この1月はちょっと低空飛行でした…。職場での気疲れなのか、夜に帰宅すると踏ん張りきれずに、食事・お風呂・家事を終えたら夜10時には寝てしまう日々。テーマプロジェクト「つくり手と味わう音楽」の担当になった瀧廉太郎についての読書をのぞいたら、国語教育についてはあまり勉強できなかったな。しかも最終日の昨日は、金曜夜からの目眩と嘔吐におそわれて、仕事どころではなかった。
で、今日のエントリはそんな中でも数少ない勉強系の話題。1月の3連休、思い立って中学校国語教科書4社(光村図書、東京書籍、三省堂、教育出版)の詩歌の教材について全部をさらってみた。その感想を、ツイッター(現X)には書いたのだけど、こちらにはまとめてなかったので、ざっくりと印象を書いてみる。
詩の世代はなかなか更新されない
今回改めて4社の国語教科書を読んで強く印象に残ったのは「詩の世代はなかなか更新されない」ということ。俳句なら神野紗希、短歌なら服部真里子、木下龍也、岡野大嗣などの30-40代の作品が掲載されているのだが(やはり短歌は教科書でも勢いありますね…)、詩はいまだに谷川俊太郎、茨木のり子、吉野弘などの「櫂」世代が中核にあり、なんなら中原中也・北原白秋・三好達治も健在である。というか、四社に共通して登場する詩教材が島崎藤村「はつ恋」なのだ。「若い」詩人で高階杞一(70代)や木坂涼(60代)なのだから、やはり短歌に比べると世代が更新されていない印象は否めない。
「更新されていない=悪い」ではないのだが、これはやはり一つの特徴に思える。現代詩だって難解な詩ばかりではないし、編集委員の顔ぶれを見るとそのへんに目配りの効く人もいそうなのだが、なぜなのだろう。現場の「櫂」世代へのニーズが強いのだろうか。「更新されない」こと自体に、現場での詩教育をめぐる「何か」があるような気がしている。
なお、三省堂だけ「歌の言葉」としてYOASOBIやOfficail髭男dismの歌詞を掲載している。「載せてみました」にとどまっているのが惜しい気もするけど、でも、子供達にとっての詩って歌詞だものね。現場の先生たちはどう反応したのかが気になる(一番ありそうな予感が「放置」ではあるけれど….)けど、いいチャレンジだと思う。
創作単元は、まだ変わる余地ありそう
光村、東京書籍、教育出版の三社は、中1で詩、中2で短歌、中3で俳句の創作をする流れがある。光村図書と東京書籍では、それぞれの鑑賞文→作品の紹介→創作というシンプルな流れに貫かれていて、これがまあオーソドックスかなという感じ。指導法では光村の2年の短歌創作の準備体操がいい。これは栗木京子さんのイラスト入りなので、ご本人の指導で編集部が作ったのかも。教育出版は、3年の堀本裕樹さんの句会の文章は面白いけれど(塚本さんの俳句の小説も面白いですよね…)、全体を通して創作そのものの指導は弱い。なお、中1年の「葡萄に種があるように」の型はめ詩は、小学校教諭・白谷明美の実践からとったものと思われる。
三省堂だけ、どういうわけか中1で詩の創作をしたあとは、中2で短歌と俳句を両方創作する形をとっている。ただ、俳句については取り合わせの簡単な説明があるのみで、やはり両者をばらしたほうが良いのでは…と個人的には思った。全体的に、詩・俳句・短歌の創作単元に関しては、まだまだ全体的に変わる余地がありそうだ。特に詩の創作は、いろんな方法があるだけに惜しいな。まあ、一度しか単元がないから、たくさん紹介するのも難しいのだけど…。
東京書籍の2年教科書が面白かった!
個人的に面白かったのは東京書籍の2年教科書。この教科書だけ、「短歌から始まる物語」という、短歌からストーリーを想像して物語を書く単元がある。また、東京書籍は各章の扉が1年は詩、2年は短歌、3年は俳句になっているのだけど、この2年の短歌のチョイスが個人的にすごく好みだった。その章のタイトルに雰囲気のあった短歌を選んでいるんですよね。例えば、「思いを深める」章なら「幸福と呼ばれるものの輪郭よ君の自転車のきれいなターン」(服部真里子)、「描写を味わう」章なら「卒業生最後の一人が門を出て二歩バックしてまた出ていった」(千葉聡)というように。これ、手前味噌だけど、僕たちが『中高生のための表現読本』で各章の扉の俳句や短歌を選んだときと同じ意識で、「わかるわかる!」ってなっちゃった。
この東京書籍の2年教科書の短歌や短歌からの物語創作、いったいどなたが関わったんだろう。編集委員一覧を見て色々と想像しちゃったんだけど、直接お話ししてみたい気持ちになりました。
細かいことは他にも色々とあるんだけど、ざっくりした感想は以上です。久しぶりに教科書をこうやって比較する視点で読んでみて、なかなか面白かった。自分の仕事にも活かしていきたい!


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