案を提案してくれて、全員ムカデ案はなくなった。大きな作戦変更だったけど、僕自身は上記のことを感じていたので、すごくすんなり受け入れることができた。ただ、これから書くことの影響もあって、その賛成表明をすぐにその場でできなかったのを後悔してる。
本番中の自分の気持ちの波は…
この3回の「本番」挑戦、僕の並び順の番号は、1回目は7番(つまりチームの一番最後)、2回目は1番(つまりチームの先頭)、3回目は2番だった。2回目までの僕たちは、「最初に番号順に並んでからみんなでゴールまで進む」作戦だったので、本当に番号によって精神的負荷が違う。1回目はとにかく列の最後尾に着けばいい。だから「7」という数字を告げられた時に、どこかホッとした気持ちもあったと思う。でも、2回目は「1」。ムカデの先頭ということは、僕が全員を正しい方向に導かないといけない、という意識になる。
で、2回目の挑戦で、僕は全く違う方向に行ってしまって、見事に失敗したんだよね。この影響は僕には結構大きかった。失敗した責任を感じちゃって….。それで気持ちの切り替えに時間がかかって、この後に、先述のように他のメンバーが作戦変更を提案してくれた時も「作戦としてはムカデ作戦じゃなくて飛びだせる人は飛び出した方がいい」と思っていたし、なんなら飛び出す人数は多い方が良いとさえ思っていたのに、失敗した気落ちと、「さっき失敗したばかりでそれは言えないなー」という遠慮で発言できなくなっちゃった。ここ、けっこう中途半端な関わりになって、後悔しているところ。「責任」を感じちゃったことは仕方ないにしても、それを早めに「脇に置く」ことはどうしたらできるんだろう。時間が経ってからも、そんなことをなんとなく考えていた。
結局、3回目は「飛び出し組」と「ムカデ組」に分かれて、全員ゴール到達までは行ったんだけど、並び順を間違えて失敗に終わった。でも、作戦変更して一歩前進したことはとてもよくて、僕自身晴れやかな気持ちでアクティビティを終えた。
チーム対抗戦じゃなかったのに…
午後の振り返りの時間。まず印象的だったのは、「チーム対抗戦じゃなかったのにね」というしんさんの言葉だった。確かに、そんなことを言われていなかったのに、3チームになってチーム名をつけた途端、それぞれ「別のチーム」になって、チームを超えて協力するという発想が自分の中からなくなっていたことに、言われて初めて気づいた。途中、他のチームの人の「飛び出し」から勇気をもらったり、他のチームの人に支えてもらえる、という気持ちは生まれたけど、3チームで協力する発想は僕の中にはなかったな。今回どうすればよかったかは別として、なんで自然にそうなっちゃうんだろう。これと同じこと、日常でも起きているんだろう。
みんなが「素人」だからできること
また、チームでの振り返りで「どうしていい雰囲気でできたんだろう」ことも話題になった。上述した笑いの要素も大きいけど、最終的に出てきたのは「このアクティビティの専門家が誰もいなかったこと」。専門家が誰もないので、みんながフラットな立場で意見を言いあって試行錯誤を繰り返せたのがよかったというのだ。これは、本当にそうだな。「誰かが詳しい/強い分野」だと、どうしてもその人の意見が強い影響力を持つ。でも、このアクティビティに関してはそれがなかった。
普段の学校の仕事だと、どうしても「誰か詳しい人」が出てくる。色々な分野にそれぞれ詳しい人がいることはもちろん強みなのだけど、その人が「正解」を持っている(と周囲に思われている)と、フラットな立場での話には当然ならない。もちろんフラットであれば組織として良いことにはならないし、どういう組織のあり方が良いのかはわからないけど、ただ、「みんなが素人という立場だからこそ試行錯誤して作れる雰囲気がある」ことは、今回体感できた。
今回の研修、最後には「これから風越スタッフみんなで大事にしたいこと」を書いた。僕たちのチームは、あるメンバーの提案で「素人を楽しむ」という言葉に決めた。もちろんスタッフがみんな素人では困っちゃうし、実際、風越スタッフはそれぞれの現場で「プロ」としてやってきた人も多くいる。でもたとえベテランであっても、「風越という現場においては」みんな素人なのだ。その前提に立つこと、結構大事じゃないかなあ。「素人を楽しむ」って、とても素敵なキャッチコピーだと僕は感じた。
ということで、今回のアクティビティは色々考えること、感じることがあった。
- チームで試行錯誤をするためには、楽しく、笑って。突拍子もない馬鹿げたアイディアを出してくれる人の存在は貴重。
- 本番をリクエストする難しさ。早く本番をしたい気持ちと、躊躇する気持ちの葛藤。
- 飛び出すチャレンジャーの存在。その人が与えてくれる勇気とか希望とか。
- 自分の「不安」や「責任」といった感情を「いったん脇に置く」ことってどうしたらできるのか。
- 「チームになる」ことで、いつのまにか「チーム」の枠を超えて協力する発想がなくなってしまうことへの怖さ。
- 「みんなが素人である」という前提に立つことで、できること。
箇条書きにしたら、こんな感じかな。感じたからと言ってそれがすぐにできるとは全く言えないのだけど、今回の経験と、そこから感じたこと、大事にしていけたらなーって思った。こんな風にして、僕は夏休みの期間を過ごしてます。