意味がわからなくても、とにかく楽しい詩が第1位。2024年6月の窓の詩。

もう6月も終わり。6月の国語教室の窓を飾ってくれた詩を紹介します。

目次

長田弘「キャベツのための祈り」

今回、圧倒的な得票で1位に選ばれたのは、長田弘「キャベツのための祈り」。6月の詩の候補作を選ぶときに、スーパーでキャベツが高いなあ…と思って入れた詩なのだけど、言葉遊び系の詩はやはり子どもたちには大人気。僕が読む前からすでに笑い声が起きていて、勝手に読み出す子が多数という。

キャベツを
讃えよ。
すべてはキャベツにしてキャベツ、
かつキャベツについてキャベツにすぎない。

からはじまり、

ねがわくは、われらの
手にキャベツを、
われらにキャベツを、
われらの日々にキャベツをあたえたまえ。

と続いていく詩。旧約聖書の「ヤベツの祈り」から着想を得たものなのか、どうなのか。そして、急に調子がかわって最後に挿入された、ナルニア国をつくった老教授(C.S.ルイス)のエピソードはなんなのか。あまり難しいことを考えずに、音読を楽しむのがいいかも。

川崎洋「かく」

6月は言葉遊び系の詩が2つ選ばれた。川崎洋「かく」は、「かく」という言葉をたくさん連ねて書かれた詩。まずもって「かく」という言葉がこんなに多様に使われていることに驚かされるのだけど、詩に出てくる風景が昭和感満載なのがほほえましい。

頭をかくのはぼくのくせ
わき腹かくのはチンパンジー
いびきをかくのは父さんで
おかかをかくのは母さんだ
手紙をかくのは姉さんで
筆でかくのはおじいさん

今となっては、「おかかをかく」お母さんも、「手紙をかく」姉さんも、「筆でかく」おじいさんも、もはや絶滅危惧種だろう。でも、「おかかをかくって知ってる?」と聞いてみたら「かつおぶしをけずる」と答えられた子がいた。やるな、令和の小学生。

鶴見正夫「あめのうた」

毎月のことなので、やはり季節感のある詩の候補を入れるようにしている。鶴見正夫「あめのうた」は、梅雨に入るこの時期の気持ちを、わくわく楽しくさせてくれる詩。

あめは ひとりじゃ うたえない、
きっと だれかと いっしょだよ。

という詩の書き出しに、がらにもなくはっとしてしまう。だよね。雨の音は、雨が何かにふれる音なのだ。雨はひとりじゃうたえない、のである。こんな新鮮な発見とともに、鶴見さんの詩は、雨がほかのものと楽しく歌う様子を、やさしい口調で目に浮かばせてくれる。オノマトペのところだけ空白にして、そこを自分たちで作ってみる授業をしてもいい。一緒に遊びたくなる詩だ。

今月の、選に漏れた作品たち

今月、残念ながら選ばれなかった候補作品は、金子みすゞ「蜂と神さま」石津ちひろ「あした」葉祥明「ひとひらの花びら」。金子みすゞ「蜂と神さま」なんて、詩全体の円環構造と最後の逆転がとても素敵な詩だけど、今回は一票だけ及ばなかった。葉祥明「ひとひらの花びら」も、僕はとても好きで残念なのだが、特に何も解説もしないですっと読んだだけのこの詩に、何人もの子が投票してくれたのがうれしい。

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