小学校の国語ではかなり大きな割合を占める漢字学習。軽井沢風越学園ではどうしよう…という問題を、引き続き考え中(下記エントリ参照)。
そんな中、軽井沢・佐久地域の小学校の先生と開いている定例の勉強会「柏屋の会」(コメダの会からなんとなく改称)で、メンバーの小学校の先生から漢字学習のリソースについて色々と教えていただきました。それも参考にして、少しずつ考えをまとめつつあります。今日はその途中経過のエントリ。
目次
忘れないための仕組みを整える
漢字学習にはリハーサル方略(ひたすら練習!)と体制化方略(既有知識と関連づける!)が必要。リハーサル方略としては、忘れないための、より効率的な練習の仕組みを考えるのが良い。それについては、やはり下記の本が参考になりそうです。
この本の基本は、「小テストでいくら点が取れても漢字ができたことにならない」という姿勢。抜き打ちテストで書けるための「忘却との戦い」の仕組みをまとめているのがこの本の特徴です。また、漢字一字を書いて覚えるのではなく、その漢字を使った熟語のバリエーションを増やそうとしている、つまり、語彙指導という観点から漢字指導を捉えているのもいい。
- ドリルと小テストを繰り返して漢字を覚える
- 一つの漢字を書くことをゴールにせず、熟語を増やす
「書いて覚える」が正解なのか?
ただ、「ひたすら繰り返す」のは学習の王道ではあるけれど、単に書けば良いというものでもなさそう。書字や空書きを繰り返すことが有効な学習方略だとする研究も多い一方で、例えば、小栗貴弘(2018)「漢字学習における学習スキルのユニバーサルデザインの検討」では、誤答の書字反復(間違った漢字を何度も書いて覚える)よりも目視反復(間違った漢字を何度も見て覚える)の方が効果が有意に高い結果が出ています。特に学力が低い層は書字自体が流暢ではなく負担になっている可能性を考えると、「繰り返し書いて覚える」よりも、よりコストが低い目視で覚える方が有効な可能性もあって、これは結局、人によるのかな…。
漢字の分類に基づいて教える
漢字を覚えるための体制化方略としては、やはり漢字の成り立ちや分類(象形文字、指事文字、会意文字、形声文字)に注目するのがいいかなあ…と考えています。上記の土居先生の本では特に言及されていませんが、部首などに注目して漢字を教えると、知識が関連づけられて覚えやすくなるはず。
この点で参考になるのが、白川静の文字学をベースにした宮下久夫さんの漢字指導。僕が読んだのは「白川静先生に学んで漢字の学習システムをつくる」という副題がついた次の本でした。
白川静の説には専門家からの批判もあると聞きますが(あすこまは門外漢なのでよくわからない…)、最初に漢字の大元となる象形文字や指事文字から始めて、それらを組み合わせてできる会意文字、そして音として漢字を活用する形声文字へと進んでいく漢字学習の仕組みは、納得感の高いもの。幸い、軽井沢風越学園は義務教育学校なので、漢字の学年別配当を厳密に守る必要がありません。学年別配当をいったん取り払った上で、もっとも具体的で直感的な象形文字から漢字学習を始め、指事文字も含めた基本漢字を学ぶ。ついで、それら基本漢字を組み合わせた会意文字や形声文字を学ぶ…こういう順番で漢字を学習する方が、合理的で効率的なんじゃないかなあ、と思います。これと並行して、ライティング・ワークショップで使った漢字を覚えていけば、毎週やみくもに漢字ドリルの宿題をやるより、相当効率的に学習できるんじゃないだろうか、と期待しています。
宮下久夫さんの漢字学習のシリーズ
この宮下さん、白川文字学に基づく漢字学習の本を、太郎次郎社エディタスから何冊も出されています。「柏屋の会」の勉強仲間の先生が使われているのは、次の「漢字なりたちブック」シリーズ。
上記のシリーズは学年配当別になっているのですが、学年にこだわる必要がない僕は、今のところ次の「漢字がたのしくなる本」シリーズがいいなあと思っています。
全6巻。1冊はとても薄いのですが、基本漢字を理解し、それを組み合わせて複雑な感じに向かう流れが良いですね。また、漢字の大多数を占める形声文字に特化した別の本も出ています。
また、教育現場での利用を念頭に置いたワークブックや、カードゲームもあります。こちら、僕は目を通していないので、実際に試した方は、感想をお知らせ下さい!
この「漢字成り立ちブック」「漢字がたのしくなる本」シリーズを刊行する太郎次郎社エディタス。「漢字って、おもしろい」というウェブサイトもあって、宮下さんの本にかなり力を入れていました。
漢字指導に使えそうなウェブサイト
「柏屋の会」では、そのほか、漢字指導に使えそうなネット上のリソースも教えていただきました。
まずは、漢字の歴史についてまとめたYou Tubeの動画。ただし、学術的な信頼性については、僕はまだ確認していません。自己責任でよろしく。
ウェブ上の情報としては、漢字の書き順を動画で説明してくれる漢字書き順辞典も便利そう。特に書き順について、生徒が自分で調べるリソースになりそうです。
教員に超便利なのが漢字/漢和/語源辞典というウェブサイト。漢字の分類、学年配当など、色々な順番で常用漢字や小学校で習う漢字の一覧がわかるので、今後、漢字について調べるのにお世話になりそう。
正直、前任校では生徒の高い能力に頼っていたところもある僕が、地道な漢字指導の方法について考えるとは夢にも思いませんでした。授業時間はあまり割きたくない一方で、一人一台体制のため手書きの機会が少なそうな風越学園では、下手をすると壊滅状態になりかねないのが漢字の書き取り学習。どんな風に進めていけばいいか、試行錯誤になりそうです。
「ジョン・ハッティ」を検索していたら、このブログに着きました。またお邪魔します。